当会の祖・草野心平を顕彰するいわき市立草野心平記念文学館さんの企画展です。 

企画展「草野心平 蛙の詩」

期    日 : 2019年4月13日(土)~6月30日(日)
会    場 : いわき市立草野心平記念文学館 福島県いわき市小川町高萩字下タ道1-39
時    間 : 9時から17時まで
料    金 : 一般 430円(340円)/高・高専・大生 320円(250円)
        小・中生 160円(120円) ( )内は20名以上団体割引料金
休 館 日 : 月曜日(4/29・5/6は開館)

 草野心平の創作における代表的な主題の一つが「蛙」です。1928年に刊行した初の活版による詩集『第百階級』収録作品をはじめ、彼は蛙を主題にした詩を200篇以上つくりました。
 本展では、心平が蛙の詩を創作した背景、そして様々な解釈によって読者の感性に問いかける表現手法などを、関連資料や彼自身による作品への言及から解説し、その魅力をあらためて紹介します。

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関連イベント等

ギャラリートーク   5月11日(土) 6月1日(土)  13 時30 分 要観覧料

スポット展示「猪狩満直」  4月6日(土)〜6月30日(日)
いわきゆかりの作家で、草野心平とも交友があった猪狩満直の生涯と作品の魅力を紹介。

記念講演会  「草野心平と蛙の詩をめぐって」  5月12日(日)  14:00~15:00
講師 齋藤貢氏(詩人・歴程同人)

文学散歩  「草野心平ゆかりの川内村をめぐる」  6月16日(日) 9:00~16:00
天山文庫をはじめ、モリアオガエルの生息地・平伏沼などをめぐります。
マイクロバスで移動(徒歩移動も含む) 定員20名 有料 要予約


というわけで、改めて心平詩の真骨頂である蛙の詩が取り上げられます。すると、光太郎とも密接な縁。

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まず、昭和3年(1928)の『第百階級』(銅鑼社)。活版印刷による心平第一詩集にして、全編蛙の詩です。こちらに光太郎が序文を寄せています。

 詩人とは特権ではない。不可避である。
 詩人草野心平の存在は、不可避の存在に過ぎない。云々なるが故に、詩人の特権を持つ者ではない。云々ならざるところに、既に、気笛は鳴つてゐるのである。(略)
 詩人は断じて手品師でない。詩は断じてトウル デスプリでない。根源、それだけの事だ。

トウル デスプリ」は仏語で「tour d'esprit」。「性格」「傾向」と言った意味です。

次に、昭和13年(1938)の『蛙』(三和書房)。装幀と題字揮毫が光太郎です。題字揮毫は昭和26年(1951)の『定本蛙』でも(表紙でなく扉)。

おそらく、展示ではそういった点にも触れて下さっているのではないでしょうか。

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また、スポット展示で取り上げられる猪狩満直も、光太郎が高く評価した詩人です。光太郎は雑誌『南方詩人』第6輯(昭和5年=1930)に寄せた散文「猪狩満直詩集「移住民」に就て」で、こう述べています。

此の北地に闘つてゐる人のまぎれのない声は、どんなジヤスチフイケイシヨンがあらうとも結局まだ中途に立つてゐる私などの腹わたに強くこたへる。私は其をまともに受ける。かういふ強さは、ひねくれた強さでないから、痛打を受ける事が既に身になる。

『移住民』は、前年に北海道阿寒に移っての開墾生活を題材とした猪狩の詩集です。


さらに、6月には川内村への文学散歩も企画されています。


ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

これから私の本当の彫刻がいくらでも生まれる。過去よ去れ、過去よ消えよ。今こそ破算と創建との切換の自然到来。私の仕事はこれからであり日本の美しい美が私を待つて其処にゐる。

散文「仕事はこれから」より 昭和20年(1945) 光太郎63歳

4月13日の空襲で、亡き智恵子と過ごしたアトリエ兼住居が全焼。近くにあった妹の婚家に避難していた時の文章です。5月には、宮沢賢治の実家からの誘いで花巻に疎開。妹の婚家は光太郎が去ってからの空襲でやはり全焼しました。

「仕事はこれから」と言っても、空元気の感が拭えませんね。実際、この後、結核による臥床や敗戦、花巻郊外太田村への移住、そして戦時の翼賛活動を恥じての蟄居など、さまざまな流転を重ねることになり、「本当の彫刻がいくらでも生まれる」という事態にはなりませんでした。