昨年、歿後百年を記念して公開されたフランス映画「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」のDVDが今月発売となり、入手、拝見しました。 

ロダン カミーユと永遠のアトリエ

2018年5月2日 コムストック・グループ 定価3,800円+税

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創った。愛した。それが人生だった。天才彫刻家ロダン没後100年記念作!
 1880年パリ。彫刻家オーギュスト・ロダンは40歳にしてようやく国から注文を受ける。そのとき制作したのが、後に《接吻》や《考える人》と並び彼の代表作となる《地獄の門》である。その頃、内妻ローズと暮らしていたロダンは、弟子入りを願う若いカミーユ・クローデルと出会う。 才能溢れるカミーユに魅せられた彼は、すぐに彼女を自分の助手とし、そして愛人とした。その後10年に渡って、二人は情熱的に愛し合い、お互いを尊敬しつつも複雑な関係が続く。二人の関係が破局を迎えると、ロダンは創作活動にのめり込んでいく。感覚的欲望を呼び起こす彼の作品には賛否両論が巻き起こり…。
 
《考える人》《地獄の門》で名高い彫刻家オーギュスト・ロダンの半生を、没後100年を記念して忠実に描いた伝記映画。
 近代彫刻家の父”と称されるロダンの没後100年を記念し、パリ・ロダン美術館の全面協力で製作された本作は、ロダンの製作過程の細部まで再現し、人間関係や当時のエピソードからロダンの内面まで掘り下げ映画化された。国立西洋美術館(《地獄の門》を常設展示)で、没後100年を記念した特別イベントを開催。今後も、横浜美術館で「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」が開催され、その目玉として、ロダンの大理石彫刻 《接吻》 が日本初公開される。【2018年3月24日(土)~6月24日(日)】

ロダンと愛弟子カミーユ・クローデルの愛と葛藤の物語を官能的に描く。
 イザベラ・アジャーニ主演映画の大ヒットで人気の高い女流彫刻家カミーユ・クローデルの波乱に満ちた生き様がロダン視点で描かれる本作。カミーユが去った後ロダンは、愛をぶつけるようにモデルたちとの官能的な絡み合いを繰り広げていく。愛と苦悩の日々の末、近代彫刻の父が創り上げた最高傑作誕生の瞬間とは・・・ 監督は男女の激しい愛憎と心のかけひきの描写に定評のあるフランスの巨匠ジャック・ドワイヨン。主演は『ティエリー・トグルドーの憂鬱』でカンヌ国際映画祭、セザール賞の主演男優賞をW受賞したヨーロッパきっての演技派ヴァンサン・ランドン。


その若き弟子、カミーユ・クローデルとの愛憎を軸に、光太郎が終生敬愛した鬼才ロダンの彫刻にかける執念が描かれます。

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代表作「地獄の門」の制作中のシーンから始まります。

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門の一部、現在、横浜美術館さんで開催中の「ヌード NUDE  ―英国テート・コレクションより」で、大理石に写した像が目玉として展示されている「接吻」を前にする二人。今後の二人を暗示していることはいうまでもありません。

激しく求め合う二人ですが、ロダンは長年連れ添った内縁の妻、ローズ・ブーレと別れることも出来ません。

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彫刻の部分でも師の影から抜け出せず、カミーユの苦悩は深まり、やがて精神崩壊をきたします。ただ、以前も書きましたが、心を病んだ悲惨なカミーユの姿は、映画では描かれませんでした。象徴的に使われていたのが、カミーユの彫刻「分別盛り」の一部、「嘆願する女」。物語の終盤、ロダンが画廊でこれを見るシーンで、二人の関係の修復不可能な破綻、その後のカミーユの運命が暗示されました。

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他の登場人物として、モネやセザンヌ、光太郎が訳した『ロダンの言葉』の原典の一部を書いたオクターヴ・ミルボー。

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光太郎も岐阜まで会いに行った、日本人女優・花子

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ロダンの秘書も務めた詩人のリルケ。

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カミーユとの関係が破綻した後も、ある意味ロダンの肥やしとして必要だった若い女性たち。

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そして、人物以外にも、人物以上の存在感を放つ彫刻作品の数々。

「ヴィクトル・ユーゴー」。

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「カレーの市民」。

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「地獄の門」と、その一部の「考える人」。

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「ダナイード」。

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カミーユの「ワルツ」。

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そして「バルザック」。

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この「バルザック」において、ロダンはもはや「時代」を突き抜けてしまったという描き方になっていました。ラストシーンは、現代の箱根彫刻の森美術館さん。子供達が「バルザック」を使って「だるまさんが転んだ」で遊んでいます。時代を超え、国を超え、愛されるロダン作品、という演出でしょうか。

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ロダンは芸術家としては超一流、ところが人としては……という描写、しかし、そうでなければ生み出せなかった偉大な彫刻群、という意図も感じられます。光太郎に観せたかった一作です。

せひお買い求め下さい。


【折々のことば・光太郎】

ロダンの作を見れば、直ちに人間を見る事が出来る。生きた人間に接した時よりも更に人間的な人間の力を見る事が出来る。

散文「MÉDITATIONS SUR LE MAÎTRE」より
明治43年(1910) 光太郎28歳

光太郎がロダンを評した文章のうち、初期のものの一つです。

このコーナー、筑摩書房『高村光太郎全集』からほぼ掲載順に言葉を拾っていますが、今回はロダンがらみの内容ということで、若干順番を変えさせていただきました。