時代小説作家・山田風太郎の名著を漫画化したものです。

追読 人間臨終図巻 芸術家編

2023年4月30日 山田風太郎原作 サメマチオ画 徳間書店 定価1,750円+税

著名人923名の死に際を切り取った稀代の名著、『人間臨終図巻』をまさかの漫画化! 第三弾は古今東西の芸術家の「死」を網羅。

山田風太郎の不朽の名著、『人間臨終図巻』から古今東西の芸術家125名を選り抜き、その死にざまを漫画化! 芸術家ならでは? それとも意外と庶民的? いずれにしても驚きに満ちた彼らの「死」に何を思う。

芸術家の死に際の言葉
葛飾北斎「せめてあと五年の命があったなら、ほんとうの絵師になれるのだが」
ルノワール「くそっ、なんてこの世は美しいんだ!」
岸田劉生「マチスのバカヤロー!」
ドストエフスキー「ずっと考えていたんだが、きょう僕は死ぬよ」
山下清「人間、死んだら何もできなくなるもんな、やっぱり」
カフカ「僕の遺稿の全部、中身を読まずに焼却してくれたまえ」
高村光太郎「僕は智恵子とふたりでいつも話しあっている」
セザンヌ「私は絵を描きながら死にたいんだ」
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目次
 はじめに
 第1部 ざっくり700年代~1700年代生まれの人
  第1話 白楽天 ミケランジェロ ラファエロ 千利休 モンテーニュ
  第2話 セルヴァンテス 本阿弥光悦 レンブラント 尾形光琳 デフォー
  第3話 尾形乾山 スウィフト 蕪村 池大雅 カザノヴァ
  第4話 上田秋成 サド侯爵 ゴヤ 司馬江漢 ゲーテ
  第5話 喜多川歌麿 鶴屋南北 良寛 葛飾北斎 山東京伝
  第6話 小林一茶 十返舎一九 滝沢馬琴 スタンダール グリム・兄
  第7話 グリム・弟 バイロン 梁川星厳 為永春水 安藤広重
  第8話 ハイネ ドラクロワ プーシュキン バルザック ユゴー
 第2部 ざっくり1800年代前半生まれの人
  第9話 デュマ アンデルセン ドーミエ ポー ミレー
  第10話 ツルゲーネフ ボードレール フローベール ドストエフスキー 狩野芳崖
  第11話 イプセン トルストイ マネ ドガ 橋本雅邦
  第12話 マーク・トゥエイン 富岡鉄齋 マゾッホ セザンヌ ロダン 
  第13話 ゾラ ルノワール ヴェルレーヌ アナトール・フランス ゴーギャン
 第3部 ざっくり1800年代中盤生まれの人
  第14話 ストリンドベリ モーパッサン スティヴンソン ゴッホ フェノロサ
  第15話 コナン・ドイル 岡倉天心 ハウプトマン ムンク ロートレック
  第16話 マチス H・G・ウェルズ ロマン・ロラン ライト 横山大観
  第17話 ゴーリキー ジイド プルースト 平櫛田中 菱田春草
 第4部 ざっくり1800年代後半~1900年代生まれの人
  第18話 サマセット・モーム リルケ フットレル トーマス・マン ヘルマン・ヘッセ
  第19話 熊谷守一 ピカソ ツヴァイク 会津八一 青木繁
  第20話 坂本繁二郎 ジョイス ユトリロ 高村光太郎 小林古径
  第21話 カフカ モディリアニ 竹久夢二 ローレンス 藤田嗣治
  第22話 リーチ 安井曾太郎 梅原龍三郎 チャンドラー 高見沢遠治
  第23話 アガサ・クリスティ 岸田劉生 木村荘八 速水御舟 佐伯祐三
  第24話 村山槐多 林武 東郷青児 ヘミングウェイ サン=テグジュペリ
  第25話 岩田専太郎 棟方志功 近藤日出造 谷内六郎 山下清
 おわりに

日本の美術家、海外の文豪と美術家が集められています。配列は生年順、各人1頁です。
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我らが光太郎も含まれ、帯文にも名を挙げて下さっています。「僕は智恵子とふたりでいつも話しあっている」は、晩年に親しかった美術史家の奥平英雄に語った言葉から。
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また、光太郎と親交のあったバーナード・リーチ村山槐多の項で光太郎の名が出ている他、光太郎と交流のあった人々も多数。ロダン岡倉天心平櫛田中藤田嗣治、安井曾太郎、梅原龍三郎、岸田劉生木村荘八など。ところが、光太郎の父・光雲や、親友・荻原守衛の名があってもいいところですがありません。元々、山田風太郎の原作でも扱われていません。ちょっと不思議な気がします。

それから、日本の文豪系(宮沢賢治や与謝野晶子、森鷗外に北原白秋といった面々)も他の巻で扱われているようで、この巻には載っていません。

ちなみに山田の原作で取り上げられているのは全923人。死亡時の年齢順に上下2分冊で徳間書店さんから昭和61年(1986)、62年(1987)に刊行されました。漫画版は徳間さんのPR誌『読楽』に連載中のようです。

ぜひお買い求め下さい。

【折々のことば・光太郎】

小生の眼は未だにいけません その為め仕事をまるで休んでゐます。少し無理をして仕事するとたちまち眼にひゞいて来るので閉口して毎日医者に通つてゐる始末です 水野君の『砂』の挿画もそのためかけないで居ます。


大正5年(1916)5月17日 内藤鋠策宛書簡より 光太郎34歳

体格もよく頑健だった光太郎ですが、意外なところで医者通いをすることもありました。留学中は歯の治療、この頃は角膜炎でした。翌年にも眼疾で手術を受けています。

水野君の『砂』」は、親友、水野葉舟のローマ字詩集です。確かに挿画は入っていません。ただ、表紙には木版風の絵。光太郎の手になるものと思われますが、記述がないため確証がありません。
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