昨日、一昨日と、小平市平櫛田中彫刻美術館さんの特別展「ロダン没後100年 ロダンと近代日本彫刻」について書きました。こちらでは光太郎彫刻「腕」(大正7年=1918)、「十和田湖畔の裸婦群像中型試作」(昭和28年=1953)、そして朝倉彫塑館さん所蔵の「手」(大正7年頃=1918頃)が展示されていました。
同じ「手」が、現在、竹橋の東京国立近代美術館さんで展示されていますので、ご紹介します。
平成28年度第4回所蔵作品展「MOMATコレクション」
会 期 : 2017年2月18日(土)~5月21日(日)場 所 : 東京国立近代美術館 千代田区北の丸公園3-1
時 間 : 10:00-17:00 金曜日・土曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日 : 月曜日(祝日の場合は開館)
料 金 : 一般:430円(220円) 大学生:130円(70円)( )内は20名以上の団体料金
MOMATコレクションにようこそ! 今年も、千鳥ヶ淵の桜が美しい季節を迎えます。これにあわせて、前期(2月18日~4月16日)には川合玉堂《行く春》をはじめ、桜を描いた名作が、みなさんをお迎えします。後期(4月18日~5月21日)も加山又造《春秋波濤》など、見逃せない作品ばかりです。
それだけではありません。個人の特集も充実です。4階4室では山本鼎を、3階6室では藤田嗣治を、7室では長谷川潔と浜口陽三を、9室では植田正治を、そして10室では長谷川利行を特集します。
一方、4階5室は当館の所蔵する西洋近代美術の特集です。日本への影響関係を知るためにも、コレクションに欠かせないこれらの作品に、あらためてご注目ください。 さらに、1階で開催の「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展に関連した小特集を、3階8室で行います。樂の茶碗と、当館コレクションの戦後抽象絵画との間に、深いところで響き合うものを感じ取れるはずです。
それでは、MOMATですてきな春の一日を、ごゆっくりお楽しみください。
出品作品リストは、こちら
先述の通り、光太郎のブロンズ代表作「手」が出品されています。現在、小平市平櫛田中彫刻美術館さんに展示されている朝倉彫塑館さん所蔵の「手」と同じく、光太郎生前の鋳造で、台座の木彫も光太郎の手になるものです。
有島武郎が入手し、自殺する直前まで手にとって愛でていたという逸話があります。その後、回り回ってこちらに所蔵されました。
一昨年には、武蔵野美術大学美術館さんにて開催された「近代日本彫刻展 −A Study of Modern Japanese Sculpture−」で、二つの手が並びました。当方が把握している限りでは、光太郎生前の鋳造で、台座も光太郎作という「手」は、この2点と、高村家に伝わっている1点の3点のみです。
「MOMATコレクション」、他にも教科書に載っているような作品が満載です。光太郎と関連の深かった作家のものとしては、中村彝「エロシェンコ氏の像」、安井曽太郎「金蓉」、梅原龍三郎「噴煙」、村山槐多「バラと少女」、岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」、柳敬助「白シャツの男」、荻原守衛「女」、藤田嗣治「アッツ島玉砕」、木村荘八「新宿駅」、舟越保武「原の城」など。その他、海外や伝代の作品も充実しています。
4月2日(日)―第61回連翹忌の日ですが―は、「美術館の春まつり」の一環として、観覧料無料。さらに「春まつりトークラリー」ということで、正午受付開始、先着1,000 名様対象のギャラリートークも開催されます。
ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
おれの手の届かないさきを人がやる、 人の手の届かないさきをおれがやる、 それでいい。
詩「とげとげなエピグラム」より 大正12年(1923) 光太郎41歳
上記の光太郎と交流の深かった作者の作品などを目の当たりにすれば、こういう感想を抱いたのでは、と思われます。光太郎に「金蓉」や「アッツ島玉砕」は描けませんが、安井や藤田に「手」は作れません。
このところ「とげとげなエピグラム」からの引用が続いています。このコーナー、基本的に一作品から一つのフレーズを選んでいましたが、「とげとげなエピグラム」は数行ずつの短章が30余り並べられており、一つ一つが一つの作品といった趣ですので、そうしています。明治末の「泥七宝」もそうでした。
どうもこういう短章の羅列があると、光太郎には大きな転機が訪れるようです。「泥七宝」の頃には、智恵子との恋愛を経て、光雲を頂点とする日本彫刻界と縁を切って独自の道に進む姿勢の確立、「とげとげなエピグラム」の頃には、露わになった社会矛盾に怒りを表出する「猛獣篇」時代への突入と。