光太郎実弟にして鋳金分野の人間国宝だった髙村豊周の作品が出ています。

かねは雄弁に語りき 石川県立美術館の金属コレクション

期 日 : 2023年1月4日(水)~2月5日(日)
会 場 : 石川県立美術館 石川県金沢市出羽町2-1
時 間 : 午前9時30分から午後6時まで
休 館 : 会期中無休
料 金 : 一般600円(500円) 大学生400円(300円) 高校生以下無料 ( )内団体料金

 美術館活動の核はコレクション(収蔵品)です。日本では、全国約5700館のミュージアムがそれぞれ独自のミッションのもとで作品を収集し、研究・展示・活用を行っています。ある分野に特化した美術館も多い中、石川県立美術館のコレクションの特色は、幅広い分野・時代の作品を所蔵していることです。「石川ゆかり」をキーワードに、古美術・工芸・絵画・彫刻などを網羅する作品群が、1959年の開館以来、今日まで受け継がれています。
 このたび、当館コレクションの魅力を発信する事業として本展を開催します。「金属」というテーマのもと、古美術から現代までの作品が一堂に会します。ふだんは時代や技法ごとに別々の展示室で紹介されている作品を同時に紹介する内容は、当館としては新たな試みとなります。「用途」「技巧」「素材」という3章構成で、音や重さ、“超絶技巧”など、様々な視点から金属の魅力に迫ります。冷たい、無機質などとイメージされることも多い金属ですが、実は色彩豊かで様々な表情をみせる素材であることをご体感いただけることでしょう。
 本展は、金属の魅力を紹介するとともに、コレクションの魅力をこれまでとは異なる視点から発信する機会となります。当館コレクションを見慣れた方も、そうでない方も、新たな発見を楽しんでいただければ幸いです。
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ネット上に出品目録がアップされていました。さらに「デジタル図録」も。
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豊周作品は「朱銅三筋文花入」。昭和40年(1965)の作品です。
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それから、豊周の弟子筋にして、光太郎歿後に光太郎ブロンズ作品を多数鋳造された、故・齋藤明氏の作品も。
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左が「青銅壺」、右は「朧銀斜交細文壺」。

豊周作品、齋藤氏作品、ともに金属でありながら、不思議な温かみが感じられます。それをいえば、優れた金工作品には共通する属性なのかもしれませんが。

というわけで、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

ひる過北川太一氏くる、デユボンネ2本もらふ、 自民党某といふ人くる、病気の旨のべる、

昭和31年(1956)1月30日の日記より 光太郎74歳

デユボンネ」は、現代では「デュボネ」と表記することが多いようですが、フランス系のワインです。

自民党某」については、その場にいらした故・北川先生(当会元顧問)の証言が残っています。

あるとき、自由党の偉い人が来て、党の詩の選出を高村さんに頼みにきたことがあったんです。そのとき、晩年の高村さんは「今自分は身体が悪いから」と断ったんです。そしたら「いくつか選んでくるから、その中から一つを選んでくれればよいので」って言ったんです。それを聞いた高村さんは声を荒げて「詩の選をするなら、全部読んでその中からよいと思うものを選ぶので、君たちが選べばよいものをみんな落としてしまう」と答えた。声を荒げた高村さんはそのとき見ただけですが、上の人に対してそんな態度をとる一方で、僕ら青二才が行ってもまともに答えてくれるのは、すごい人だなと思ったんですよね。

北川先生の証言では「自由党」となっていますが、前年に「自由党」と「日本民主党」がいわゆる保守合同で「自由民主党」となり、55年体制が確立しました。

光太郎、戦前や戦時中に、雑誌の投稿詩の選者を務めたことが複数回あって、そのうち、編集部が一次審査的に選別してから光太郎に廻すというスタイルの場合もありました。それで、自分がいいと思う作品が落とされていたという経験があったのかもしれません。

それにしてもこの日の光太郎の塩対応、痛快ですね(笑)。