大正元年(1912)、光太郎智恵子が愛を確かめ合った千葉銚子でのイベント情報です。 

仏と鬼と銚子の風景 土屋金司 版画と明かり展

期   日 : 2018年4月27日(金)~30日(月)
会   場 : 飯沼山圓福寺(飯沼観音)本堂 千葉県銚子市馬場町1-1
時   間 : 10:00~16:00 (最終日15:00まで)
料   金 : 無料

仏と鬼と銚子の風景を版画で表現した旭市出身の版画家・土屋金司さんの作品展。

≪特別上演≫ 語り【犬吠の太郎】
 銚子浪漫ぷろじぇくとによる「犬吠の太郎」語り公演。土屋金司氏の版画と共にお楽しみください。当日は、境内にて和スイーツの販売(雨天中止)も実施いたします。
(開 催 日) 4月29日(日・祝)
(開催時間) 1回目12:00~ 2回目14:00~
(開催場所) 飯沼観音 本堂
(料金) 無料

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土屋氏は銚子に隣接する旭市のご出身だそうで、光太郎智恵子が宿泊した暁鶏館(現・ぎょうけい館)の館内にも作品が展示されています。記憶が定かではないのですが、そのうちの一枚が、光太郎詩「犬吠の太郎」(大正元年=1912)を刻んだ版画だったはずで、「≪特別上演≫ 語り【犬吠の太郎】」につながるのだと思われます。

太郎は暁鶏館で働いていた、当時で言うと下男。知的障害があったようで、現代では差別的表現になりますが「馬鹿の太郎」と呼ばれていました。しかし、皆から愛されるキャラクターだったようです。昭和42年(1967)公開の松竹映画「智恵子抄」(丹波哲郎さん、岩下志麻さん主演)では、故・石立鉄男さんが演じていました。

光太郎、太郎の(ややこしいですね(笑))印象が後々まで残っていたようで、昭和3年(1928)に書かれた詩「何をまだ指してゐるのだ」にも太郎が登場します。


    何をまだ指してゐるのだ001

 逆まく波のしぶきにうつそり濡れながら、
 あの岩の出鼻に裸で立つて、
 空の果まで何にも見えない沖の深みを見透すやうに、
 馬鹿の太郎は何をまだ指してゐるのだ。

 炎天溫気(うんき)の砂ほこりのまんなか、
 ゴオストツプの忙しい生産社会の人ごみにまぎれこみながら、
 建てかけた鉄骨の外には昼の月すら見えない空に手をあげて、
 馬鹿の太郎は何をまだ指してゐるのだ。 
 

会場の飯沼観音は、銚子の中心街です。昭和4年(1929)、光太郎を敬愛していた日中ハーフの詩人・黄瀛がここを訪れ、境内の火の見櫓から見た風景を「銚子ニテ」という詩に謳っています。

ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

一番危険なのは、アンデパンダン展がアンパンデタラメ展となることである。
散文「アンデパンダンについて」より 昭和25年(1950) 光太郎68歳

光太郎には珍しく、オヤジギャグが炸裂しています(笑)。

「アンデパンダン」は仏語の「Indépendants」。本来、「独立した人々」の意ですが、サロン等の公設展覧会に対する無審査、無賞の展覧会を指すようになりました。この年4月、盛岡市の松屋画廊で「第一回岩手アンデパンダン展」が開催され、深沢省三・紅子夫妻、舟越保武らも出品しました。

無審査であるのをいいことに、デタラメな作品がまかり通るようでは本末転倒、という警句です。