まずは新刊情報です。
月に吠えらんねえ(4)
清家雪子著 2015/10/23 講談社(アフタヌーンKC) 定価740円+税作中にふんだんにちりばめられた近代詩そのもの凄さに酔い、架空の街で虚実の境を徘徊する、朔太郎、白秋(はくしゅう)、犀星(さいせい)らの作品からイメージされたキャラの圧倒的な存在感に酔い、膨大な資料を下敷きに緻密に物語を組み立てた作者の過剰な愛情に酔う。話題集中の近代詩歌俳句エンターテインメントをこの機会にぜひ!
一昨年から、講談社さんの漫画雑誌『月刊アフタヌーン』で連載されている、主人公・朔(萩原朔太郎)をはじめ、架空の町「□(シカク 詩歌句)街」に住む、近代詩歌人たちをモデルにした強烈なキャラクター達の織りなす幻想的な物語です。連載開始時、第1巻、第2巻のレビューもこのブログにて既に書いています。今年4月刊行の第3巻は、光太郎智恵子に関わる部分がほとんどなかったので、割愛しました。
第4巻、表紙を飾るのはアッコさん(与謝野晶子)とチエコさん(高村智恵子)。帯にはコタローくん(光太郎)とチエコさん。
これまでもコタローくんとチエコさんはたびたびセットで登場していましたが、第4巻所収の第17話「あどけない話」では、二人がメインのストーリーになっています。
重要な登場人物の一人、白さん(北原白秋)が、美術街にすむコタローくん(光太郎)のアトリエを訪れ、亡きチエコさん(智恵子)の幻影に遭遇する、という展開です。
しばらくは幻影のチエコさん視点で話が進み、合間合間にコタローくんの述懐が入ります。
壊れてゆくチエコさん、毀してしまったコタローくんの描写が見事です。
チエコさん亡きあとは、その姿をロボットで再現するコタローくん。
このロボットは、「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」を表しているような気もします。
その他、第4巻ではさまざまな「愛」の形が取り上げられています。チエコさんともども表紙を飾るアッコさん(与謝野晶子)とヒロさん(与謝野鉄幹)、とみちゃん(山川登美子)の三角関係。そこに「小説家」(有島武郎)と「あの女」(波多野秋子)がからみ……。さらには朔(萩原朔太郎)と「エレナ」、早世した拓(大手拓次)の物語も。
それぞれ予備知識無しでも楽しめると思うのですが、それぞれの人物の背景を知っているにこした事はありません。
そういった意味で、画期的と思える企画展が、石川近代文学館さんで開催中です。
うたえ!□(シカク 詩歌句)街の仲間たち!
期 日 : 平成27年9月19日(土)~11月29日(日) 会期中無休時 間 : 9:00~17:00 (入館は16:30まで)
場 所 : 石川近代文学館 金沢市広坂2-2-5 TEL(076)262-5464
料 金 : 一般 360円(290円) 大学生 290円(230円) 高校生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※( )内は20名以上の団体料金
漫画「月に吠えらんねえ」は、これまでの「漫画と文学」の関係性の概念を打ち破り、「作品の漫画化」でも、「作家の自伝」でもなく、「作品そのものに人格を与え、キャラクター化した登場人物」を設定し、ふんだんに近代詩ほか、短詩型の作品そのものを紙面に登場させています。
今回は、作者である漫画家・清家雪子氏、講談社アフタヌーン編集部にご協力をいただき作品の出力原画をご覧いただくほか、室生犀星、萩原朔太郎ら主要登場人物はじめ、昨年春の特別展示では展示しきれなかった折口信夫父子、中原中也など二巻以降のストーリーに重要な役割をはたす石川ゆかりの作家たちの文学資料も数多く展示いたします。
今回は、作者である漫画家・清家雪子氏、講談社アフタヌーン編集部にご協力をいただき作品の出力原画をご覧いただくほか、室生犀星、萩原朔太郎ら主要登場人物はじめ、昨年春の特別展示では展示しきれなかった折口信夫父子、中原中也など二巻以降のストーリーに重要な役割をはたす石川ゆかりの作家たちの文学資料も数多く展示いたします。
企画展示室1 『月に吠えらんねえ』と□街の仲間たち
『月に吠えらんねえ』出力原画と登場人物である萩原朔太郎、北原白秋、三好達治などの資料を展示
企画展示室2 『月に吠えらんねえ』と石川ゆかりの作家たち
『月に吠えらんねえ』出力原画と登場人物である石川ゆかりの室生犀星、折口信夫・春洋、中原中也などの資料を展示
『月に吠えらんねえ』出力原画と登場人物である石川ゆかりの室生犀星、折口信夫・春洋、中原中也などの資料を展示
企画展示室3 石川ゆかりの詩人たち
石川ゆかりの詩人や短詩型作家を紹介し、資料を展示
石川ゆかりの詩人や短詩型作家を紹介し、資料を展示
主な特別借用資料
北原白秋自筆書簡(室生犀星あて)二通(清家雪子氏蔵)
折口信夫歌軸 二幅(個人蔵)
折口春洋歌軸 三幅(個人蔵)
室生犀星自筆原稿「北原白秋」(『我が愛する詩人の傳記』)(室生犀星記念館蔵)
三好達治遺愛の横笛(みくに龍翔館蔵)
北原白秋自筆書簡(室生犀星あて)二通(清家雪子氏蔵)
折口信夫歌軸 二幅(個人蔵)
折口春洋歌軸 三幅(個人蔵)
室生犀星自筆原稿「北原白秋」(『我が愛する詩人の傳記』)(室生犀星記念館蔵)
三好達治遺愛の横笛(みくに龍翔館蔵)
エッセイ展示 「彼」とわたしの意外な関係
折口信夫 横山方子氏(石川郷土史学会幹事)
中原中也 薮田由梨氏(徳田秋聲記念館 学芸員)
表棹影 松岡理恵氏(エフエム石川アナウンサー)
折口信夫 横山方子氏(石川郷土史学会幹事)
中原中也 薮田由梨氏(徳田秋聲記念館 学芸員)
表棹影 松岡理恵氏(エフエム石川アナウンサー)
刊行物・記念グッズ
★『月に吠えらんねえ』コラボレーション作品集『□街集』 清家雪子先生描き下ろしカラー表紙 500部限定
★「月に吠えらんねえ」クリアファイル
★清家雪子先生描き下ろしイラスト&作家自筆文字缶バッチ
★『月に吠えらんねえ』コラボレーション作品集『□街集』 清家雪子先生描き下ろしカラー表紙 500部限定
★「月に吠えらんねえ」クリアファイル
★清家雪子先生描き下ろしイラスト&作家自筆文字缶バッチ
「月に吠えらんねえ」の重要なキャラの一人、「犀」(室生犀星)が金沢出身、「チューヤくん」(中原中也)も金沢に居住経験あり、ということで実現したようです。
チラシにはコタローくんとチエコさん(ロボット)も描かれています。
ぜひ足をお運びください。
【今日は何の日・光太郎 拾遺】 10月24日
昭和56年(1981)の今日、千葉成田郊外に、三里塚御料牧場記念館が開館しました。
成田空港開港前、皇室の御料牧場があり、その関係の展示がメインですが、当地に移り住んだ作家・水野葉舟や、その親友の光太郎に関する展示もなされています。