アートオークションでの光太郎の父・高村光雲作品出品情報です。
第546回毎日オークション 絵画・版画・彫刻
日 程 : 2017/08/04(金) 14:00~ 2017/08/05(土) 12:00~会 場 : 東京 毎日オークションハウス
光雲作品は木彫「翁舞」。光雲が好んで取り上げた題材の一つです。平成14年(2002)に三重県立美術館、茨城県立近代美術館、千葉市立美術館と巡回した「高村光雲とその時代展」にも木彫「翁舞」が2点、出品されました。どちらも今回のものとは別の作品で、共に昭和8年(1933)、光雲晩年の作です。
おそらく今回のものも、そう離れていない時期の作ではなかろうかと推定できます。
予想落札価格が80万円から130万円。もう少し行きそうな気もしますが、妥当な線といえばその通りでしょう。というのは、背部に「光雲刀」の刻銘という点です。
光雲は、全体をほぼ一人で仕上げた場合には、「髙邨光雲」と銘を入れることが多かったそうで、絶対とは言えませんが、そうなっていないものは工房作――基本的には弟子が作り、仕上げを光雲が行ったもの――と考えられます。ガレのガラス器などもそうですね。
ただ、だからといって贋作とか、質の良くないものということにはなりません。その辺で、80万から130万というのは、妥当な金額だというわけです。実際、この手のオークションで「髙邨光雲」銘が出ると、約10倍の予想落札価格がつきます。
懐に余裕のある方、ぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
おもむろに迫る未曾有の時 むしろあの冬空の透徹の美に身を洗はう。 清らかに起たう。
詩「未曾有の時」より 昭和12年(1937) 光太郎55歳
やはり日中戦争を背景にしています。「未曾有」は「みぞゆう」ではありません(笑)。念のため。
のちにご紹介しますが、「○○の時」という詩が、この後も2篇作られます。太平洋戦争開戦直前には「必死の時」(発表は開戦直後)、終戦直前の花巻空襲を題材にした「非常の時」。大正年間には、ベルギーの詩人、ウォルト・ホイットマンが妻のマルト・マッサンとの愛の日々を謳った「明るい時」「午後の時」を翻訳していた光太郎だったのですが……。