岩手の地方紙『岩手日日』さんに、昨日載った記事です。
全国高校文芸コン 長畑さん(花巻北3年)短歌最優秀
第31回全国高校文芸コンクール(全国高文連など主催)の入賞者が決まり、本県からは最優秀賞の文部科学大臣賞に小説部門で佐藤薫乃さん(盛岡三3年)、文芸部誌部門で盛岡四、短歌部門の最優秀賞に長畑七海さん(花巻北3年)がそれぞれ選ばれた。 今回は小説、文芸評論、随筆など7部門に全国2593人から6732点の応募があった。表彰式は10日に東京都で行われる。本県の入賞者は次の通り。(敬称略)
◇小説部門▽最優秀賞=佐藤薫乃(盛岡三3年)「うるわしの里」▽優秀賞=佐々木桂子(水沢3年)及川慈子(一関一2年)▽優良賞=熊谷奈南、水野綾香(以上盛岡三3年)佐々木ほのか(盛岡四2年)▽入選=岩﨑麻里奈(盛岡三3年)鈴木由希(水沢3年)
◇随筆部門▽入選=田鎖寛都、太田彩季(以上盛岡三1年)
◇詩部門▽優秀賞=髙橋香奈(盛岡四3年)及川真智子(水沢3年)▽優良賞=佐々木ほのか(盛岡四2年)髙橋鈴花(水沢2年)▽入選=及川慈子(一関一2年)土谷映里(盛岡四3年)佐藤薫乃(盛岡三3年)古川智梨(盛岡四3年)相田美咲(同2年)菱川里奈(花巻北3年)
◇短歌部門▽最優秀賞=「一輪を」長畑七海(花巻北3年)▽入選=舘下智子(宮古3年)髙橋鈴花(水沢2年)
◇俳句部門▽入選=佐藤楓(盛岡二3年)
◇文芸部誌部門▽最優秀賞=「志髙文芸五十号」盛岡四▽優秀賞=盛岡三▽優良賞=水沢▽奨励賞=花巻北、盛岡二
光太郎の詩、糸口に表現
全国高校文芸コンの短歌部門で最優秀賞を獲得した花巻北高文芸部長の長畑七海さん(3年)。受賞の喜びを「最優秀賞なんて縁がないと思っていた。母から褒められ、じわじわうれしさが込み上げた」と振り返った。
受賞したのは、晩年の一時期を花巻で過ごした詩人で彫刻家の高村光太郎の忌日「連翹忌(れんぎょうき)」を題とした「一輪を墓石に飾る連翹忌あなたの気魄(はく)私に満たせ」。6月に開いた文芸部恒例の歌合(うたあわせ)でものしたという。
瞬間を切り取る俳句は得意だが、感情を盛り込む短歌は苦手。「上の句は早かったが、下の句はなかなかだった」。糸口を求め、手にした光太郎の詩「道程」の一節「常に父の気魄を僕に満たせよ」が光明となった。
締め切りに追われる緊張感は、受賞歴の多い同学年のライバルに感じていた焦りとも重なった。「結果を出そうと内心かなり焦っていた。光太郎さんの力を借りたいと思い、それに懸けた」。
結局、歌合では敗れたものの、部誌掲載を通じ出品した文芸コンでは高評価に。ただ、あまりの出来事でにわかには受け入れ難く、喜びを実感したのは受賞を知った日の帰宅時、迎えに来た母親に褒められた時だった。
長畑さんは、これまでの活動で、自由な想像の余地がある表現方法の魅力を認識した様子。「活字は美術以上の可能性を秘めている。将来はまだ見えないけれど、これからも短歌や俳句に挑戦したい」と話していた。
短歌部門最優秀の長畑さん、連翹忌を取り上げて下さり、ありがたいかぎりです。
4月2日、当会主催が主催する日比谷松本楼での連翹忌以外に、花巻でも毎年、光太郎ゆかりの松庵寺さんで連翹忌の法要がもたれています。それが午後からの開催で、午前中には光太郎が7年間を過ごした郊外旧太田村の山小屋(高村山荘)敷地で、光太郎詩碑に献花する詩碑前祭が行われています。おそらく長畑さん、そのいずれかにご出席下さったことがあるのでしょう。
また、長畑さんが通われている花巻北高さんには、高田博厚作の光太郎胸像が鎮座ましまし、日々、生徒さんたちを見守り続けています。
そういうところからの連想もあるのではないでしょうか。泉下の光太郎、そして高田博厚も喜んでいるような気がします。
なかなか決まらなかったという下の句は、光太郎の代表作「道程」からのインスパイア。この詩が書かれたのは大正3年(1914)ですから、もう100年以上前です。それでも現代の若者の心の琴線に触れているわけで、あらためて光太郎の偉大さを感じさせます。
受賞した皆様の今後のさらなる活躍を祈念いたします。
【折々の歌と句・光太郎】
わがわかき高田博厚剛腹のてのひらをもて風をとらへぬ
大正13年(1924) 光太郎42歳
碌山荻原守衛の死後、高田は光太郎が最も親しく交わった彫刻家です。高田は光太郎より17歳年下ですが、師弟関係とも違う、友人としてのつきあいでした。
いったいに光太郎は、詩にしても彫刻にしても、「弟子」を持たない主義でした。周囲に集まってきた若い芸術家たちは、全て年少の友人という感覚で、アドバイス程度はあったかもしれませんが、添削をしたり、手取り足取り教えたりと言ったことはやりませんでした。
したがって、彼らのプロフィールに「高村光太郎に師事」とあるものは、厳密にいえば全て誤りです。芸術家としての生き様、人生観といったものを教わったと考えれば「師事」かもしれませんが……。