先週書きかけて途絶してしまった新刊紹介の続きです。

当会顧問であらせられた故・北川太一先生の御著書を多数刊行されている文治堂書店さんから発行されている文芸同人誌的な『とんぼ』。第15号が届きました。
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版元店主・勝畑耕一氏による「追慕録」に、今年8月に亡くなった北川節子様の追悼文が掲載されています。節子様、当会顧問であらせられた故・北川太一先生の奥様で、北川先生同様、生前の光太郎をご存じの方でした。

それから、手前味噌で恐縮ですが、当方の連載「連翹忌通信」。前号から最近の「もの」の発見ということで、今号は花巻市に寄贈された光太郎の父・光雲作の木彫天鈿女命像と、鋳銅製准胝(じゅんてい)観音像について。

ご入用の方、文治堂書店さんまでご注文なさってください。頒価500円+税とのことです。

新刊、といえば、最近、光太郎の名を冠した自費出版の書籍が出ました。早速購入してみましたが、読み始めて驚きました。「こんなものを出版するとは何事だ」という感じで。

極端な話、1ページに1箇所は事実誤認。それから同じく1ページに1箇所は根拠不明の独断(そういう事実は確認出来ていないという事柄を根拠にしての論の展開)。さらにいうなら、1ページに1箇所は「てにをは」の崩壊や誤字脱字。人様に読んでいただくという姿勢が欠落しています。話の進め方もあっちへ行ったりこっちへ行ったりで、明治期の話かと思うと突然脈絡もなく戦中や戦後の話に飛び、予備知識がない読者には、いつの話をしているのかさっぱり分からないと思います。途中、いろいろ出典が書かれてはいるのですが、どうも『高村光太郎全集』に眼を通していないようですし。いくら自費出版だといっても、ありえませんね。

3分の1くらいまでは我慢しながら読んだのですが、途中でやめました。時間の無駄ですし、精神衛生上もよくありません。

「××」という本が出ているのに、なぜこのブログで紹介しないんだ? と思われた方、そういうわけですのでよろしく。

【折々のことば・光太郎】

二時回診、ラジオで角力、


昭和30年(1955)5月19日の日記より 光太郎73歳

宿痾の肺結核悪化による、赤坂山王病院入院中の一コマです。

この日、光太郎が聴いていた大相撲中継は、夏場所。かの栃錦が横綱として優勝し、のちの大横綱となる初代若ノ花が関脇でした。平幕には元寺尾関・元逆鉾関の父・鶴ヶ峯など。大鵬はまだデビューしていませんでした。