北海道小樽に昨年オープンした似鳥美術館さん主催の市民講座です。  

似鳥美術館研究会「日本における人体像の表現―高村光雲と光太郎」

期    日 : 平成30年12月8日(土)
会    場 : 旧三井銀行小樽支店 北海道小樽市色内1丁目3-1
時    間 : 10:30 ~ 12:00
料    金 : 一般1,500円、小樽市民1,000円、学生700円
講    師 : 岩崎直人氏 (札幌芸術の森学芸企画担当係長)

かつて作家・小林多喜二が働いていた旧北海道拓殖銀行小樽支店。長い時を経て似鳥美術館として生まれ変わり、現在は日本画や洋画、ガラス工芸作品など約300 点以上を常設展示しております。「似鳥美術館 研究会」は、そんな多岐に渡る似鳥美術館のコレクションを紐解いていく、初の本格美術講座です。

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今年の5月から始ま001り、月1回のペースでさまざまなジャンルの美術講座が開かれています。で、12月の講座が光雲と光太郎。会場は同じ小樽芸術村の中にある「旧三井銀行小樽支店」です。

同館ではオープン当初から光雲とその弟子筋の木彫群を一つの目玉として下さっていますし、今年、光太郎のブロンズ「十和田湖畔裸婦像のための手」も、新たに購入されたそうです。また、最近、光雲の「不動明王像」もラインナップに加わったとのこと。

残念ながら、華々しくオープンしたものの、収蔵品がそれっきりで増えるでもなし、こうした講座等の事業を行うでもなし、やがて忘れ去られて寂しく閉館……という美術館さんも現実に少なくない中、似鳥さんの取り組みには頭が下がります。

今後もこうした活動を継続し、できれば売りに出ている光太郎の木彫なども展示品に加えていただきたいものですが……。


【折々のことば・光太郎】

松木氏に依頼されたこの鯉の木彫製作によつて私は数々の彫刻上の経験を味ひ、さまざまなメチエに関する自覚を得た。

散文「松木喜之七遺稿集「九官鳥」によせて――
松木喜之七氏と私の鯉――」より
昭和25年(1950) 光太郎68歳

松木喜之七は新潟長岡の実業家。002趣味人でもあり、文化芸術そしてスポーツにも関心を寄せ、長岡市スポーツ協会の前身・長岡市体育団の会長を務めたりもしました。

戦前、昭和9年に亡くなった光雲の存命中、端午の節句のためにと光太郎に鯉の木彫を依頼、大枚500円をおいていきました。光太郎は早速制作にとりかかりますが、悪癖が頭をもたげ、何度作っても自分で納得が行きません(ブロンズの「成瀬仁蔵胸像」は14年かかりました)。鱗の処理が出来ない、というのです。鱗をリアルに彫ってしまうと俗な置物のようになるし、さりとて彫らずば鯉にならないし……というわけで、結局、完成しませんでした。光太郎、代わりにと「鯰」を進呈しています。現在、愛知小牧のメナード美術館さんに収蔵されている作品です。

確認されている、光太郎が木彫に取り組んでいるところを撮った唯一のスナップ、土門拳による昭和15年(1940)の写真に、「鯉」が写っています。

その後、松木は召集されて、軍服姿で光太郎の元を訪れ出征の挨拶。しかし、南方戦線で還らぬ人となってしまいました。