昨日は、テルミン奏者大西ようこさんと、ギターの三谷郁夫さんによるユニット「ぷらイム」さん、ユニット結成10周年記念コンサート「テルミンと語りで紡ぐ愛の物語り 智恵子抄」を拝聴して参りました。
会場は横浜美術館さん。平成26年(2014)に開催された「ヨコハマトリエンナーレ2014」以来でした。
来週がハロウィンということで、前庭ではそれにからめた子供さん向けのイベントが行われていました。ハロウィンモードのアンパンマンに遭遇(笑)。
コンサートが開催される美術館内のレクチャーホールへ。
開演は午後3時。その前に、受付で渡されたパンフ、チラシ類に混じって、「ぷらイム10周年智恵子抄クイズ」なる紙が。
ロビーに展示されている昭和16年(1941)刊行の『智恵子抄』初版第一刷と、同18年の第十一刷り、それぞれの重さをあててくださいとのこと。最も近い解答の方に、特製マグカッププレゼントだそうで、面白いことを考えるものです(笑)。
のちほど発表された正解は、第一刷が144グラム、第十一刷が257グラムだそうでした。戦時中ということもあり、手に入る用紙の種類がバラバラだったため、このような現象が起きています。特に第一刷は奥付によれば「表紙ハ特漉西ノ内 見返ハ手漉鳥ノ子紙 本文ハ奉書紙生漉」。要するに高級な和紙なのですが、逆に問屋に高級な紙しか残っていなかったというのです。
画像は当方手持ちの第一刷りの奥付です。この本、一昨年、NHKさんで放映された「歴史秘話ヒストリア第207回 ふたりの時よ 永遠に 愛の詩集「智恵子抄」」の際にお貸しし、テレビ出演を果たしました(笑)。
珍しい、という「愛読者カード」も付いています。これの有る無しで古書価としてはかなり変わるそうで。
閑話休題。会場もほぼ満席となり、いよいよ開演。
2部構成で、当初、第一部が、女優の水沢有美さんを交えての『智恵子抄』、第二部がぷらイムのお二人のみの演奏という予定でしたが、逆転し、先にぷらイムのお二人。
こちらでも、曲間に「智恵子抄」がらみのMCが入りました(そちらの方が演奏時間より長かったような(笑))。肝心の演奏も、相変わらずすばらしいものでしたが。
上記は、大西さんの「研究」成果。x軸が光太郎の詩が発表された年、y軸が試作品の発表数。『道程』期の明治末と、戦時中に発表数が多くなり、しかし、『智恵子抄』所収の作品は戦時にはない、という話です。
休憩後、第二部。水沢さんを交えての『智恵子抄』。予想していたよりも「攻め」の演出でした。水沢さんは一ヶ所にとどまらず、ほぼ常に動きながらの語り。演劇に近い動きでした。
三谷さんとの掛け合いもあり、光太郎作品の引用以外のセリフ的な部分もあり、歌あり、ダンス的な動きもあり。語り口も、絶叫や、心を病んだ智恵子の独白などもあって、バリエーションが実に豊かでした。お客さんも食い入るように引き込まれていました。
終演後のロビー。
例によって、水沢さんには連翹忌の宣伝をしておきました。
今後とも、光太郎智恵子の世界を広めるのに、一役買っていただきたいものです。
【折々のことば・光太郎】
蝮(クチバミ)がとぐろをまいておれを見る。 それはあんまりきれいな敵意で けだかく、さとく、思慮ぶかく、 どうもおれには手出しができない。
詩「クチバミ」より 昭和25年(1950) 光太郎68歳
「クチバミ」はマムシの古名です。蟄居生活を送っていた花巻郊外太田村の山小屋周辺には、うようよ生息していたということで、珍しいものではなかったようですが、ここにはある種の「畏怖」の感情が見て取れます。マタギ猟師の人々が、山の神への敬虔な気持ちを忘れないような。
千葉と言っても田舎で、里山を背負った当方自宅兼事務所近辺でも、よくマムシやヤマカガシ、ジムグリ、アオダイショウを見かけます。一昨日も愛犬の散歩中にジムグリに遭遇しました。当方は畏怖より恐怖が先に立ちますが(笑)。