過日、日比谷で開催された「第11回 明星研究会 <シンポジウム> 口語自由詩の衝撃と「明星」~晶子・杢太郎・白秋・朔太郎・光太郎」の際に、内容見本を戴いて参りました。
冬柏【復刻版】全26巻・別冊1
『明星』終刊後、晩年の与謝野寛・晶子が最も力を注いだのが雑誌『冬柏(とうはく)』であった。寛が昭和一〇(一九三五)年、晶子が昭和一七(一九四二)年に没して後、平野万里、田中悌六、近江満子らが二人の遺志を引き継ぎ、昭和二七(一九五二)年まで刊行された。収録内容は、短歌を中心に現代詩・随筆・小論・漢詩・絵画・写真等幅広い。また「消息」欄は寛・晶子をはじめ新詩社の同人の活動や動向が詳細に記されていて、一〇頁以上にわたる号もあり、貴重である。
『明星』同様、寛・晶子研究に必須の、そして短歌史また広く文学や芸術研究に欠かせない重要資料である。
◇推薦=馬場あき子・太田 登・澤 正宏・今川英子
◆体裁=A5判・上製・総約15,300頁 ◆別冊=総目次・索引(分売価格2,000円+税)
◆揃定価=470,000円+税
◎配本概要
・第1回配本(第1〜3巻・別冊1) 2017年10月 揃定価56,000円+税
・第2回配本(第4〜6巻) 2018年1月刊行予定 揃定価54,000円+税
・第3回配本(第7〜10巻) 2018年6月刊行予定 揃定価72,000円+税
・第4回配本(第11〜14巻) 2018年11月刊行予定 揃定価72,000円+税
・第5回配本(第15〜18巻) 2019年4月刊行予定 揃定価72,000円+税
・第6回配本(第19〜22巻) 2019年8月刊行予定 揃定価72,000円+税
・第7回配本(第23〜26巻) 2020年1月刊行予定 揃定価72,000円+税






上記説明にあるとおり、『冬柏』は、第二次『明星』(大正10年=1921~昭和2年=1927)の後継誌として、光太郎を文学の道にいざなった与謝野夫妻が心血を注いだ雑誌です。
内容見本には「主要執筆者一覧」という項目もあり、光太郎の名も。

光太郎の同誌への寄稿は、確認できている限り、以下の通りです。
第3巻第3号 昭7(1929)2月 「旧友石井柏亭氏」『高村光太郎全集』 第7巻
第6巻第4号 昭10(1935)4 月 「与謝野先生を憶ふ」 〃 第8巻
第10巻第10号 昭14(1939)10月 「所感-与謝野晶子『新新訳源氏物語』-」〃 第19巻
第13巻第7号 昭17(1942)/6月 「与謝野夫人晶子先生を弔ふ」 〃 第3巻
第13巻第9号 昭17(1942)/8月 「与謝野晶子歌集「白桜集」序」 〃 第8巻
このうち、 「与謝野夫人晶子先生を弔ふ」のみ詩で、他は散文。「与謝野先生を憶ふ」は『東京朝日新聞』からの転載です。
これ以外にも、もしかすると『高村光太郎全集』に漏れている光太郎作品が無いとは言い切れません。また、光太郎以外の書いたもので、光太郎に言及されているものもあるかと思われます。その点、第1回配本に「別冊(総目次・索引)」があるので、調べやすいように思われます。
なかなか個人で購入するようなものではありませんが、公立図書館さん等できっちり揃えていただきたいものです。
また、内容見本には、「『冬柏』時代の与謝野寛・晶子と旅・短歌」という年表が載っています。これだけでもかなりの労作だな、と思いました。


それによれば、与謝野夫妻、ほぼ毎月のように旅に出て、その旅先で詠んだ歌を『冬柏』に載せています。当方の生活圏も含まれ、それは存じませんでした。明治末に当地を訪れたことは存じていましたが。
「ご当地ソング」ならぬ「ご当地短歌」ということで、観光宣伝にいかがでしょうか。
【折々のことば・光太郎】
自己の内に此の人類の絶えない泉の意味を明らかに強く感得した芸術家の芸術だからこそよいのである。そして此(ここ)が芸術の価値の根本義である。
散文「言ひたい事を言ふ」より 大正3年(1914) 光太郎32歳
こと芸術に関しては、ポジティブシンキングの光太郎の立ち位置がよく表されています。