企画展情報です。

谷川俊太郎展 TANIKAWA Shuntaro

期 日  : 2018年1月13日(火) ~ 3月25日(日)
会 場  : 東京オペラシティ アートギャラリー 東京都新宿区西新宿 3-20-2
時 間  : 11:00~19:00(金・土は20:00まで/入館は閉館30分前まで)
料 金  : 一般 1,200円 大学・高校生 800円 
休館日  : 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)

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谷川俊太郎は1952年に詩集『二十億光年の孤独』で鮮烈なデビューを果たしました。感傷や情念とは距離をおく軽やかな作風は、戦後の詩壇に新風をもたらします。
「鉄腕アトム」の主題歌、『マザー・グースのうた』や、『ピーナッツ』の翻訳、市川崑監督による映画「東京オリンピック」の脚本、武満徹ら日本を代表する音楽家との協働などでも知られるように、幅広い仕事によって詩と言葉の可能性を拡げてきました。
86歳を迎えた現在も、わかりやすく、読み手一人一人の心に届くみずみずしい言葉によって、子どもからお年寄りまで、多くの人々を魅了し続けています。
一方仕事の幅広さ・膨大さゆえに、この国民的詩人の「人」と「作品」の全体像をとらえるのは容易ではありません。谷川俊太郎のエッセンスを探るべく、本展では詩人の現在に焦点をあてることにしました。実生活の喜びやいたみから詩を紡ぎ出し、社会とつながろうとしてきた谷川。その暮らしの周辺をさまざまに紹介します。影響を受けた「もの」や音楽、家族写真、大切な人たちとの書簡、コレクション、暮らしの断片や、知られざる仕事を織り交ぜ、谷川俊太郎の詩が生まれる瞬間にふれる試みです。本展のために書き下ろされる詩や、音楽家・小山田圭吾(コーネリアス)とインターフェイスデザイナー中村勇吾(tha ltd.)とのコラボレーションも発表します。

Gallery1:音と映像による新たな詩の体験
 展覧会の始まりは小山田圭吾(コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾(tha ltd.)の映像による、谷川俊太郎の詩の空間です。名作絵本『ことばあそびうた』で知られる詩「かっぱ」など、谷川のことばに内在するリズムと小山田の音楽との出合いにご期待ください。谷川の声をまじえた音と映像のコラージュは、谷川の詩を浴びるような、新たな詩の体験を生むでしょう。

Gallery2:「自己紹介」
 日本で一番その名を知られているであろう詩人・谷川俊太郎。それぞれの世代が思い浮かべる谷川の仕事や詩人像があることでしょう。本スペースでは、20行からなる谷川の詩「自己紹介」に沿って、20のテーマごとに谷川にまつわるものごとを展示、私たちが知っているはずの谷川俊太郎像を見つめ直します。会場には20行の詩を1行ごとにしるした柱があらわれ、谷川が影響を受けた音楽や「もの」、家族写真、大切な人たちとの書簡、ラジオのコレクション、暮らしの断片、知られざる仕事など、選りすぐりの詩作品とともに展示されます。谷川の詩で谷川を紹介するユニークな展示からは、谷川の日々の暮らしと詩の深い関わりが浮かび上がってくることでしょう。また、本展のための書き下ろしの詩も発表します。

コリドール:「3.3の質問」
 「3.3の質問」は、谷川が1986年に出版した『33の質問』(ノーマン・メイラーの「69の問答」にちなんで33の質問を作り、7人の知人に問いかけをしながら語り合う)がもとになっています。本プロジェクトではその現代版として、当初の33の質問から谷川が3問を選び、新たに「0.3の質問」を加えて「3.3の質問」を作りました。これらを各界で活躍する人々に投げかけ、その回答を作品として展示します。シンプルな問いに、回答者のどんな世界観が見えてくるのでしょうか。「問うこと」、「答えること」、「そこに立ち会うこと」に、詩的な体験があふれています。 

