昨日は智恵子の故郷・福島二本松で、「高村智恵子没後80年記念事業 全国『智恵子抄』朗読大会」を拝聴して参りました。
会場は二本松コンサートホールさん。これまでもたびたび智恵子がらみの公演等で使われています。昭和63年(1988)開館ですが、ネオバロック風の味のある建物です。どうも、建築家の藤森照信氏による先月の碌山美術館さん開館60周年記念講演「碌山美術館の建築と建築家について」を聴いて以来、この手の建築を見ると「古典主義」だの「ロマネスク」だの「バロック」だの「ゴシック」だのと、気になってしかたがありません(笑)。
午後1時、開演。
最初に、過日、同じく「高村智恵子没後80年記念事業」の一環として行われました、「智恵子検定 チャレンジ! 智恵子についての50問」の表彰式。当方、プレゼンテーターを務めさせていただきました。
その後、本編に。
主催の智恵子のまち夢くらぶ・熊谷代表、来賓を代表して三保恵一二本松市長のご挨拶。
審査員の皆さん。
閉会式でのショットですが、中央が審査委員長・福島大学名誉教授・澤正宏氏。左端は先述の熊谷氏、そのお隣が太平洋美術会の坂本富江さん、右から二人目で地元二本松にお住まいの詩人・木戸多美子さん、右端がやはり智恵子顕彰の団体で、智恵子を偲ぶレモン忌主催の智恵子の里レモン会会長・渡辺秀雄氏。
さて、いよいよ朗読。今回、24名の予定で募集したところ、26名応募があり、しかし1名の方はご欠席とのことで、25名となりました。当日開演前にくじ引きで順番を決め、前後半に分けて、まずは前半13名。
休憩をはさんで後半12名。
圧倒的に女性が多く、男性は3名でした。それから、その点がちょっと寂しかったのですが、県外からのご出場は2名のみ。ただ、県内の方々は、浜通りのいわき、相馬、南相馬、中通りでも郡山、福島、伊達など、地元二本松以外からのご参加の方が多く、その点はよかったと思いました。
皆さん、それぞれに工夫を凝らした朗読をされたり、朗読以外でご自分の思いを語られたり、いろいろでした。原発事故にからめて熱く想いを語られた方もいらっしゃいました。事前には25名という多人数ですので、途中でダレてしまうのでは? と危惧しておりましたが、そういうこともなく、終わってみればけっこうあっという間でした。
審査集計の間に、アトラクション。地元の箏曲サークル・福箏会さん。一昨年には智恵子生家で演奏をご披露なさいました。今回は定番の「六段」と、これも二本松市民のソウルソング「智恵子抄」。ちなみに作詞の故・丘灯至夫氏は二本松に近い小野町のご出身で、一昨日には品川プリンスホテルで「故丘灯至夫さんの作品を歌う会」があったとのこと。ほぼ毎年開催されていて、今年で15回目だそうです。
ダンスサークル・スタジオGENさん。モンデンモモさんのCDをバックにソシアルダンス。
このあとすぐに審査発表……のはずでしたが、審査が大もめだそうで、なかなか結果が出ません。それもそうでしょう。25名の方、本当に甲乙つけがたいところがありました。しかし、甲乙つけなければならないのが審査員のつらいところ(当方、審査員を仰せつからなくて本当によかったと思いました(笑))。
そして、いよいよ発表です。以下の通りとなりました。
大賞 宮尾壽里子さん 埼玉県越谷市 「山麓の二人」
優秀賞 緑川明日香さん いわき市 「樹下の二人」
〃 吉岡玲子さん いわき市 「人類の泉」
〃 斎藤イネさん 南相馬市 「樹下の二人」
特別賞 七海貴子さん 郡山市 「あどけない話」
〃 宗像りか子さん 郡山市 「人に」
奨励賞 丹治美桜さん 福島市 「レモン哀歌」
〃 菅野久子さん 二本松市 「智恵子の切抜絵」
大賞の宮尾さんは、詩人でもあり、都内で何度も「智恵子抄」系の朗読講演をなさっている方で、さすがにさすがでした(笑)。
奨励賞のお二人のうち、丹治美桜さんは、最年少の小学4年生(右上画像)。先述の智恵子検定にも参加してくださいました。将来が楽しみです(笑)。もうお一方は、おそらく逆に最高齢、90歳になられたという菅野久子さん。詩ではなく散文の「智恵子の切抜絵」を読まれましたが、民話のような語り口で、味がありました。
その他の受賞者の皆さんも、それぞれにすばらしい朗読でしたので、納得です。ただ、「あの人が入らなかったのか」というのもあったのですが、受賞者数に制限がありますので、しかたありますまい。審査員の皆さんも泣く泣く枠に収めざるをえず、ご苦労なさったと思われます。
終了後、二本松駅前のアーバンホテルさんで懇親会。
会場には、地元の書家の方の作品でしょうか、光太郎詩「あどけない話」を書いた軸。
書といえば、朗読大会の賞状は、手漉きの紙に、地元の方が手書きで書かれたそうで、そうしたお話も披露されました。
先述の智恵子検定、当日、智恵子生家での個展のため受検できなかった、朗読審査員の坂本富江さん、問題を貰ってご自宅でやってみたそうで、すると、50点満点中の49点だったとのこと。非公式ですが特別に「ゴールドマイスター」の認定証授与。
夢くらぶ熊谷代表がおっしゃっていましたが、智恵子顕彰にかかわっているおかげで、そうでなければ知り合うはずもなかったいろいろな人と輪を広げられるし、一番喜んでいるのは天国の智恵子ではなかろうか、とのこと。そのとおりですね。
朗読大会、これが初の試みでしたが、2回、3回と続いて欲しいものです。審査員はやりたくありませんが(笑)。
【折々のことば・光太郎】
美を追はずしておのづから美を樹てる。已むを得ざるところに発足するものは強い。
散文「田村昌由詩集「蘭の国にて」序」より
昭和17年(1942) 光太郎60歳
昭和17年(1942) 光太郎60歳
田村昌由は大正2年(1913)北海道生まれの詩人です。
この手の光太郎の文章の特徴でもありますが、他者への評でありつつ、自らの求める詩の在り方をも色濃く示しています。
朗読大会、出場者の方々それぞれに、光太郎の「已むを得ざるところ」の心の叫びを表現して下さいました。泉下の光太郎も喜んでいることでしょう。