いわゆるコレクション展で、光太郎木彫2点が出ています。

メナード美術館開館35周年記念展 所蔵企画 35アーティストvol.Ⅱ

期 日 : 2023年1月6日(金)~4月2日(日)
会 場 : メナード美術館 愛知県小牧市小牧5-250
時 間 : 午前10時から午後5時
休 館 : 月曜日(1月9日は開館)、1月10日
料 金 : 一般 900円 (700円) 高大生 600円 (500円) 小中生 300円 (250円)
      ( )内は20名以上の団体

開館35周年記念展の第2弾「35アーティストvol.Ⅱ」では、当館を代表する作家35人のなかから9人の作品をご紹介いたします。大胆な筆づかいと色彩による作品を描いたゴッホ、北斎の娘で美人画の名手とうたわれた葛飾応為(後期展示のみ)、戦後の日本洋画壇をけん引した梅原龍三郎、詩人としても知られる彫刻家の高村光太郎らの作品をご覧いただきます。さらには、9人を軸にゆかりのある作家たちの作品をともに展示し、より当館のコレクションをお楽しみいただけるものとなっています。

主な出品作家
フィンセント・ファン・ゴッホ、ジェームズ・アンソール、尾形光琳(前期展示)
葛飾応為(後期展示)、安田靫彦、梅原龍三郎、国吉康雄、高村光太郎、鈴木五郎ほか


初公開コレクション
ノーマン・ロックウェル《牛乳配達夫とカップル(パーティー出席者たち)のための習作》
土佐光芳《三十六人歌合帖》、鈴木五郎《石との融合 五利部椅子》


その他の出品作家          
ピエール=オーギュスト・ルノワール ポール・ゴーギャン フェルナン・クノップフ
エドヴァルド・ムンク ピエール・ボナール ジュール・パスキン 
ノーマン・ロックウェル ポール・デルヴォー アレクサンダー・カルダー
本阿弥光悦(前期展示)  俵屋宗達(前期展示) 烏丸光広(後期展示) 葛飾北斎(後期展示)
小林古径 前田青邨 安井曽太郎 岸田劉生 前田寛治 高田博厚 佐藤忠良
など

というわけで、光太郎木彫「栄螺」(昭和5年=1930)と「鯰」(同6年=1931)が展示されています。
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「栄螺」は平成15年(2003)に、約70年ぶりにその存在が確認され、大きく報じられました。
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その後、同館が買い取り、時折展示して下さっています。光太郎彫刻の中では、一つのエポックメーキングとなった作品です。これを作る前と後で、彫刻の概念そのものに大きな変化があったとのこと。

「鯰」は、複数作られたもののうち、新潟の素封家・松木喜之七に贈られたものです。松木は鯉の木彫を光太郎に依頼し、光太郎も何とか彫り上げようとしましたが、どうしても自分で納得の行く作が出来ず、代わりに、とこの鯰を進呈しました。しかしその後、松木は太平洋戦争末期、もういい年だったにも拘わらず「根こそぎ動員」に遭って出征、台湾沖で戦死してしまいました。光太郎は依頼に応えられなかったことを深く悔んだようです。
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光太郎木彫が見られる機会はそう多くありません。ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

夜になつてから山口の浅沼菊蔵さん、重次郎さん細君忠善さん細君、佐々木といふ人とくる、昌歓寺に観音像との事、約束しがたき事告げる


昭和30年(1955)12月5日の日記より 光太郎73歳

山口」は昭和20年(1945)から同27年(1952)まで光太郎が蟄居生活を送っていた岩手県花巻郊外旧太田村山口地区。「昌歓寺」は太田村の古刹で、蟄居中に光太郎も何度か足を運んでいます。

そちらに新たに十一面観音像を奉納、その制作をお願いしたいという依頼はこれ以前からあり、おそらく来訪した面々は、見舞いがてらの催促だったように思われます。結局、それは実現出来ず、光太郎歿後になって光太郎の父・光雲の弟子筋に当たる彫刻家・森大造が光太郎の代わりに制作に当たりました。この像は同寺に現存しています。