平成30年(2018)に初演され、昨年、北海道と岩手で公演があった演劇の都内と兵庫での巡回です。登場人物には光太郎も名を連ねます。

青年団第96回公演『日本文学盛衰史』吉祥寺・伊丹公演

文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。

高橋源一郎氏の小説『日本文学盛衰史』を下敷きに、日本近代文学の黎明期を、抱腹絶倒のコメディタッチでわかりやすく綴った青春群像劇。初演時に大きな反響を呼び、第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品の待望の再演となる。笑いの中に「文学とは何か」「近代とは何か」「文学は青春をかけるに値するものか」といった根本的な命題が浮かび上がる、どの年代でも楽しめるエンタテイメント作品。
[上演時間:約2時間40分(予定)・途中休憩なし]

吉祥寺公演
 期 日 : 2023年1月13日(金)~ 1月30日(月)
 会 場 : 吉祥寺シアター 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
 時 間 : 1月13日(金) 19:00  1月14日(土) 14:00 1月15日(日) 12:30 18:00
       1月16日(月) 18:30  1月17日(火) 14:00 1月19日(木) 19:00
       1月20日(金) 19:00  1月21日(土) 12:30 18:00  1月22日(日) 14:00
       1月23日(月) 19:00  1月25日(水) 13:30 1月26日(木) 19:00
       1月27日(金) 19:00  1月28日(土) 14:00 1月29日(日) 12:30
       1月30日(月) 13:00
 料 金 : 早割(1/13〜1/15)
        前売・予約 一般:3,500円 26歳以下:2,500円 18歳以下:1,500円
        当日    一般:4,000円 26歳以下:3,000円 18歳以下:2,000円
       通常料金(1/16〜1/30)
        前売・予約 一般:4,000円 26歳以下:3,000円 18歳以下:2,000円
        当日    一般:4,500円 26歳以下:3,500円 18歳以下:2,500円
伊丹公演
 期 日 : 2023年2月2日(木)~2月6日(月)
 会 場 : 伊丹市立演劇ホール  兵庫県伊丹市伊丹2-4-1
 時 間 : 2月2日(木) 18:30  2月3日(金) 18:30  2月4日(土) 12:30 18:00
       2月5日(日) 12:30 18:00  2月6日(月) 14:00
 料 金 : 前売・予約 一般:3,000円 26歳以下:2,000円 18歳以下:1,000円
       当日    一般:3,500円 26歳以下:2,500円 18歳以下:1,500円

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ
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脚本の平田オリザ氏へのインタビューから。

 取りあげられている時代は、明治の近代文学の黎明期ですし、そこでは言文一致がキーワードのひとつになっています。そのうえ、新たに生まれた自由民権の思想などが複雑に絡みあって日本の近代文学を展開させていく。その生みの苦しみが描かれていきます。
(略)
 1場が「北村透谷(1868〜1894年)の死」、2場が「正岡子規(1867〜1902年)の死」で葬式を描いているんですけど、ここまでは文学とか日本語の話。井上さんの言葉を借りれば「ひとつの言葉で政治の話もでき、裁判もでき、ラブレターも書け、喧嘩もできるような日本語を作ることが、近代国家にとっては必須のこと」であり、だから、北村透谷も、正岡子規もそうなんですけれど、二葉亭四迷(1864〜1909年)でさえも、反権力ではないんです。みんな日本のためを思ってやっている。要するに、この時期は、近代国家の成立という国家の夢と個人の夢が重なった、古き佳き時代なんです。
 それが徐々に変質していって、最終的に大逆事件があって……だから、幸徳秋水が大事なんですけど……そこに石川啄木が関わって、「夏目漱石(1867〜1916年)の死」で明治という古き佳き時代が終わる。そこまでを直球勝負で書きたいと思って構想しました。
(略)
 最後の4場「夏目漱石の死」(1916年)になると、そのころには本が売れるようになりますから、日本が金持ちになって、大衆が文学を手に取る。円本(1冊1円の全集シリーズ)みたいなものが出てくる。そして文壇が形成されていくわけですね。しかし、それらは最終的には、約20年後、戦争協力というかたちでほとんど破滅するわけですけれども、そこを予感させて終わるという構成になっています。

ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

晴、温、平熱 中西さん宅にて雑煮、桑原さんは見えず、 日向ぼっこ、 后高村武次さん美津枝さんくる、 夕方横臥、 夕食カニ玉、


昭和31年(1956)1月1日の日記から 光太郎74歳

光太郎が4月2日に歿する昭和31年(1956)の年明けです。「中西さん宅」は起居していた貸しアトリエ敷地内の大家さん。「桑原さん」は中西家と親しかった美術史家・桑原住雄、「美津枝さん」は光太郎実弟にして鋳金の人間国宝となる豊周の息女、「高村武次さん」はその夫。のちの岩波映画製作所社長です。たまたま同じ高村姓でした。

この年7月には、政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言しました。朝鮮戦争による特需景気、その後の神武景気を経て、前年のGDPが戦前の水準を上回ったためです。国際的にも日ソ共同宣言が出され、シベリア抑留最後の引き揚げ船が到着、また、日本の国連加盟もありました。こうした年に光太郎が亡くなったというのも、何やら象徴的ですね。

ちなみにこの年の芥川賞は、石原慎太郎の「太陽の季節」。実弟の裕次郎主演で即刻映画化もされました。海外ではエルヴィス・プレスリーが人気を博していました。