思潮社さんから刊行されている雑誌『現代詩手帖』の最新号です。 

現代詩手帖 2018年6月号

2018年5月28日発売  思潮社  税込定価1280円

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【特集】『月に吠えらんねえ』の世界

◎作品  清家雪子 花なんかいらない
◎対談  萩原朔美+清家雪子 『月に吠えらんねえ』の秘密
◎座談会 
朔太郎、戦争詩、女性性、ときどきBL。
      安智史+栗原飛宇馬+猪俣浩司+浅見恵子
◎論考  藤井貞和、川口晴美、TOLTA、黒瀬珂瀾、岩川ありさ
◎人物紹介 詩歌句街から
 青木亮人、安住紀宏、伊藤詩織、井上法子、北爪満喜、栗原飛宇馬、佐藤弓生、
 佐伯百々子、田口麻奈、
田野倉康一、陶原葵、中地幸、中西恭子、マーサ・ナカムラ、
 安智史、柳澤真美子、山田夏樹


というわけで、講談社さん刊行の漫画雑誌『アフタヌーン』で、平成25年(2013)から連載されている、清家雪子さん作「月に吠えらんねえ」の特集が組まれています。

同作は単行本としては、現在、8巻まで刊行されており、「月吠」の愛称で、コアなファンを獲得しています。

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近代文学者たちの作品からのイメージで造型された登場人物達がおりなす、妖しく怪しい(笑)独特の世界です。主人公は「朔」。萩原朔太郎の作品からのインスパイアです。

光太郎智恵子からのそれ、「コタローくん」と「チエコさん」も登場し、第4巻所収の第17話「あどけない話」では、二人がメインのストーリーになっています。

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その他、ところどころに「コタローくん」と「チエコさん」が登場しますが、第6巻以降はほとんど出番が無く、残念に思っています。

真面目(笑)な文学界でもこの作品は無視できないと見え、各地の文学館さんで企画展が開かれたり、詩歌系の雑誌で特集が組まれたりしています。

で、『現代詩手帖』さん。作者の清家さんはじめ、朔太郎の令孫・萩原朔美氏、詩人の藤井貞和氏などが、作品の魅力を語り尽くしています。作品の主要テーマである「戦争詩とは何だったのか」という点についても、逃げることなく真っ向から向き合っています。

そうした中で、「コタローくん」と「チエコさん」の立ち位置についても、ところどころで言及されています。下記は特集の最後、登場人物紹介の項。

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それから、同じ号で「赤磐発・永瀬清子生家保存会の試み 映画『きよこのくら』雑記」という記事も載っていました。香川佳子さんという方のご執筆でした。永瀬清子は現在の岡山県赤磐市出身の女流詩人。昭和15年(1940)刊行の詩集『諸国の天女』の序文を光太郎に書いてもらうなどしています。

当方、6年前に足を運んだ赤磐市の生家保存の取り組みと、残念ながら解体されてしまった蔵を描いた映画「きよこのくら」についてのレポートで、興味深く拝読いたしました。

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『現代詩手帖』さん、大きめの新刊書003店なら普通に置いてあると思われます。ぜひお買い求めを。


【折々のことば・光太郎】

実に、王公の面前に立つても、なほかつ「爾曹蝮の裔よ」と叫んで怖れなかつたヨハネが人物の雄大と率直とは妙にロダンが勁健な作風に適してゐることから考へても、氏が三十年の蘊蓄を傾倒して仏国彫刻界の舞台へ漸く其の手腕をふるはんとした時の序幕としては実に痛快極まる図題であつた。

散文「アウグスト ロダン作
「バプテスマ」のヨハネ」より
明治38年(1905) 光太郎23歳

我が国に於いて、ロダンを詳細かつ肯定的に評した文章のうち、最も古いものの一つです。光太郎のその炯眼にはやはり舌を巻かざるを得ません。