光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」(昭和28年=1953)の立つ、青森十和田市。

過日、ご紹介しました十和田市の劇団「エムズパーティー」さんによるDVD「乙女の像ものがたり 多言語字幕版」を、同劇団主宰の仲島みちるさんからいただきました。深謝です。

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もともとは、十和田湖奥入瀬観光ボランティアの会さんが、平成27年(2015)に刊行された書籍『十和田湖 乙女の像のものがたり』。光太郎の令甥、故・髙村規氏や、当会顧問・北川太一先生、乙女の像設置工事の際の技師だった小山義孝氏などへのインタビューなどから成り、当方も執筆させていただきました。

当方の主な執筆部分は「乙女の像」制作の背景をまとめた「「乙女の像」概説」、さらにそれとは別に「子供にもわかるものを」という注文があり、光太郎を主人公とし、史実を元にしたジュブナイルフィクション「乙女の像のものがたり」も書きました。

平成28年(2016)には、その「乙女の像のものがたり」を換骨奪胎し、十和田市の劇団エムズ・パーティーさんが朗読劇にされて公演、さらに「平成28年度 元気な十和田市づくり市民活動支援事業」の指定を受け、十和田市さんからの助成を受けてDVDを制作なさいました。

さらに、増加するインバウンドの方々向けにということで、今回、「多言語字幕版」が作成されまして、今日、十和田市で完成披露お披露目会が開催されています。

吹き替えで他言語に対応するにはとてつもない人手が必要ですが、字幕であればそうでもなく、いいアイディアですね。ただし、字幕を作成して下さった皆さん、やはりご苦労がいろいろおありだったと思われます。当方、翻訳されることなど全く夢想だにせずして書いたもので(笑)。

英語版は三沢市でALT(外国語指導助手)を勤められているエイダン・モリソンさん、韓国語版で同国の旅行会社に勤務されていたというカン奏子さん、中国語版(繁体字の台湾など向け/簡体字の中国本土向け)を中国で日本語教師や観光ガイドを務められていた立崎ヒロアキさんが担当して下さったそうです。附属のリーフレットもお三方によるものでしょう。

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日本語の字幕もついています。

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字幕の言語指定を切り替えると……。

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ハングル以外は、けっこう「なるほど」という感じです(笑)。

「乙女の像ものがたり」以外にも、「国立公園を楽しむためのルールとマナー」という項もあります。

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文化や生活習慣の違いというのもありますから、こういうことも大事なことですね。ちなみに十和田市さんでは、スマートフォンなどで読み込むQRコードを駆使した観光案内も実施なさっています。

来年、2020年は、東京オリンピック。訪日される外国の方は多いことでしょう。全国の観光地で、このような取り組みが広がってほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

まるで鎌いたちのやうに忽然と来て忽然と去つたジヤン コクトウは、しかしいい土産を日本に置いていつた。それは醒めてゐる事の密度の高さをわれわれに印象させてくれた事だ。コクトウに比べるとわれわれはまだ眠たげに見える。まだ十分心身の隅々にまで意識がゆき渡つてゐないかに見える。

散文「某月某日」より 昭和11年(1936) 光太郎54歳

この年訪日した、フランスの詩人ジャン・コクトー。光太郎同様、詩以外にも絵画や小説、脚本、映画監督など、さまざまな分野で足跡を残し、「芸術のデパート」と呼ばれました。そうした部分から、光太郎はひそかにシンパシーを感じていたのかもしれません。ちなみに後にディズニー映画になった「美女と野獣」も、コクトーが最初に映画化しました。その際、来日した折に観た歌舞伎の印象がインスパイアされているという説もあります。

「異文化交流」、大切なことですね。


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