関連企画

開催記念対談
 ① 1月27日[土] 都築響一(編集者) × 谷川俊太郎
 ② 2月10日[土] 小山田圭吾(コーネリアス)(音楽家) × 谷川俊太郎
 時間:各回14:00 ─ (13:45開場).
 会場:東京オペラシティビル7F会議室.
 定員:各回160名(全席自由).
 参加費:無料(展覧会の入場は別料金)要整理券

スペシャルライブ 谷川俊太郎&DiVa 「よしなしうた」
 谷川俊太郎による詩の朗読と、高瀬 "makoring" 麻里子(Vo)、谷川賢作(Pf)、大坪寛彦(B)によって1995年に結成された、現代詩を歌うバンドDiVaのスペシャルライブ。
 日時:2018年3月10日[土]14:00開演(13:30開場)
 会場:東京オペラシティ リサイタルホール(東京オペラシティビルB1F)
 出演:谷川俊太郎(朗読)DiVa[高瀬“makoring”麻理子(ヴォーカル)、
    谷川賢作(ピアノ)、大坪寛彦(ベー
ス)]
 演奏予定曲:(谷川俊太郎・詩 谷川賢作・曲)
  
けいとのたま ・すいぞくかん・たんぽぽのはなのさくたびに・せなか ・ふしぎ他
 チケット料金:3,500円(全席自由・税込)
 チケット取扱:東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999

先月末の『朝日新聞』さんに、大きく紹介する記事が出、「谷川さんあてに届いた堀口大学や小林秀雄らからのはがきや、家族との写真、あるいは愛用のTシャツも展示した。」とあり、「」に光太郎も含まれるのでは、と、ピンときました。平成28年(2016)、静岡三島の大岡信ことば館さん(昨年で閉館)を会場に開催された「谷川俊太郎展 ・本当の事を云おうか・」でも同様の展示があり、光太郎から谷川氏へのハガキが出品されたためです。

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そこで照会してみたところ、ビンゴでした。昭和29年(1954)5月20日、光太郎最晩年のもので、氏の詩集『62のソネット』の受贈礼状が出ているそうです。以前に谷川氏に問い合わせたのですが、光太郎からの来翰のご所蔵はこれ一通のみとのことでした。

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極論が許されるなら、近代と現代、それそれを代表する詩壇の巨匠二人のつながりが端的に示された一品です。


ぜひ足をお運びの上、ご覧ください。


【折々のことば・光太郎】

地紋を彫つて味が出ないやうであれば、大きな人物などを彫つても其の程度はおよそ分る。彫刻といふ一つの世界をその人がまだ内に持つてゐない事になるのである。

散文「木彫地紋の意義」より 昭和15年(1940) 光太郎58歳

「地紋」とは、伝統的な木彫を習得するための、初歩の課題。五寸角や三寸角の檜の板へ、直線や曲線で彫られたさまざまな紋様です。当然、幼少期の光太郎もこの習練から彫刻の道に入りました。

しかし、長じるに従って、こんな習練に何の意味がある? と疑問に感じたとのこと。ところが、そろそろ老年にさしかかるこの時期に、改めてこの基礎的な習練法から、彫刻の奥深さを感得するようになったというのです。

すなわち、板に一本の溝を彫るにしても、幅や深さ、谷の断面に出来るV字の対称性などへの配慮と、考えるべきことがいくらでもあるというのです。それから木目との闘い。順目に彫る場合と逆目に彫る場合では、当然、彫刻刀の使い方が異なってきて、それをいい加減に処理すれば、細かいところがつぶれたり欠けたり、見るからにぼやけたものになってしまうとのこと。さらに全体のバランス。溝の深さが深すぎると鋭すぎる感じになり、浅すぎると無味なものになるし、板の大きさによってもほんのわずかな調整が必要だそうです。

こうした感覚――要するに光太郎が重視した、比例均衡の感覚―――が、地紋の反復で身につくし、「音楽家が音階の練習を絶えずするやうに」取り組むことが重要としています。

トップアスリートが基礎トレーニングに時間を割き、力士が四股やテッポウ、すり足を重要視するのと似た感覚かも知れません。

この文章の掲載誌『改造』には、光太郎が最近彫ったという地紋を版画にした図版が掲載されています。

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