新刊です。
名著入門 日本近代文学50選
2022年12月30日 平田オリザ著 朝日新聞出版(朝日新書) 定価850円+税何を読むか、どう読むか――。日本近代文学の名作にこそ現代人の原型あり。50人の名著を魅力的に読み解く第一級の指南書!
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日本近代文学は、まだ百数十年の歴史しかない。本書を通じて、そこに関わった者たちの懊悩、青臭い苦悩を感じ取っていただければ幸いだ。(「はじめに」より)
元々は『朝日新聞』さんの読書面に「古典百名山」の題で連載されていたものに加筆なさったそうで。なるほど、「『智恵子抄』高村光太郎」の章、一昨年の『朝日新聞』さん掲載時より、引用部分等長くなっています。
『朝日新聞』さんに、紹介の記事も出ました。
文学に造詣が深く、「日本文学盛衰史」(高橋源一郎さん原作)などの演出もある平田さんは、2019~22年にかけて「古典百名山」を連載。本書では大幅に加筆し、取り上げる作家も増やした。
(略)
平田さんは「制度は変わって国家は新しくなったけれど、社会は旧態依然として差別や貧困が渦巻いていて自由も制約されている。こうした中で生まれた近代文学は、現代でも共通する様々な悩みがちりばめられた私たちの原典ともいえる」と話す。
豊富な引用と、「非専門家の特権として」(平田さん)の、思い切った表現も魅力的。たとえば「漱石たちが発明した文体で私たち日本人は、一つの言葉で政治を語り、裁判を行い大学の授業を受け、喧嘩をしラブレターを書くことができるようになった」といった具合だ。
平田さんは、情報化が進んだいまこそ、古典を読むことが重要だと考えている。
「検索すれば多くが分かる社会にあって、事柄同士をつないでストーリーを作る『コネクティング・ザ・ドッツ』の能力が、入試やビジネスでも重要になっている。その能力は、野球の素振りと同じで、古典などの名作にどのくらい触れたかにかかってくると思う」
劇団、教育機関、行政と様々な役職に就いてきた経験に裏打ちされた言葉だ。
タイトル通り、「入門」としては的確な書と思われます。ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
中西夫人余を見て顔のむくみに気づく、
「中西夫人」は起居していた貸しアトリエの大家さん。光太郎の生命の炎、燃えつきるまであとひと月半。そろそろ死相が現れ始めたのかも知れません……。
目次
はじめに
【第一章】 日本近代文学の黎明
はじめに
【第一章】 日本近代文学の黎明
『たけくらべ』樋口一葉
『舞姫』森鷗外
『金色夜叉』尾崎紅葉
『内部性名論』北村透谷
『浮雲』二葉亭四迷
『小説神髄』坪内逍遥
『舞姫』森鷗外
『金色夜叉』尾崎紅葉
『内部性名論』北村透谷
『浮雲』二葉亭四迷
『小説神髄』坪内逍遥
【第二章】 「文学」の誕生
『武蔵野』国木田独歩
『病牀六尺』正岡子規
『三酔人経綸問答』中江兆民
『破戒』島崎藤村
『坊っちゃん』夏目漱石
『みだれ髪』与謝野晶子
『病牀六尺』正岡子規
『三酔人経綸問答』中江兆民
『破戒』島崎藤村
『坊っちゃん』夏目漱石
『みだれ髪』与謝野晶子
【第三章】 先駆者たち、それぞれの苦悩
『一握の砂』石川啄木
『蒲団』田山花袋
『若山牧水歌集』若山牧水
『兆民先生』『兆民先生行状記』幸徳秋水
『高野聖』泉鏡花
『邪宗門』北原白秋
『蒲団』田山花袋
『若山牧水歌集』若山牧水
『兆民先生』『兆民先生行状記』幸徳秋水
『高野聖』泉鏡花
『邪宗門』北原白秋
【第四章】 大正文学の爛熟
『河童』芥川龍之介
『城の崎にて』志賀直哉
『雪国』川端康成
『細雪』谷崎潤一郎
『小さき者へ』有島武郎
『月に吠える』萩原朔太郎
『紙風船』岸田國士
『城の崎にて』志賀直哉
『雪国』川端康成
『細雪』谷崎潤一郎
『小さき者へ』有島武郎
『月に吠える』萩原朔太郎
『紙風船』岸田國士
【第五章】 戦争と向き合う文学者たち
『蟹工船』小林多喜二
