明日まで展示「検閲官 ―戦前の出版検閲を担った人々の横顔」が開催されている、千代田区立千代田図書館さんでの次の展示です。 

展示 10分で出会う吉本隆明展 ~晶文社『吉本隆明全集』によせて~

期 日 : 2017年4月25日(火)~7月22日(土)
場 所 : 千代田区立千代田図書館9階 展示ウォール 
       千代田区九段南1-2-1千代田区役所9階・10階
時 間 : 月~金 午前10時~午後10時 土 午前10時~午後7時  日・祝 午前10時~午後5時
休館日 : 第4日曜日
料 金 : 無料
主 催 : 千代田区立千代田図書館 晶文社

吉本隆明さんを知っていますか?
吉本さんは、思想家であり、文学者でもあります。若い方々には、「吉本ばななのお父さん」としてより広く知られているかもしれません。化学の専門教育を受けるいっぽう、詩人として世に出た彼は、会社勤めをしながら詩作や評論活動をつづけ、詩情と合理性をあわせもった思想家として、時代時代の世論や知識人に影響をあたえました。
吉本さんが「戦後最大の思想家」と呼ばれるほどのゆるぎない思想を、戦後の混沌とした価値観の中で打ち立てることができたのは、なぜなのでしょうか。さまざまな価値観がリアルタイムで共有される、「正解」のない現代、吉本さんの、何者にもよりかからない「自立」の力が、より魅力的に感じられます。
今年は平成24年の死去から5年、本展では吉本さんの人生と膨大な業績を、パネル・著書や関連書籍(一部を除き貸出可)・愛用品・書斎の写真などで紹介します。

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戦後、この国で初めて光太郎を真っ正面から取り上げた故・吉本隆明。当会顧問・北川太一先生とは、東京工業大学等でご同窓、光太郎がらみで終生、交流を続けられました。

その没後、晶文社さんから『吉本隆明全集』(全38巻・別巻1)の刊行が始まり、これまでに刊行された第5巻(月報に北川先生玉稿掲載)、第4巻、第7巻第10巻第12巻などで、光太郎に言及した文筆作品が所収されています。

その『吉本隆明全集』が第Ⅱ期刊行に入るということで、いろいろ行われている記念イベントの一環としての展示です。

先週には同じく記念イベントの一環、「糸井重里さん×ハルノ宵子さんトークイベント「はじめての吉本隆明」が開催されました。当方、申し込んだのですが、すでに先着順で定員に達しており、聴けませんでした。残念。

今回は関連行事として講演会が予定されています。 

講演会「ビジネスに活かす「吉本隆明」」

期 日 : 2017年5月24日(水曜日)
場 所 : 千代田区立千代田図書館9階=特設イベントスペース 
時 間 :  午後7時~8時30分
料 金 : 無料 定員50名 申し込み不要 先着順
講 師 : 山本哲士さん(文化科学高等研究院ジェネラル・ディレクター)

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ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

こほろぎの声をきくと、 物の哀れどころか、あべこべに、 十悪業が目をさます。 こんな男にかかつては、 詩も歌もおしまひです。

詩「殺風景」より 昭和2年(1927) 光太郎45歳  

「十悪業」は「じゅうあくごう」と読み、仏教用語です。「十悪業道」とも。

 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』によれば、(1) 殺生,(2) 盗み,(3) 邪淫,(4) いつわり (妄語) ,(5) 中傷 (両舌) ,(6) ののしり (悪口) ,(7) ざれ口 (綺語) ,(8) 貪り,(9) 怒り,(10) 誤った考え (邪見) の 10種。 (1) ~ (3) が身体動作に関するもの,(4) ~ (7) が言語表現に関するもの,(8) ~ (10) が心理作用に関するもの。

「殺生」や「盗み」はともかく、社会矛盾に対し痛烈な「怒り」を覚えていた光太郎、詩歌の中で「両舌」やら「悪口」やら「綺語」やらは、確かに開陳していました。光太郎にとっての詩歌は「花鳥諷詠」たり得ない、ということなのでしょう。