一昨日、智恵子の故郷・福島二本松のラポートあだちさんで開催された、智恵子を偲ぶ「第23回レモン忌」に参加して参りましたが、その前後、先月から二本松市内各所で開催中の「重陽の芸術祭2017」関係で、他にも廻りました。
「上り線」では、和紙伝承館さんで、地元の方々を中心とする絵画作品の展示。
「下り線」では、現代アート作家のワタリドリ計画さんによるインスタレーション「絵葉書フラッグ」。
道の駅安達「智恵子の里」のシンボル的な「万燈桜」のかたわらに、畳一畳ほどの「フラッグ」が10枚弱。
それぞれ両面印刷で、絵葉書のスタイルになっています。写真面は、智恵子生家など二本松の風景です。
中には明治期の手彩色ふうのものも。
それぞれの裏面は、ちゃんと絵葉書の書式。面白い試みだと思いました。
ちなみに「下り線」の建物内には、以前から光太郎智恵子コーナーもあります。
後ろの窓からは、安達太良山と「ほんとの空」。
こちらをあとに、昨日書きましたレモン忌の方に参加させていただきました。
そして、レモン忌終了後、智恵子の生家・智恵子記念館へ。レモン忌参加者は無料で入れたので、ありがたい限りでした。他の参加者の方々も、何人かご一緒させていただきました。
FCT福島中央テレビさんが取材にいらしていました。
レモン忌流れの一行は、レモン忌主催の「智恵子の里レモン会」会員、郡山在住の八代勝也さんのご案内で、生家内部に。八代さん、平成のはじめに生家の補修工事が為された際の工事責任者でした。それだけに、これまで見落としていたさまざまを教えていただき、興味深く見ることが出来ました。
たとえば一階の部屋の天井にくっついている、謎の箱。真上の部屋が智恵子の居室で、そこに据えられた掘り炬燵(ごたつ)だそうです。
その他、「ここから先は増築部分で、そのために通常とは違ってこうなっている」とか、「この柱は元々の部材、このかまどの辺りは残念ながら残っていなかったので、新しく作った」とか。ありがたや。
「重陽の芸術祭2017」初日にも拝見しましたが、現代アート作家の清川あさみさんによるインスタレーション展示も継続中。下の画像は、新潮文庫版智恵子抄、「あどけない話」のページに施された刺繍です。「ほんとの空」のイメージなのでしょう。
智恵子生家では、5日(木)の智恵子命日「レモンの日」に合わせ、女優の一色采子さんらによる「智恵子抄」朗読とダンスのパフォーマンス「智恵子・レモン忌 あいのうた」が行われます。また、来月12日からは、生家裏の智恵子記念館で、普段は複製が展示されている紙絵の実物展示が始まります。さらに9日(月・祝)には、二本松市コンサートホールにて「震災復興応援 智恵子抄とともに~野村朗作品リサイタル」。
ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
智恵子はほのぼのと美しく清浄で しかもかぎりなき惑溺にみちてゐた。 あの山の水のやうに透明な女体を燃やして 私にもたれながら崩れる砂をふんで歩いた。
詩「噴霧的な夢」より 昭和23年(1948) 光太郎66歳
この智恵子は、光太郎の夢に現れた智恵子です。
アイロニカルな見方をすれば、光太郎のこうした「女神」的な讃仰が智恵子にとっては重荷となり、心の病につながったともいえますし、その歿後も偶像崇拝的に智恵子の姿を追い求める光太郎に、「いい年こいて……」という批判を投げかけるのは容易でしょう。
しかし、数え66歳の老人が、夢に亡き妻を見て心洗われているというその一事を、当方は笑い飛ばすことは出来ません。