昨日は福島県に行っておりました。今年初の東北行でした。


状況をわかりやすくするため、昨日の『福島民報』さんの記事を引用いたします。 

富岡・夜の森の桜並木など100点 男鹿さん絵画展開幕

 画家男鹿和雄さんの作品展「第二楽章 男鹿和雄展-吉永小百合と語り継ぐ-」は27日、福島県郡山市のビッグパレットふくしまで開幕した。3月21日まで。男鹿さんは、女優吉永小百合さんが東京電力福島第一原発事故の被災者の詩を朗読したCD・詩画集「第二楽章 福島への思い」の挿絵を担当した。
 会場には約100点が並ぶ。富岡町の夜の森地区の桜並木や川沿いの風景などが温かみのある色彩で描かれている。初日は男鹿さんのサイン会を催し、来場者は詩画集を買い求めて列をつくった。折り紙の絵柄を描いて折り鶴を作るワークショップも開いた。男鹿さんは「多くの人に絵を見てもらい、復興へ向かうきっかけになればうれしい」と話している。
 開館時間は平日は午前11時から午後5時まで、土、日曜、祝日は午前9時から午後5時まで。観覧料は一般800円、高校生以下400円、未就学児は無料。問い合わせは郡山青年会議所(JC) 電話024(932)2289へ。
 作品展は郡山JCの主催で創立55周年の記念事業として開いた。スタジオジブリなどが協力した。


こちらが会場のビッグパレットふくしま。一見、サッカースタジアムのような、複合コンベンション施設でした。

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2階に上がると大きな看板が出ていました。

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やわらかな色遣いの男鹿氏の絵。

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小中学生の作品展の看板も。

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3階に上がり、まずは男鹿氏の展覧会を拝見しました。

最初は福島。
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吉永さんの朗読CDのジャケットに装画として使われた作品などの原画やスケッチが中心でした。

ところどころにCDに収められた和合亮一さんや若松丈太郎さん、佐藤紫華子さん、そして福島の一般の皆さんの詩が大きなパネルに掲載され、男鹿氏の絵が添えられていました。

立ち入り禁止のバリケードの向こうに咲く桜、町中を彷徨う牛、除染廃棄物を入れた黒い袋、防護服姿の人々、津波でひっくり返ったまま放置された乗用車……。

それらがおどろおどろしい筆致ではなく、ジブリ映画風の優しいタッチで描かれていることで、よりいっそう悲哀が伝わって来ます。

そして原発事故とはかかわりなく美しい福島の野山や草花、人々の営み。看板に描かれているのは、原発事故前の様子です。しかし、それらが一瞬にして奪われる危うい立ち位置にあることが痛感させられました。

「復興支援になれば」と思い、男鹿氏の画集を会場で買い求めました(CDは昨年、発売時に買い求めていましたので)。表紙は看板に描かれている画です。

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そして裏表紙がこちら。

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表紙と裏表紙で「befor」「after」になっているわけです。それが単なる怒りの表象ではなく、「after」の「after」で、また「befor」の状態に戻って欲しい、という切なる願いが感じられました。

その後、沖縄、広島、長崎を舞台にした作品の数々。ある意味、踏みにじられてきた(今も踏みにじられ続けている)場所です。それでもそれぞれの場所に、それぞれの美しさがあり、それが表現されていました。

隣の会場では、地元小中学生による「未来のわたしたちへ~ほんとの空~」絵画展覧会が開催されています。

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会場内には小中学生の作品以外にも、大小さまざまたくさんの折り鶴が並んでいました。テーブルがセットされ、折り紙が置いてあって、会場内で創られたもののようです。これらはあとで広島に送られるそうです。

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小中学生の描いた「ほんとの空」の青が目に染みました。

会場のビッグパレットふくしまから見た安達太良山です。春らしく霞んでいました。

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この展覧会、昨年は広島、長崎で開催されました。ぜひ東京など大都市圏でも開催していただきたいものです。また、鹿児島や福井の皆さんにもご覧頂きたいと思います。「あなた方の街が、こうなる覚悟はありますか?」という問いを込めて……。


その後、いわき市に向かいました。上小川地区の草野心平生家で開催された「草野天平の集い」に出席のためです。そちらについてはまた明日。


【折々の歌と句・光太郎】

山の鳥うその笛ふくむさし野のあかるき春となりにけらしな
大正14年(1925) 光太郎43歳

昨日ご紹介した短歌の異稿です。

木彫「うそ鳥」を収めた桐箱の蓋裏にしたためられました。

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