まず、『夕刊フジ』さん。2月14日(火)掲載の「週末、山へ行こう 「ほんとの空」求め福島の名峰へ 安達太良山 標高1700メートル」という記事の続編で、2月21日(火)の掲載でした。

週末、山へ行こう 雪原の先に「ほんとの空」求めて再び登山口へ 初心者でもチャレンジできるといわれている雪山 安達太良山 標高1700メートル

 2月の初め、再び安達太良山(あだたらやま)の奥岳登山口に立っていた。
 天気予報をいくつも確認し、一番天気が良さそうな日を選び、日帰りで歩くことにしたのだ。前回登れなかったのが悔しかったわけじゃない。単純に、智恵子さんの「ほんとの空」…「阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に毎日出てゐる青い空」を見てみたいと思ったのだ。
 青空が広がっているけれど、思ったより風が強いなと思いながら歩き始めた。やわらかな日差しで体がじわじわと温まっていく。勢至平にたどり着き、前方を見ると山のあるところに白い雲が広がっているのが気にかかる。しかし雪原を歩くのは気持ちいい。
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 前回お世話になったくろがね小屋を過ぎ、山頂への登りにとりかかる。だいぶ雲が多めになってきたけれど、前回よりずっと視界はよいし、先行者の踏み跡もついている。山頂直下、峰ノ辻に到着すると山頂の山並みが間近に見渡せる…が、うっすらガスに覆われている。目印の竹竿(ざお)や、方向を確認しながら慎重に進む。稜線(りょうせん)に出ると一気に風が強くなった。ゆっくりと進み、最後に岩の塊を登ると、小さな石の祠(ほこら)と、風情ある山名の看板が転がっていた。
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 快晴なら360度の展望が楽しめるそうだが、今日は全方向乳白色。風もだいぶ強いので、写真を撮ってそそくさと退散。再び峰ノ辻に下り立って振り返ると、山頂付近は厚い雲に覆われ、ときどき日が差して幻想的だった。一方、下る方向を眺めると青空が広がり、眼下に町並みも見渡せた。
 雪山初心者にもチャレンジできる山…とはいわれているけれど、山頂直下はなかなか手ごわかった。雪山における「初心者向け」はホントに「条件がそろっている」ことが前提なんだなあ。ひとつでもそろわなければ初心者向けではないのだと実感する。
 青空だけどだいぶ風が強く、寒くなってきたな…と思いながら来た道を下り、奥岳登山口へ到着。登山口の日帰り入浴施設で温まった。
 智恵子さんの言う「ほんとの空」には今回も出合えなかった。…いや違うな、前回と今回、安達太良山を歩きながら見た空が「ほんとの空」だったのか。青い空はまた来たときに見ればいい。
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 登山にあたっては登山道の状況、バスの運行状況などを最新のデータでご確認ください。山行中は、歩行時に他の登山者との間隔をあけるなど新型コロナウイルス感染予防を心がけましょう。
■安達太良山(冬)おすすめルート 奥岳登山口…くろがね小屋…峰ノ辻…安達太良山…往路を戻る…奥岳登山口 歩行時間 約7時間/難易度★★★★(最高難易度★★★★★)
■コースガイド あだたら高原スキー場のある奥岳登山口から勢至平、くろがね小屋を経由して山頂へ。勢至平はのびやかな斜面で、安達太良山の頂上付近が眺められる。峰ノ辻から先は風が強く地面が露出しているところもある。山頂からは来た道を戻る。※くろがね小屋は改装工事のため2023年3月までの営業。
■おすすめシーズン 雪山登山が楽しめるのは12月からゴールデンウイーク頃まで。アイゼンやピッケル、スノーシューなど雪山専用の装備が必要。
■西野淑子(にしの・としこ)広く山歩きを楽しむライター。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)、『関東周辺 美味し愛しの下山メシ』(山と溪谷社)など。NHK文化センター「東京近郊ゆる登山講座」講師。

1枚目の画像、十分に「ほんとの空」だと思いますが……。

続いて『神戸新聞』さん。一面コラムでやはり「ほんとの空」。2月24日(金)の掲載分です。

正平調

昨年秋、知人に誘われて大阪に避難するウクライナ人家族の部屋を訪れた。支援物資を運び、近況を聞く。通訳はスマホのアプリ。手土産に洋菓子を持参した◆両親と長女の3人と一緒にテーブルを囲むと、誰も座っていない席にもコーヒーと菓子が並べられた。祖国に残った30代の息子らの無事を祈り、毎日食事やお茶を用意するそう◆日本にも「陰膳」という風習があります。心配ですね。そう告げると母親が大きくうなずく。そして青空を背に家族5人がそろって写る写真を見ながら、そっと口にした。「来年には帰りたい」◆ロシアのウクライナ侵攻から1年。あの家族のように、戦火を逃れて欧州の各国へ北米へ、アジアへと渡った人たちにとって、とても長く感じられた1年だっただろう。帰りたい、帰れない、でも帰りたい◆〈智恵子は東京に空が無いという/(中略)阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に/毎日出ている青い空が/智恵子のほんとの空だという〉(高村光太郎)。麦畑が広がる大地と青空の国で生まれ育ち、働き、家族と暮らし、老いていくはずだった人たち。ほんとの空を見られる日が一日も早く訪れますように◆昨年春、本紙に掲載された川柳より。〈ロシアにもウクライナにも春よ来い〉。西の空へ願い、祈る。

1日も早く、ウクライナの皆さんにも「ほんとの空」を取り戻してほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

ヹニスのゴンドラに乗りて遊び居り候。サンマルコ寺院の美しさ、この水の街の面白さ、帰るを忘れ申し候。


明治42年(1909)3月29日 与謝野寛宛(推定)書簡より 光太郎27歳

水の都、ヴェネツィア。いいですねぇ(笑)。