『智恵子抄』初版の版元・龍星閣さんの創業者・澤田伊四郎に関わる企画展が開催中です。企画展自体は光太郎と直接関わらないと思いますが、関連行事が気になります。

追記:光太郎智恵子コーナーもあるそうです。

龍星閣がつないだ夢二の心―『出版屋』から生まれた夢二ブームの原点―

期 日 : 2023年1月7日(土)~2月28日(火)
会 場 : 日比谷図書文化館 東京都千代田区日比谷公園1-4
時 間 : 午前10~午後7時
休 館 : 1月16日(月) 2月20日(月)
料 金 : 無料

 現在千代田区が所蔵する「龍星閣旧蔵竹久 夢二コレクション」は、元々区内にある出版社・龍星閣(りゅうせいかく)が収集した竹久 夢二に関する作品群です。龍星閣の澤田 伊四郎さんは、「埋もれたもの、独自なものを掘り出して世に送ること」を出版理念に掲げ、精力的に夢二の作品を収集し、作品集にまとめて次々と世に送り出しました。そうした澤田の取り組みが、一時下火となっていた夢二を復活させ、現在にもつながる夢二ブームを生み出しました。
 本展では、夢二ブーム再燃のきっかけを作った龍星閣の取り組みとともに、その原点となった龍星閣が築き上げた「竹久 夢二コレクション」を紹介します。コレクションの目玉である夢二の肉筆作品のほか、最初期の作品とされる「揺籃」や夢二の自伝的小説「出版」の挿絵原画なども公開予定です。また本コレクションの中から、「女性」「子ども」「植物」「船」の描かれた4つのモチーフをもとに、「大正ロマン」の象徴とされる夢二作品の面白さも紹介します。

関連講座

「龍星閣創業者 澤田 伊四郎:出版にかける情熱」
 日時:2月4日(土曜日)午後2時
 会場:日比谷図書文化館4階 スタジオプラス
 講師:安田隼人さん(秋田県小坂町立総合博物館郷土館)
 参加費:500円 (注意) 事前申込抽選制(定員40名)
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関連講座のうち、2月4日(土)開催のもの。澤田の出身地である秋田県小坂町の総合博物館郷土館さんの学芸員・安田隼人氏が講師を務められます。

平成30年(2018)、龍星閣さんから同町に光太郎関連資料が大量に寄贈されました。『高村光太郎全集』に漏れていたものも含む光太郎から澤田宛の書簡、光太郎が贈った署名本などなど。それらを拝見するために、同館を二度訪れましたが、その際に大変お世話になりました。
東北レポートその1 秋田小坂。
東北レポートその2 青森十和田湖。
GWレポート その2 小坂町立総合博物館郷土館企画展「平成29年度新収蔵資料展」。

また、その後、岩手花巻の高村山荘(光太郎が戦後の7年間蟄居生活を送った山小屋)、高村光太郎記念館さんを訪れた際、たまたま同氏も小坂町の一般の方々を引率なさって訪れられていたのにも遭遇しました。

講座の副題が「出版にかける情熱」ということですので、『智恵子抄』その他の光太郎著書についても触れられるのではないでしょうか。現物は無理としても、光太郎署名本の画像等、講座内で提示されるかも知れません。

実は申込期限が過ぎているのですが、まだ定員に達していない可能性、キャンセル等があることも考えられますので、ご紹介しておく次第です。

ちなみに企画展自体は、上記プレスリリースの通り、竹久夢二がメインです。光太郎関連は小坂町さんに寄贈されましたが、夢二関連は平成27年(2015)、千代田区さんに寄贈され、これまでも東京ステーションギャラリーさんなどで展示が為されています。

死蔵とならないようこうして機会を設けて展示する千代田区さんの姿勢にも、頭が下がりますね。ご興味のおありの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

くもり冷 看護婦変る、 孟彦くる 新潮田中女史くる 原稿渡し 草野さんくる、 藤間節子さんくる


昭和31年(1956)3月28日の日記より 光太郎74歳

その死の5日前です。「孟彦」は実弟の藤岡孟彦、「藤間節子さん」は「智恵子抄」を舞踊化した人物。

原稿」は雑誌『新潮』に載った「アトリエにて」という連載の第10回にして最終回「焼失作品おぼえ書」です。当会の祖・草野心平の日記から。

高村さん新潮の原稿一枚書く。(アトリエにてを八枚書いてあつたが、一枚書き足す)ビツクリする。新潮社田中さんきたり原稿をもつてかへる。今日は可成り元気。NHKから来た果物を食べるといはれる。

しかし、いわゆる蠟燭の炎が消える前の一瞬の輝きだったようでした。