先頃、埼玉県東松山市の元教育長・田口弘氏が、書簡や書など光太郎関連資料を寄贈された件がニュースになりました。地元テレビ局・テレ玉さんの報道がこちら。『東京新聞』さんと『毎日新聞』さん、そして『産経新聞』さんはこちら。
少し遅れて先週、『朝日新聞』さんの埼玉版にも記事が載りました。
埼玉)高村光太郎の書簡、元東松山市教育長が寄付
元教師で、東松山市教育長を長く務めた田口弘さん(94)が先月、詩人で彫刻家の高村光太郎(1883―1956)から届いたはがきや封書、色紙、直筆サイン入り全集など約100点を市へ寄贈した。書簡は主に戦中戦後、田口さんが高村に送った自作の詩や食料品に対するお礼状で、高村の誠実な人柄がうかがえる。
田口さんは旧制松山中学に在学当時、国文学者だった恩師の影響で高村研究を始めた。師範学校専攻科で、新聞や雑誌に載った高村の記事や作品をノートに書き写すなどして卒業論文にまとめた。44年4月、その恩師に連れられて高村を訪ね、論文を見せたところ、「僕より僕のことを知っているね」と言われたという。
「すでに『智恵子抄』などを発表した著名人だったのに、初対面の学生の論文を丹念に読んでくれた」と感激した田口さんは、ますますファンに。海軍軍属として南方戦線へ赴く直前に会うと、「世界はうつくし」など色紙2枚を書いてくれたという。田口さんはインドネシアで捕虜生活をおくりながら詩作に励み、「ジャワ抄」にまとめた。
復員後、岩手県の疎開先へ高村を訪ねた田口さんが、戦地で色紙を失ったことをわびると書き直してくれた。新制松山中学の教諭となった田口さんは、その後も妻が編んだ靴下や高村が好物の練乳など食料品を送り続け、生まれた長男には「光夫」と名付けた。
練乳に対して高村は「かかる乳製品の貴重なものを老人がいただくのは世の嬰児達(えいじたち)に相済まぬ気がいたしましたが」「紅茶に入れたり、うすめて朝ののみものにしたり、パンをつくったりしてよろこんで居(お)ります」と封書をしたためた。
田口さんが送った作品には「立派なものです。新鮮で、ほんとの感じに満ちてゐます」などと評し、「ジャワ抄」で田口さんが用いた「カンポン」(集落)という現地語を返礼のはがきの文面に使うなど気遣いも随所に見せている。
田口さんは「高村は今も、私の生き方の教科書。若い時代の出会いが人生を決める。寄贈する書簡で、若い人が高村の崇高な人間性にふれてくれれば」と話す。市は書簡を市立図書館に所蔵し、8月10日から公開することにしている。(西堀岳路)
記事にある「ジャワ抄」は正しくは「ジャワ詩抄」。田口氏手製の詩集です。
記事にある市立図書館での公開及び田口氏の講演会について、市の広報誌『広報ひがしまつやま』の今月号に、案内が掲載されました。
高村光太郎資料展~田口弘氏寄贈資料による~
期 日 : 8月10日(水)~28日(日)
会 場 : 東松山市立図書館3階展示室 東松山市本町2-11-20
会 場 : 東松山市立図書館3階展示室 東松山市本町2-11-20
時 間 : 午前9時30分~午後7時
休館日 : 第4月曜日
休館日 : 第4月曜日
講演会
期 日 : 8月21日(日)午前11時~11時45分
会 場 : 市立図書館3階研修室
講 師 : 田口 弘 氏
定 員 : 50人(申込順)
申込み 8月5日(金)から直接又は電話で市立図書館へ。[TEL] 0493(22)0324
期 日 : 8月21日(日)午前11時~11時45分
会 場 : 市立図書館3階研修室
講 師 : 田口 弘 氏
定 員 : 50人(申込順)
申込み 8月5日(金)から直接又は電話で市立図書館へ。[TEL] 0493(22)0324
『広報ひがしまつやま』、さらに田口氏と光太郎の関わりについての記事も掲載されています。
当方も講演会にはお邪魔しようと考えております。
展示される資料も、光太郎自筆ハガキ以外にも、筑摩書房『高村光太郎全集』の口絵を飾った書や、それらが贈られた際の小包の包装紙、鉄道荷札などもあるはずで、光太郎の息吹がありありと感じられる逸品ぞろいです。ぜひご覧下さい。
【折々の歌と句・光太郎】
つつましく手にはふ小蝉ぢぢとなきたちまち飛びて青空に入る
大正13年(1924) 光太郎42歳