詩集や詩歌評論などの出版に力を入れられている土曜美術出版さん刊行の月刊誌『詩と思想』。その今月号に拙稿が載っております。

以前に「智恵子抄」を取り上げて下さった雑誌で、存じていましたのでお受けしました(生意気なようですが、思想的に光太郎の精神と相容れなかったり、社としての矜恃が感じられなかったりするところからの依頼はお断りすることにしています)。

連翹忌の歴史や現状などについて書いてくれという依頼でしたので、そのような内容を。ところが文治堂書店さんのPR誌『トンボ』の方でも同一内容の指定があり、同じような内容になってしまいました。ただ、『誌と思想』さんの方が字数を多く指定されましたので、詳しく書いています。

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画像もほしいというので、今年をはじめ、最近の連翹忌の様子、それから昭和31年(1956)の光太郎葬儀の写真を提供しました。

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今年の連翹忌で朗読と演奏のコラボをお願いした、ヴォイスパフォーマー・荒井真澄さんと、テルミン奏者大西ようこさん、それからお父様が光太郎と交流がおありで、連翹忌ご常連の渡辺えりさんなどなど。

連翹忌のよい宣伝になったかなと思います。

ところが、1箇所、とんでもない誤りをそのままにしてしまいました。昭和13年(1938)の智恵子の没年を14年としてしまったのです。認めたくないのですが、歳のせいか、最近、パソコンのミスタッチが多くなっています。たいがいはすぐ画面上でおかしなことになっていると気づいて訂正するのですが、ここはそのまま流してしまったようです。ゲラが送られてきて、校正もしたにもかかわらず気づきませんでした。

「3」と「4」もそうですが(テンキーではなくキーボード左上)、多いのはやはり隣のキーに触れてしまうこと。たまに「こうたろう」と叩いたつもりが「O」と「P」を間違えて「kぷたろう」などとなります(笑)。それから変換ミスですね。多分このブログでもやらかしていると思います。もっと気をつけねば、と思いました。

大きな書店さんでは雑誌コーナーに並んでいると思われますし、同社サイトから、またはAmazonさんなどでも注文可能です。ぜひお買い求め下さい。定価1,300円+税です。


【折々のことば・光太郎】

狂瀾怒涛の世界の叫も この一瞬を犯しがたい。 あはれな一個の生命を正視する時、 世界はただこれを遠巻にする。

詩「梅酒」より 昭和15年(1940) 光太郎58歳

前年に亡くなった智恵子が生前に作っておいた梅酒を台所で見つけ、智恵子を偲びながらそれを味わう、という詩です。

日中戦争は膠着状態、泥沼化。欧州では既に大戦の火蓋が切られています。それが「狂瀾怒涛の世界の叫」。しかし、それも亡き妻を偲ぶ「この一瞬」を「遠巻にする」というのです。

すでに翼賛詩をたくさん書き始めている光太郎ですが、智恵子に思いを馳せる時のみ、強引な言い方ですが人間性を回復できていたように思われます。それも翌年までのことですが……。