昨日の『日本経済新聞』さんの紙面から。
生きる命 十選 掌編の試み (1)高村光雲「老猿」
作家の丸山健二氏が、「危機と緊張感に満ちた生をおのれの本能と才知のみで生きる命」を宿した美術品10種を選び、それぞれを評する連載です。「掌編」と謳っており、評と言うより、短編小説の趣さえあります。
第1回で、光雲作の「老猿」を取り上げて下さいました。「感情や本能の高い障壁を乗り越えてきた証としての、強い意志に支えられた心組み」を持ち、「深い孤独を背負ってはいても、しかし、鋭い眼光には啓発されること大なるものがあり」、「心魂の奥深くには、他者の心中を思いやる、門外不出の宝物を秘めている」と描写されます。
そのまま作者・高村光雲その人を評しているようにも感じられます。そして、そうした血脈は、長男・光太郎にも受け継がれているのではなかろうかとも思いました。
左が光雲、右が光太郎。明治24年(1891)、光雲39歳、光太郎8歳のカットです。
さて、「老猿」。上野の東京国立博物館さんに収められていますが、残念ながら現在は展示されていません。同館では「博物館に初もうで」ということで、「えとの申の特集、そして松竹梅に鶴亀など、吉祥をテーマにした作品の数々」などを展示中ですが、「老猿」はラインナップに入っていません。なんだかもったいないような気がしますが、作品保護などの観点もあって、「あるから展示する」というわけにもいかないのでしょう。
詳細が解りましたらまたお知らせいたします。
寒き日の自炊の水を運びけり
明治39年(1906) 光太郎24歳
画像は我が家の「老猿」ならぬ「老犬」です。つい先だって、12歳になりました。寒くなるとこの犬の水も凍るのですが、今シーズンはまだそうなっていません。
ここ数日、関東地方は記録的な暖かさでしたが、このあとは冬らしくなるそうです。