藤田嗣治(明治19年=1886~昭和43年=1928)。独自の乳白色を用いた裸婦画などで、エコール・ド・パリを代表する画家の一人となりました。東京美術学校彫刻科を卒業した光太郎は、同科研究生を経て、明治38年(1905)に同校西洋画科に再入学しましたが、その際の同級生に藤田が居ました。藤田は光太郎の3歳下(すなわち智恵子と同じ)になります。ちなみに岡本太郎の父・一平や、社会主義運動にも関わった望月桂も同級生でしたし、教授陣は黒田清輝、藤島武二らと、多士済々、きら星の如しですね。
光太郎と藤田の直接の交流はこの時期だけでした。藤田は同校卒業後、光太郎とほぼ入れ違いに渡仏、活動拠点をそのままパリに置きます。昭和に入ってから帰国、光太郎同様、泥沼の戦争に巻き込まれ(あるいは積極的に関わり)、戦後には戦争協力を批判され、また渡仏。結局、フランス国籍を取得、日本に帰ることなく昭和43年(1968)にスイスで歿しました。
そんな藤田を主人公にした日仏合作の映画が製作され、今月14日に封切られます。
FOUJITA ―フジタ―
公 開 日 : 2015年11月14日(土) 全国ロードショー場 所 : 角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか
出 演 : オダギリジョー 中谷美紀 アナ・ジラルド、
アンジェル・ユモー マリー・クレメール 加瀬亮 りりィ 岸部一徳 他
製 作 : 井上和子、小栗康平、クローディー・オサール
監督・脚本 : 小栗康平
音 楽 : 佐藤聰明
配 給 : KADOKAWA
監督・脚本 : 小栗康平
音 楽 : 佐藤聰明
配 給 : KADOKAWA
2015年/日本・フランス/日本語・フランス語/カラー/126分
© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド
© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド
『死の棘』で第43回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ&国際批評家連盟賞をダブル受賞、『泥の河』『伽倻子のために』『眠る男』など海外でも高く評価される小栗康平監督の、十年ぶりとなる最新作だ。パリで絶賛を浴びた裸婦は日本画的でもあり、大東亜の理想のもとに描かれた“戦争協力画”は西洋の歴史画に近い。小栗監督は「これをねじれととるか、したたかさととるか。フジタは一筋縄で捉えられる画家ではない」と語る。戦後、「戦争責任」を問われたフジタはパリに戻り、フランス国籍を取得。以来、二度と日本の土を踏むことはなかった。フジタは二つの文化と時代を、どう超えようとしたのか。
フジタを演じるのは、韓国の鬼才キム・ギドク監督作品に出演するなど海外での活躍も目覚ましいオダギリジョー。フランスとの合作は本作が初めてである。映画の半分を占めるフランス語の猛特訓を受けて、見事にフジタを演じた。フジタの5番目の妻・君代役には、『電車男』『嫌われ松子の一生』『縫い裁つ人』などで名実ともに日本を代表する女優 中谷美紀。さらに、加瀬亮、りりィ、岸部一徳ら味わい深い個性派が集まった。フランス側のプロデューサーは、世界的大ヒットとなった『アメリ』のほか、アート系の作品も数多く手掛けるクローディー・オサール。静謐な映像美で描く、フジタの知られざる世界が現出した。
単に光太郎の同級生を主人公としているだけでなく、劇中に光太郎詩「雨にうたるるカテドラル」が使われているというのです。この詩は大正10年(1921)に復刊成った第二次『明星』創刊号を飾った詩で、パリ留学中に訪れたノートルダム・ド・パリをモチーフに、圧倒的な西洋美術の重厚感を謳った100行を超える大作です。藤田にしても光太郎にしても、当時の美術家達が「西洋」をどう受容していったのか、という経緯を考える上で、この作品は格好の題材となるでしょう。
さて、一昨日になりますが、NHKEテレさんの「ETV特集 FOUJITAと日本」で、小栗康平監督がご出演、映画「FOUJITA」について語られていました。事前に把握していなかったので紹介できませんでした。申し訳ありません。ただ、再放送がありますので、ご紹介します。
ETV特集「FOUJITAと日本」
NHKEテレ 2015年11月6日(金)24:00~25:00=11月7日(土)午前00:00分~1:00戦後70年の今年、画家・藤田嗣治を再発見しようとする試みが進む。フランスで初公開の作品、初めて一同に公開される戦争画。小栗康平監督による映画化などから実像に迫る。
藤田嗣治。パリで最も有名な日本人画家でありながら、戦争画を描いたことをきっかけに日本を離れ、フランスに帰化、日本ではその実像が厚いベールに覆われてきた。戦後70年の今年、再評価が進む。小栗康平監督による初の映画化、その生涯を日本の近代化の中で見つめるという。フランスでは遺族が寄贈した数々の遺品が初公開され、東京国立近代美術館では初めて戦争画が一同に公開される。戦争画の真実とは?画家の実像に迫る。
出演 小栗康平 語り 中條誠子
映画、テレビとも、ぜひご覧下さい。
テレビ、といえば、いよいよ明日は、「趣味どきっ!女と男の素顔の書 石川九楊の臨書入門 第5回「智恵子、愛と死 自省の「道程」 高村光太郎×智恵子」」のオンエアもあります。
こちらもぜひご覧下さい。
【今日は何の日・光太郎 拾遺】 11月2日
平成12年(2000)の今日、新橋演舞場で、松竹製作、津村節子さん原作の舞台「智恵子飛ぶ」が開幕しました。
智恵子役は片岡京子さん、光太郎役は平幹二朗さんでした。