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「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―

2016年3月25日 末盛千枝子著 新潮社 定価1600円+税 

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幸せとは、自分の運命を受け容れること――。

彫刻家・舟越保武の長女に生まれ、本当に美しいものとは何かを教えられた幼少期。皇后様のご講演録『橋をかける』を出版した絵本編集者時代。戦争や貧しさ、息子の難病に夫の突然死、会社の倒産。そして、故郷岩手での東日本大震災……何があっても、「私」という人生から逃げずに前を向く著者の、波乱に満ちた自伝的エッセイ。

末盛千枝子スエモリ・チエコ
1941年東京生まれ。父は彫刻家の舟越保武で、高村光太郎によって「千枝子」と名付けられる。慶應義塾大学卒業後、絵本の出版社である至光社で働く。1986年には絵本『あさ One morning』(G.C.PRESS刊行)でボローニャ国際児童図書展グランプリを受賞、ニューヨーク・タイムズ年間最優秀絵本にも選ばれた。1988年に株式会社すえもりブックスを立ち上げ、独立。まど・みちおの詩を皇后様が選・英訳された『どうぶつたち THE ANIMALS』や、皇后様のご講演をまとめた『橋をかける 子供時代の読書の思い出』など、話題作を次々に出版。2010年から岩手県八幡平市に移住し、その地で東日本大震災に遭う。現在は、被災した子どもたちに絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」の代表を務めている。


光太郎に私淑した彫刻家の故・舟越保武氏のご長女で、絵本作家・編集者としてご活躍なさっている末盛千枝子さんの新著です。一昨年から昨年にかけ、新潮社さんのPR誌『波』に連載されていたエッセイ「父と母の娘」に加筆、一冊にまとめたものです。

当方、末盛さんには2回、お目にかかりました。

最初は平成25年(2013)、東京代官山で行われたイベント「読書会 少女は本を読んで大人になる」。末盛さんが講師で、『智恵子抄』を取り上げて下さった時でした。こちらは竹下景子さんや阿川佐和子さんなどとのご共著で後に一冊の書籍にまとめられました。

その後、一昨年の5月15日、花巻高村祭でもご講演。それぞれで、名付け親である生前の光太郎との思い出を語られました。

今回の『「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―』にも、同様のお話。さらに昨年7月、盛岡少年刑務所さんでの「高村光太郎祭」――昭和25年(1950)に光太郎本人がこちらを訪れて講演をしたことにちなんで、続けられています――で講演をなさった時のことなども書かれていました。

手元には昨日届き、まだ拾い読み、斜め読みですが、熟読するのが楽しみです。しかし、拾い読み、斜め読みでも、末盛さんのある意味ドラマチックな生き方、そして何があっても「自分」を受け入れて生きるというスタンスがページからこぼれてきます。

話が飛躍しますが、NHKさんの朝ドラの主人公になってもおかしくないような感がしました。

ぜひお買い求め下さい。


【折々の歌と句・光太郎】

ながめては深き思ひに沈む身をはなちし野火はただもえて行く
明治34年(1901) 光太郎19歳

各地で野焼き、山焼きが行われています。いかにも春、ですね。