5月も下旬となって参りましたので、そろそろ来月のイベントのご紹介を。
現代歌人協会公開講座「高村光太郎の短歌」
期 日 : 平成29年6月21日(水)司 会 : 渡 英子
メインパネリスト : 松平盟子(歌人)・染野太朗(歌人)
問い合わせ : 現代歌人協会 TEL 03-3942-1287(平日10~16時) FAX 03-3942-1289
今年度は、小説家、詩人、画家など、いわゆる専門歌人以外の著名人の短歌について話し合ってみたいと思います。メインパネリストによるミニ講演の後、ディスカッションを行います。お誘い合わせの上、ふるってのご参加をお待ちしています。
というわけで、現代歌人協会さん主催の公開講座です。全6回で、「著名人の短歌について」という総題のもと、先月から始まっており、光太郎は第3回ということになっています。ちなみに光太郎以外は、北杜夫、芥川龍之介、中島敦、夢野久作。10月の最終回は総集編ということで、それ以外に樋口一葉なども取り上げられるようです。
光太郎、本格的な文学活動の出発点は、与謝野夫妻の新詩社で取り組んだ短歌でした。ただ、師の鉄幹にしてみればあまり真面目な弟子ではなかったようですが、かえってそういう部分も含めてかわいがられていたように思われます。
後列左から二人目の長身の青年が光太郎、前列右端が与謝野鉄幹。明治37年(1904)、光太郎数え22歳での撮影です。
年2回、当会で刊行している冊子『光太郎資料』の中に、筑摩書房の『高村光太郎全集』完結(平成10年=1998)後に見つかった光太郎の文筆作品を、ジャンルや内容ごとにまとめて紹介する「光太郎遺珠から」という項を設けています。今秋発行予定の『光太郎資料』第48集、来春発行予定の同第50集では、短歌についてご紹介するつもりで、執筆を始めています。『高村光太郎全集』完結後も、続々と短歌の実作が見つかっていますし、短歌について述べたアンケートや書簡、散文などもいろいろと見つけました。そのあたりをご紹介します(ご入用の方はご用命下さい)。
また、昨年は1年間かけて、このブログで【折々の歌と句・光太郎】というわけで、「これは」と思う光太郎の短歌や俳句などを1首(句)ずつご紹介いたしました。
そんなわけで、最近、光太郎短歌にはまっておりますので、この講座も都合をつけて拝聴に伺おうと考えております。
皆様もぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
見果てぬ時のかなたよりわしを呼ぶは何者ぞや。 旅にやんで夢は枯野をかけ廻る。 わしはもう一歩出よう。
詩「旅にやんで」より 昭和3年(1928) 光太郎46歳
短歌ならぬ俳句の祖・松尾芭蕉をモチーフとした――というか、芭蕉の視点で謳った――詩です。
「旅にやんで夢は枯野をかけ廻る」は、芭蕉の「辞世の句」として有名ですね。ただ、芭蕉自身が辞世の句として詠んだかどうかは不明です。
大方の解釈では、「旅の途中で病にかかり、身体はもう動かないが、自分の夢(精神)だけは冬枯れた野原をかけめぐっている」といったところでしょう。しかし、素人考えですが、「旅にやんで」は「「旅」というやっかいきわまりない「病」にとりつかれ、家族も持たず定住もせず、あちこちをさすらい歩く生涯だったが……」という解釈も成り立つのではないでしょうか。
ちなみにこの句、「病中吟」という前書がついています。光太郎も、のちに昭和20年(1945)、空襲で東京を焼け出されて花巻の宮沢賢治の実家に疎開した折、結核性の肺炎で高熱を発し、1ヶ月ほど病臥した際に詠んだ連句に「病中吟」と前書きをつけています。偶然ではありますまい。