光太郎の父・高村光雲の作品が出品される企画展で、今月初めまで愛知の豊橋市美術博物館さんで開催されていたものが、奈良に巡回です。
ニッポンの写実 そっくりの魔力
期 日 : 2017年11月23日(木・祝)~2018年1月14日(日)会 場 : 奈良県立美術館 奈良県奈良市登大路町10-6
時 間 : 午前9時~午後5時
料 金 : 一般・大学生 400(300)円 高大生 250(200)円 小中生 150(100)円
( )内20人以上の団体料金
( )内20人以上の団体料金
休館日 : 月曜日(祝日の場合はその翌平日) 12月27日(水)~1月1日(月・祝)
何かにそっくりなものを眼にしたとき、私たちは「すごい!これ、本物?」と、素朴な驚きを覚えます。
眼に見えるものをあるがままに再現することへの欲望は、私たちの心に深く根ざした、古くて新しい感情なのではないでしょうか。「現実の事象をそのまま写し取ること」-日本の近代美術家たちは、近世までの「写実」の伝統を土壌としながら、西洋美術の流入を大きな刺激として、多様な「写実」へのアプローチを試みてきました。そして現代では近年、精緻な写実表現を目指す動向とともに、彫刻や工芸においても、日本の伝統的な技術の上に、克明な再現を軸とする表現が注目を集めています。
眼に見えるものをあるがままに再現することへの欲望は、私たちの心に深く根ざした、古くて新しい感情なのではないでしょうか。「現実の事象をそのまま写し取ること」-日本の近代美術家たちは、近世までの「写実」の伝統を土壌としながら、西洋美術の流入を大きな刺激として、多様な「写実」へのアプローチを試みてきました。そして現代では近年、精緻な写実表現を目指す動向とともに、彫刻や工芸においても、日本の伝統的な技術の上に、克明な再現を軸とする表現が注目を集めています。
その一方でまた、写実を包括した超絶技巧と呼ばれる表現形態では、絵画にとどまらず、日本の伝統技術を追究した木造彫刻・金属工芸をはじめ、人体、動植物、日用品を克明に再現した作品も際立って注目されています。また、映像の世界においても、これまでの「記録」としての画像を凌ぐ超密度な画素と装置、アプリケーションも広く一般に流通し、わたしたちの「写実」に対する認識を変化させつつあります。
この展覧会では、あらゆる対象があらゆる形態で写実的に表現されうる現在の状況、それによりかわろうとしている今日の「リアル」に対する感性のありようを、約80点の写実絵画、超絶技巧による立体作品、高精細な映像作品を通じて考える機会としたいと思います。
関連行事
(1) 記念対談「“そっくり”で読み解く写実の魅力」
12月3日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:丸地加奈子(豊橋市美術博物館 主任学芸員)
定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(2) 講演会「新写実憧景」
12月10日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:南城守(前奈良県立美術館学芸課長)
定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(3) 美術講座「そっくりの魔力」
1月7日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:深谷聡(当館主任学芸員) 定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(4) 学芸員によるギャラリー・トーク 12月16日(土曜日)、12月23日(土曜日・祝日)、
1月13日(土曜日) 14時から15時頃まで 展示室 要観覧券
(5) ミュージアムコンサート レクチャールームなど
(6) ワークショップ「そっくり工作に挑戦!」1階無料休憩室 会期中随時・参加費無料
12月3日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:丸地加奈子(豊橋市美術博物館 主任学芸員)
定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(2) 講演会「新写実憧景」
12月10日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:南城守(前奈良県立美術館学芸課長)
定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(3) 美術講座「そっくりの魔力」
1月7日(日曜日)午後2時から午後3時30分 レクチャールーム
講師:深谷聡(当館主任学芸員) 定員80名(12時30分開場・先着順) 要観覧券
(4) 学芸員によるギャラリー・トーク 12月16日(土曜日)、12月23日(土曜日・祝日)、
1月13日(土曜日) 14時から15時頃まで 展示室 要観覧券
(5) ミュージアムコンサート レクチャールームなど
(6) ワークショップ「そっくり工作に挑戦!」1階無料休憩室 会期中随時・参加費無料
ありがたいことに公式サイトに出品リストが出ており、光雲作品は豊橋巡回と同じ3点とわかりました。
「天鹿馴兎(てんろくくんと)」(明治28年=1895・個人蔵)、「砥草刈(とくさがり)」(大正3年=1914・大阪市立美術館蔵)、「西行法師」(制作年不明・清水三年坂美術館蔵)の3点です。
ぜひ足をお運び下さい。
【折々のことば・光太郎】
紅顔、白髪、 「記者殿」は超積極の世界に生きて 時代をつくり、時代をこえ、 刻々無限未来の暗黒を破る。
詩「記者図」より 昭和29年(1954) 光太郎72歳
この年1月の『新聞協会報』第1000号の記念号に載った詩で、「紅顔」の新米から「白髪」のベテランまで、新聞記者さんたちへのエールです。
「事件にぶつけるからだからは/火花となって記事が飛ぶ。/どこへでも入りこみ/どんな壁の奥でも見ぬく。」
「対象に上下なく、/冒険は日常茶飯。/紙と鉛筆とカメラとテープと、/あとはアキレス筋の羽ばたく翼。」といった部分もあります。
光太郎同様、戦時中は大政翼賛会の提灯持ちと化してしまった新聞社も、占領下のGHQによる新たな束縛の時期を経て、この頃には正常化していました。
ところが現代はどうでしょう。少しでも政権批判的な事を書けば、やれ「偏向報道」だの「工作員」だのと騒ぎ立てる輩にあふれ、国会議員まで「○○新聞死ね」と発言して憚らない現実。検証や批判―「暗黒を破る」使命を放棄し、与党の機関誌かと見まごう御用新聞もまかり通っています。
気骨ある「記者殿」の伝統の火を消さないで欲しいものですね。