昨年、十和田市内で朗読劇「乙女の像のものがたり」を上演なさった劇団エムズ・パーティーさんから、ほぼ同じ台本で作成されたDVDが届きました。
約1時間の内容で、一昨年、十和田湖奥入瀬観光ボランティアの会さんの編集で刊行された『十和田湖乙女の像のものがたり』中の、当方執筆によるジュブナイルを原作としています。
早速、拝見。
物語は昭和26年(1951)春、花巻郊外太田村に隠遁中の光太郎を草野心平が訪れ、帰京を促すシーンから始まります。しかし光太郎は、「まだその時ではない」と拒否。「君だって、なぜ僕がこんな山の中に居るのかわかっているだろう」と諭します。
そこで時計の針が巻き戻され、ここまでの光太郎の生涯の俯瞰。高村光雲の跡継ぎとして彫刻の道に入り、ロダンの彫刻を見て本物の芸術に眼を開かされ、画家志望の智恵子との出会い・結婚、そして独自の芸術を切り開く姿。しかし智恵子は絵画制作に絶望し、心を病んで死亡。光太郎も時代の流れに翻弄され、軍の手先となって多くの戦争詩を書き、戦後は自ら蟄居生活に入ったこと……。
そして、周囲からの働きかけもあって、自らの彫刻の集大成として乙女の像を作るにいたった光太郎、その死までが描かれています。
書籍『乙女の像のものがたり』に使われた、安斉将氏のイラストや、古写真、美しい十和田湖周辺の風景などの静止画に交じって、太田村の山小屋や乙女の像の制作風景、除幕式の様子などの動画も使われ、非常にイメージしやすく作ってありました。
声の出演の方々は、朗読劇公演の際には10数名だったのが、倍増。一般市民の方も混ざっているそうですが、皆さん、熱演されています。せりふやト書きは全てテロップで表示され、耳の不自由な方にも対応されています。
自分で書いた物語ながら、クライマックスのあたりではうるっと来てしまいました(笑)。
十和田市さんの「元気な十和田市づくり市民活動支援事業」による助成を受けての制作だそうで、ここまでのクオリティーですと、自費負担ではとても制作できなかったと思われます。ナントカ市場とは違って、正しい税金の使い方ですね(笑)。
今後、学校や観光バス会社、施設などへ無償配布され、さらに販売も考えていらっしゃるそうです。そのあたりの詳細が伝わって参りましたら、またご紹介します。
【折々のことば・光太郎】
寒風に魂よろこび 野に走り出れば 路のぬかるみ悉くかがやき 水たまり静かに天上の緑をうつす 烈風はなほも吹きつのり 吹きつのり 世界はいまや浄められようとする
詩「晴れゆく空」より 大正5年(1916) 光太郎34歳
冒頭近くに「十二月」の語があり(まぁ、「寒風」ですから、それがなくとも、ですが)、やはり光太郎が好んで作った冬の詩の一環であることが分かります。雨上がりで埃が舞っていない空を謳っています。
寒さの苦手な当方としては、春めいてきた今日この頃の陽気に「魂よろこび」という状態です。光太郎に「甘い!」と叱られそうです(笑)。