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
『風立ちぬ』堀辰雄
『智恵子抄』高村光太郎
『怪人二十面相』江戸川乱歩
『山椒魚』井伏鱒二
『浮雲』林芙美子
『麦と兵隊』火野葦平
『濹東綺譚』永井荷風
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
『風立ちぬ』堀辰雄
『智恵子抄』高村光太郎
『怪人二十面相』江戸川乱歩
『山椒魚』井伏鱒二
『浮雲』林芙美子
『麦と兵隊』火野葦平
『濹東綺譚』永井荷風
『山月記』中島敦
『落下傘』金子光晴
『落下傘』金子光晴
【第六章】 花開く戦後文学
『津軽』太宰治
『堕落論』坂口安吾
『夫婦善哉』織田作之助
『俘虜記』大岡昇平
『火宅の人』檀一雄
『悲の器』高橋和巳
『砂の女』安部公房
『金閣寺』三島由紀夫
『堕落論』坂口安吾
『夫婦善哉』織田作之助
『俘虜記』大岡昇平
『火宅の人』檀一雄
『悲の器』高橋和巳
『砂の女』安部公房
『金閣寺』三島由紀夫
【第七章】 文学は続く
『裸の王様』開高健
『楡家の人びと』北杜夫
『坂の上の雲』司馬遼太郎
『父と暮らせば』井上ひさし
『苦海浄土』石牟礼道子
『ジョバンニの父への旅』別役実
おわりに
作家索引/略歴
光太郎も登場人物の一人として名を連ねる演劇、「日本文学盛衰史」の脚本を書かれた平田オリザ氏の新著です。『楡家の人びと』北杜夫
『坂の上の雲』司馬遼太郎
『父と暮らせば』井上ひさし
『苦海浄土』石牟礼道子
『ジョバンニの父への旅』別役実
おわりに
作家索引/略歴
元々は『朝日新聞』さんの読書面に「古典百名山」の題で連載されていたものに加筆なさったそうで。なるほど、「『智恵子抄』高村光太郎」の章、一昨年の『朝日新聞』さん掲載時より、引用部分等長くなっています。
『朝日新聞』さんに、紹介の記事も出ました。
選び抜いた古典、いまを照らす 平田オリザさん「名著入門 日本近代文学50選」
劇作家の平田オリザさんが、本紙読書面のコラム「古典百名山」を元にした『名著入門 日本近代文学50選』(朝日新書)を出版した。明治の樋口一葉や夏目漱石から戦後の別役実まで、小説に留(とど)まらず詩歌や戯曲まで。50人を一人1作ずつ平易な語り口で紹介すると同時に、通読すると近代文学史の流れもつかめる指南書に仕立てた。文学に造詣が深く、「日本文学盛衰史」(高橋源一郎さん原作)などの演出もある平田さんは、2019~22年にかけて「古典百名山」を連載。本書では大幅に加筆し、取り上げる作家も増やした。
(略)
平田さんは「制度は変わって国家は新しくなったけれど、社会は旧態依然として差別や貧困が渦巻いていて自由も制約されている。こうした中で生まれた近代文学は、現代でも共通する様々な悩みがちりばめられた私たちの原典ともいえる」と話す。
豊富な引用と、「非専門家の特権として」(平田さん)の、思い切った表現も魅力的。たとえば「漱石たちが発明した文体で私たち日本人は、一つの言葉で政治を語り、裁判を行い大学の授業を受け、喧嘩をしラブレターを書くことができるようになった」といった具合だ。
平田さんは、情報化が進んだいまこそ、古典を読むことが重要だと考えている。
「検索すれば多くが分かる社会にあって、事柄同士をつないでストーリーを作る『コネクティング・ザ・ドッツ』の能力が、入試やビジネスでも重要になっている。その能力は、野球の素振りと同じで、古典などの名作にどのくらい触れたかにかかってくると思う」
劇団、教育機関、行政と様々な役職に就いてきた経験に裏打ちされた言葉だ。
タイトル通り、「入門」としては的確な書と思われます。ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
中西夫人余を見て顔のむくみに気づく、
昭和31年2月14日(火)の日記より 光太郎74歳
「中西夫人」は起居していた貸しアトリエの大家さん。光太郎の生命の炎、燃えつきるまであとひと月半。そろそろ死相が現れ始めたのかも知れません……。