過日ご紹介した『朝日新聞』さんの記事「(危機の時代の詩をたどって:5)同調圧力、戦時中に重ねて」で取り上げられていた、詩人の鈴木一平氏の作品「高村光太郎日記」が載った詩誌『てつき1』を取り寄せました。
メンバーによる作品で構成される刊行物『てつき』創刊号。
2018年10月27日に開催された「仙台ポエトリーフェス2018」での朗読原稿、ならびに同年8月25日に行われた『彫刻1―空白の時代、戦時の彫刻/この国の彫刻のはじまりへ』(トポフィル) 刊行記念トークイベントをきっかけに高村光太郎の戦争協力詩をめぐって制作された鈴木一平の新作「高村光太郎日記」をはじめ、詩・小説など最新10作品を掲載。
鈴木氏の「高村光太郎日記」は、散文詩的な作品。明治末から最晩年までの光太郎詩から詩句を拾い上げ、ちりばめられています。逆行しようとする時代に生きる現代人の漠たる不安感が仮託されているというところでしょうか。
氏ご本人の解説より。
「高村光太郎日記」は、2018年10月27日に行われた「仙台ポエトリーフェス2018」での朗読原稿を下敷きにしている。
朗読で高村光太郎の詩、とりわけ戦争協力詩を取り上げることにしたのは、同年の8月25日に彫刻家の小田原のどかさん、詩人の山田亮太さんと参加した『彫刻1――空白の時代、戦時の彫刻/この国の彫刻のはじまりへ』(トポフィル)刊行記念トークイベントが直接的なきっかけ。
『彫刻 SCULPTURE 1 ――空白の時代、戦時の彫刻/この国の彫刻のはじまりへ』は、昨年6月に刊行されています。そちらには、やはり『朝日新聞』さんの「(危機の時代の詩をたどって:5)同調圧力、戦時中に重ねて」でご紹介された、山田亮太氏の「報国」という詩が掲載されています。
このあたりで皆さんがつながっていたのかと、納得いたしました。
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【折々のことば・光太郎】
好きなものを買ふのは買ふ人個人の勝手だから、第三者から文句を言ふ限りでないには違ひないがその代り、下らないものを買つた人間が第三者から下らない人間だと思はれるのも已むを得ない。
散文「日本人の買つたフランス美術」より 昭和6年(1931) 光太郎49歳
のちに日仏芸術社を興す、画商であったエルマン・デルスニスが集めた現代作品によるフランス美術展は、第一回が大正11年(1922)に開かれ、この年、10周年を迎えました。そこで、過去の同展で購入された名品を並べるというコンセプトで、10周年記念展覧会が開催されました。
ところが、それを見た光太郎曰く「おしなべて日本人が買つたものはフランスの俗つぽい、低級な、若しくは中途半端な「程のいい」美術品が多い」「さもなければ「有名」な作家の「有名」な作の小型のもの」「実際あの展覧会の大半以上の絵画やデツサンは日本に不要のもの」。そして上記の一節に続きます。
結局、明治の頃から日本人の審美眼が発達していないことを嘆いています。