昨日は都内3ヶ所を廻っておりました。

まず、千駄木の文京区立森鷗外記念館さん。こちらで特別展「一葉、晶子、らいてう―鷗外と女性文学者たち」を拝見。

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左は団子坂からではなく区立第八中学校さんの方から上がっていった正面玄関。敷石部分は戦災で消失する前からあった鷗外旧宅「観潮楼」時代のもの。右は館入り口の扉です。

与謝野晶子は、新詩社における光太郎の師ともいえる姉貴分。『青鞜』の表紙絵を智恵子に依頼した平塚らいてうは日本女子大学校での智恵子の一学年先輩にしてテニス仲間。早逝した樋口一葉は光太郎智恵子と直接の関わりはなかったようですが、光太郎は同じく早逝した実姉・さく(咲子)の風貌が一葉に似ていたと回想しています。

そして森鷗外は、東京美術学校で教壇に立っていたこともあり、光太郎は美学の授業を受けました。その後も観潮楼歌会に参加していますが、どうも近所に住んでいながら敬して遠ざけるという面があったようです。しかし鷗外の方では、「しょうがない奴だ」と思いつつも光太郎の才を認め、かわいがっていた部分があります。

その鷗外は、一葉、晶子、らいてうそれぞれも高く評価していました。

樋口一葉さんが亡くなつてから、女流のすぐれた人を推すとなると、どうしても此人であらう。晶子さんは何事にも人真似をしない。(略)晶子さんと並べ称することが出来るかと思ふのは、平塚明子さんだ。(「与謝野晶子さんに就いて」 『中央公論』第27年第6号 明治45年=1912)

「明子」はらいてうの本名「明(はる)」から。

そこで今回の展示は、彼女たちの代表的な業績を象徴する品々や、鷗外やその周辺人物と三女性とのかかわりに関する資料などが並んでいました。

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光太郎智恵子に関わる展示物も複数。興味深く拝見しました。

図録が作成されており、購入。税込み860円とお買い得です。尾形明子氏(文芸評論家)、出口智之氏(東京大学准教授)、三枝昂之氏(歌人・山梨県立文学館館長)など、執筆陣も豪華です。三枝氏と尾形氏は、この後、同展の関連行事として講演をなさいます。

 講師:三枝昻之氏(歌人・山梨県立文学館館長)   
 日時:62日(日)14時~1530

講演会2「森鷗外と新しい女たち」
 講師:尾形明子氏(文芸評論家)  
 日時:68日(土)14001530

また、関連行事の扱いにはなっていないようですが、以下も予定されています。

 講師:倉本幸弘氏(森鴎外記念会常任理事)  
 日時:5月30日(木)10時30分~14時

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それぞれ申し込みは同館まで。ぜひどうぞ。

この後、田端方面へ。以下、明日。


【折々のことば・光太郎】

思ひつきばかりの自己流は案外脆いし、叡智の欠けた継承は生命を捉へ得ない。
散文「某月某日」より 昭和18年(1943) 光太郎61歳

この年、東京府美術館で開催された「皇太子殿下御誕辰記念日本近代美術館建設明治美術名作大展示会」を見ての感想です。

というわけで造形美術に関する発言ですが、文学、音楽等、あらゆる芸術に当てはまるような気もします。