信州安曇野の碌山美術館さんで先週末から開催中の 「夏季特別企画展 高村光太郎没後60年・高村智恵子生誕130年記念 高村光太郎 彫刻と詩 展 彫刻のいのちは詩魂にあり」の図録が届きました。
B5判111ページ、立派な図録です。
同館館長・五十嵐久雄氏の「ごあいさつ」、島根県立美術館長・長谷川三郎氏の論考「彫刻家高村光太郎」、同館学芸員・武井敏氏の論考「高村光太郎の彫刻と詩―桃と乙女、そしてレモン―」、光太郎智恵子略年譜、彫刻に関わる光太郎の詩文、そして豊富な図版から成ります。図版は出展作品はもちろん、それ以外の参考図版も充実しています。
図版を見て、改めて思いました。それほど大規模な展覧会ではありませんが、光太郎智恵子芸術の精髄を集めており、二人の芸術世界を概観するには充分すぎる展示内容です。
光太郎の木彫が7点。「蝉」、「白文鳥」、「桃」、「柘榴」、「蓮根」、そして「鯰」が2種類。 ブロンズが12点。「獅子吼」、「薄命児男子頭部」、「園田孝吉胸像」、「裸婦坐像」、「腕」、「手」、「老人の首」、「黒田清輝胸像」、「光雲一周忌記念胸像」、「倉田雲平胸像」、「乙女の像(小型試作)」、「乙女の像(中型試作)」。このうち、「白文鳥」、「乙女の像(小型試作)」、「乙女の像(中型試作)」は、それぞれ2体で一対です。
さらに光太郎の作品としては、油絵の「自画像」、鉛筆書きの「乙女の像構想スケッチ」、肉筆詩稿(主に彫刻に関わる詩篇をセレクト)が18点、詩集が7冊(うち5冊は当方がお貸ししました)。
そして智恵子の紙絵の実物が40点。
22:35追記 山梨県の清春白樺美術館さんで所蔵の智恵子油絵「樟」も出品されています。書き落としました。
これほど充実した企画展ですが、それほど報道されておらず、残念です。地方紙のサイトでも開催予告的な記事は見つかりましたが、開幕した、という記事が見あたりません。今後に期待したいところです。
今後といえば、8月7日(日)、午後1時30分から当方の記念講演があります。
ぜひぜひ足をお運び下さい。
【折々の歌と句・光太郎】
羽を彫り眼だまをほれば木の蝉もじつと息して夕闇にはふ
大正13年(1924) 光太郎42歳
碌山美術館さんで展示されているのが、この短歌で詠まれている「蝉」です。