全日本合唱連盟さん主催の平成30年度(第71回)全日本合唱コンクール。今月末に中学校・高等学校部門(会場・長野県県民文化会館)、来月末には大学職場一般部門(同・札幌コンサートホールkitara)が開催されます。
このうち、中学校・高等学校部門の全出場校と演奏曲目が発表されました。楽譜販売を手がけるパナムジカさんのサイトです。
それによりますと、高校Bグループ(33人以上の大編成)に出場する九州地区代表・鹿児島高等学校音楽部さんが、光太郎作詞、西村朗氏作曲の「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」」から、「レモン哀歌」を自由曲として演奏なさいます。他の学校さんでも光太郎作詞の曲を取り上げて下さっているかと期待しておりましたが、残念ながら鹿児島高校さんだけでした。
鹿児島高校さんに関しては、コンクールの主催者である『朝日新聞』さんで記事になっています。
まず、鹿児島版、先月8日の記事から。
鹿児島)鹿児島・松陽が全国へ 九州合唱コン高校の部
宮崎市で7日にあった九州合唱コンクールの高校の部に県内からは3団体が出場。鹿児島、松陽が金賞に輝き、いずれも全国大会への出場権を得た。鹿児島女子は銀賞だった。 高村光太郎が作詩した「レモン哀歌」を自由曲に選んだ鹿児島は、大所帯ながら一体感のある歌声をホール内に響かせた。部長の高岡未侑さん(3年)は「今まで練習してきたことを出せて楽しかった。やりきりました」とほほえみながら話した。(以下略)さらに今月12日には、コンクール全体を特集する全国版の記事でも紹介されました。
歌う喜びのせて 第71回全日本合唱コンクール全国大会
第71回全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)は、中学校・高校部門が27、28日に長野市のホクト文化ホールであり、その様子が全国31カ所で同時中継されます。また大学職場一般部門は11月24、25日に札幌市の札幌コンサートホールKitaraで開かれます。今回、全国の切符をつかんだ約120団体の中から、4団体の意気込みを紹介します。■高校B 鹿児島高 互いに信頼「一唱懸鳴」
合言葉は「天歌統一」「一唱懸鳴」。一人一人の声を一つに合わせて響かせ、頂点を目指す。全国大会出場は実に23年ぶり。顧問の片倉淳教諭(54)は、その原動力について「生徒たちの自主性と信頼関係の深さ」と話す。
練習スケジュールなどは3年生が中心になり計画。自ら決めた日程やルールを守ることで、自主的に取り組む姿勢と責任感が育まれた。また、音程の悪さなど気づいた点を部員同士が自由に指摘し合う。互いへの信頼に支えられている。
自由曲は、詩人で彫刻家の高村光太郎の詩に曲がついた「レモン哀歌」。光太郎の智恵子への思いを新鮮なレモンのようにみずみずしく描く。部長の高岡未侑さん(3年)は、「歌いたいのはふたりの悲哀ではなく生の喜び。智恵子を失った悲しみの深さを、確かに生きた喜びで表現したい」と話す。(町田正聡)
西村朗氏作曲「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」」は、平成20年(2008)、大阪のいずみホールで開催された関西合唱団創立60周年記念・第73回定期演奏会で委嘱初演され、翌年には全音楽譜出版社さんから刊行されました。
「千鳥と遊ぶ智恵子」「山麓の二人」「レモン哀歌」の全3曲で、鹿児島高校さんが演奏する終曲「レモン哀歌」は7分にもなる大作です。楽譜冒頭に西村氏による「新鮮なレモンのようにみずみずしく、すっぱく清らかにそして哀切に、ノスタルジックに」という指示が書き込まれています。鹿児島高校さんには、その指示が実現できる演奏を期待します。
大会日程等は以下の通り。
2018年度 第71回全日本合唱コンクール全国大会 中学校・高等学校部門
期 日 : 2018年10月27日(土)・28日(日)会 場 : ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)大ホール 長野市若里1丁目1-3
時 間 : 27日(土) 9:45開演(予定) ◇高等学校部門 A・Bグループ
28日(日) 9:45開演(予定) ◇中学校部門 混声合唱の部・同声合唱の部
28日(日) 9:45開演(予定) ◇中学校部門 混声合唱の部・同声合唱の部
料 金 : 一般者用入場券 1日 3,600円
さらに今年から、全国各地のイオンシネマさんで、パブリックビューイングが行われるとのこと。会場は北海道、岩手、宮城、福島、群馬、埼玉、千葉、神奈川、東京、長野、愛知、三重、石川、京都、大阪、兵庫、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、熊本の23都道府県の計31カ所。中学校・高校部門とも演奏順に五つの時間帯に分け、各映画館の地元校が出場する時間帯を中心に上映するそうです。
ちなみに、曲目は光太郎智恵子に関わりありませんが、智恵子の故郷・福島二本松の市立二本松第一中学校合唱部さんが、中学校部門 同声合唱の部に出場なさいます。
このコンクールで、光太郎詩に曲を付けた合唱曲が演奏されるのは、平成27年(2015)以来です。今年に関しては、大学職場一般部門の演奏曲がまだ発表されていませんが、どこかの合唱団さんで取り上げて下さっていることを祈ります。また、来年以降も、ですね。
【折々のことば・光太郎】
埴輪はどれを見ても一律であるが、どれを見ても新鮮で深みのあるものである。単純だから深みがあるのである。武者さんの人間的な美も丁度これに似て、一律さが覗かせる新鮮と深淵の美しさなのである。
談話筆記「埴輪の美と武者小路氏」より 昭和30年(1955) 光太郎73歳
遠く明治末、共に雑誌『白樺』に依り、その後も断続的に彼の主宰する雑誌に寄稿を続けた武者小路実篤への讃辞です。日本古来の美を表象する埴輪との類似点を見いだしています。