昨日、漫画家の松本零士氏の訃報が出ました。
共同通信さんの配信記事。
共同通信さんの配信記事。
漫画家の松本零士さんが死去 「銀河鉄道999」「ヤマト」
「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」で知られる漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名晟=あきら)さんが13日午前11時、急性心不全のため東京都の病院で死去した。85歳。福岡県出身。告別式は近親者で行った。喪主は妻の漫画家牧美也子さん。お別れの会を後日開催予定。
スケールの大きなSF、戦争漫画を数多く手がけた。戦闘機などの詳細で独特な描写は海外のSF映画にも影響を与えたとされる。
1954年、高校在学中に「蜜蜂の冒険」でデビュー。上京後、少女漫画などを描いた。71年に雑誌で連載を始めた「男おいどん」で、東京の若者の貧しい下宿生活を描いて人気を得た。同作品も含む「大四畳半シリーズ」は、ユニークなキャラクターが広く親しまれた。
74年からテレビで放送されたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの企画に参加、漫画版を手がけ、その後のアニメブームのきっかけをつくった。宇宙への旅を叙情的に描いた代表作「銀河鉄道999」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」もアニメ化され、さまざまな社会現象を起こした。
わずかながら、光太郎智恵子とのかかわりも。
かつて、氏が名誉館長を務められていた福島県郡山市の郡山市ふれあい科学館さんで開催されていた「ふくしま 星・月の風景 フォトコンテスト」審査員を務められました。こちらは光太郎詩「あどけない話」(昭和3年=1928)由来の「ほんとの空」の語を用い、「“ほんとの空”のあるふくしまの星・月の風景をあなたの感性で捉えて下さい。」と要項に記されていました。
第4回の入選作品集(平成28年=2016)から。
こんな短い文章にも、氏の理念がよく表されていますね。
個人的なことを申し上げれば、氏の作品の数々、少年時代によく読みました。ひねくれ者の当方ですので、代表作といわれる作品群よりマイナーなものに惹かれました。SF系だと「ワダチ」、「大純情くん」、「ミライザーバン」など。
それから、「戦場まんがシリーズ」。第二次大戦中の日本軍やドイツ軍などの名も無き兵士たちを主人公とした短編連作で、陸軍パイロットだった氏のお父さまのご体験等が反映されています。お父さまは氏に「あんな戦争はやってはいけない」と口癖のように語られていたそうで。そこで、散華する兵士たちを「英霊」「英雄」と讃美せず、どちらかというと愚かな戦争の犠牲者として捉えていました。印象的だったのは、日本軍による特攻を受け、撃沈される米軍空母の艦長が沈没直前に広島への原爆投下を打電で知り「おれたちも、バカか。敵も味方も、みんな大バカだ」と呟いたシーン。他にも、末端の兵士たちそれぞれにさまざまな人間ドラマがあったことがリアルに描かれていました。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
【折々のことば・光太郎】
And yet, I feel happy in the bottom of my heart ; such affairs and bad health gave me deeper lessons than ever. I heard such a marvellous harmony in what I heard only a confused discord befor. I have become <to be> able to look more dearly at the face of Nature. I think I have stepped a little further in understanding the relation between Nature and myself, of course only the relation, not Nature itself.
『高村光太郎全集』での訳は以下の通り。
しかし、僕は心の底では喜んでいる――こんな事件があったり、具合が悪かったりしたために、かえって今までに無い深い教訓を得た。これまでは不協和音としか聞こえなかったものの中に、非常に不思議なハーモニイを聞いたのだ。僕は自然の姿を前よりもいとおしく眺めることができるようになった。自然と自分との相互関係の理解に、ささやかな一歩を進め得たと思う。勿論、自然そのものではなくて、それとの関係にしかすぎないけれど……。
「こんな事件」は、故国日本で従兄弟が事故死したことを指し、「具合が悪かったり」は、歯の治療で歯医者通いをしていることを指します。
「自然」云々、のちの詩「道程」にも通じるような気がします。
わずかながら、光太郎智恵子とのかかわりも。
かつて、氏が名誉館長を務められていた福島県郡山市の郡山市ふれあい科学館さんで開催されていた「ふくしま 星・月の風景 フォトコンテスト」審査員を務められました。こちらは光太郎詩「あどけない話」(昭和3年=1928)由来の「ほんとの空」の語を用い、「“ほんとの空”のあるふくしまの星・月の風景をあなたの感性で捉えて下さい。」と要項に記されていました。
第4回の入選作品集(平成28年=2016)から。
こんな短い文章にも、氏の理念がよく表されていますね。
個人的なことを申し上げれば、氏の作品の数々、少年時代によく読みました。ひねくれ者の当方ですので、代表作といわれる作品群よりマイナーなものに惹かれました。SF系だと「ワダチ」、「大純情くん」、「ミライザーバン」など。
それから、「戦場まんがシリーズ」。第二次大戦中の日本軍やドイツ軍などの名も無き兵士たちを主人公とした短編連作で、陸軍パイロットだった氏のお父さまのご体験等が反映されています。お父さまは氏に「あんな戦争はやってはいけない」と口癖のように語られていたそうで。そこで、散華する兵士たちを「英霊」「英雄」と讃美せず、どちらかというと愚かな戦争の犠牲者として捉えていました。印象的だったのは、日本軍による特攻を受け、撃沈される米軍空母の艦長が沈没直前に広島への原爆投下を打電で知り「おれたちも、バカか。敵も味方も、みんな大バカだ」と呟いたシーン。他にも、末端の兵士たちそれぞれにさまざまな人間ドラマがあったことがリアルに描かれていました。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
【折々のことば・光太郎】
And yet, I feel happy in the bottom of my heart ; such affairs and bad health gave me deeper lessons than ever. I heard such a marvellous harmony in what I heard only a confused discord befor. I have become <to be> able to look more dearly at the face of Nature. I think I have stepped a little further in understanding the relation between Nature and myself, of course only the relation, not Nature itself.
明治42年(1909)1月4日 バーナード ・リーチ宛書簡より 光太郎27歳
『高村光太郎全集』での訳は以下の通り。
しかし、僕は心の底では喜んでいる――こんな事件があったり、具合が悪かったりしたために、かえって今までに無い深い教訓を得た。これまでは不協和音としか聞こえなかったものの中に、非常に不思議なハーモニイを聞いたのだ。僕は自然の姿を前よりもいとおしく眺めることができるようになった。自然と自分との相互関係の理解に、ささやかな一歩を進め得たと思う。勿論、自然そのものではなくて、それとの関係にしかすぎないけれど……。
「こんな事件」は、故国日本で従兄弟が事故死したことを指し、「具合が悪かったり」は、歯の治療で歯医者通いをしていることを指します。
「自然」云々、のちの詩「道程」にも通じるような気がします。