昨日は都内に出ておりました。2回に分けてレポートいたします。
まずは小平市の平櫛田中彫刻美術館さんで開催中の「明治150年記念特別展 彫刻コトハジメ」を拝見。
全体が9つの章に別れており、それぞれのサブタイトルは以下の通りでした。
第1章 前近代の立体造形 / 第2章 美術教育 / 第3章 銅像 / 第4章 模刻と修復 / 第5章 高村光雲一門の活躍 / 第6章 西洋彫塑の研究 / 第7章 多様なる木彫世界 / 第8章 美術団体と展覧会 / 第9章 ロダンの受容
この章立ての題名を概観するだけでも、日本近代彫刻史の骨組みが分かりますね。
2点で一対の「大黒天・恵比寿像」、それから「西行法師像」。それぞれ非常に精緻な作りで、なるほど光雲の師匠だ、と思わせられる作品です。
「第3章 銅像」では、光雲の「楠木正成銅像頭部(木型)」。皇居前広場に建つ楠木正成像の木型の頭部で、像高約70センチの大きなものです。
他に、やはり楠公銅像に関わった岡崎雪声、光雲の弟子・米原雲海の作も。
そして「第5章 高村光雲一門の活躍」。
光雲自身の作は、「天鹿馴兎(てんろくくんと)」(明治28年=1895)、「大黒天・恵比寿香合」(明治初期?)。それぞれ初めて観るもので、興味深く拝見しました。「天鹿馴兎」は、鹿の角が欠けていましたが、毛並みの表現など後の光雲作の動物彫刻に通じます。
その他、「一門」ということで、山本瑞雲、林美雲、米原雲海、山崎朝雲、そしてもちろん平櫛田中。「競演」あるいは「饗宴」といった感がありました。
思いがけず「第9章 ロダンの受容」で、光太郎の朋友・碌山荻原守衛の「北条虎吉氏像」。毎年、信州安曇野碌山美術館さんにお邪魔し、拝見しているもので、旧友とばったり再会したような気になりました(笑)。
他にも逸品ぞろいで、まさに眼福。光太郎の作が無かったのが残念でしたが。出品リストを下に掲げます。
それから、図録2,000円也を購入して参りました。巻頭に掲げられた東京藝術大学教授・佐藤道信氏の「「彫刻」の出自と特性」、巻末の小杉放菴記念日光美術館学芸員・迫内祐司氏の「東京彫工会小史――明治期を中心に」の2本の論考、それぞれ非常に示唆に富む内容でした。
また、同館藤井明学芸員による各展示品の解説等、さらに4篇のコラム――「①博覧会」、「②彫刻の台座」、「③裸体表現に
対する規制」、「④彫刻家のくらし」も労作です。
対する規制」、「④彫刻家のくらし」も労作です。
今週末、NHKさんの「日曜美術館」内の「アートシーン」で取り上げられるとのことですので、ご覧下さい。
会期は11月25日(日)まで。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
宮澤さんの真実な心の馬鹿力は、遂に厚い中間の壁を貫通して一般衆生の心の中にあまねく浸潤するに至つたし、生れつきの詩人である宮澤さんの詩といふものの魅力は、遂に誰の口の端にもその詩が自然に出てくるやうな広大な法悦境を作り出した。わたくしは自分の生きてゐる眼の前で、このやうな奇跡に似た当然事の成就せらるのを見ることが出来たのを幸と思ふ。
散文「一言」より 昭和28年(1953) 光太郎71歳
「真実な心の馬鹿力」、言い得て妙、ですね。