東京都美術館さんで開催中の展覧会。主に絵画の分野で光太郎と縁の深かった諸作家の作品が多数展示されています。 題して「二科100年展」。大正3年(1914)に創立され、今年、100回展を迎える在野の美術団体・二科会の回顧展です。

二科会には第6回展から彫刻部が置かれ、光太郎は好意的に紹介していました。

二科の彫刻は数量的に小さい割にしつかりしてゐる。藤川勇造氏、ザツキン氏、渡邊義知氏等は十分研究に値する。二科の絵画部には新感覚の最先端から超現実派の新鋭まで存在するが、彫刻の方ではザツキン氏を除いては、概してハイカラではあるが素朴質実な道を歩いて居る。(「上野の彫刻鑑賞」 昭和4年=1929)

二科の彫刻部は一見渾沌としてゐるやうであるが、そのハイカラ性は現社会の所謂インテリゲンチヤ層の嗅覚に属する基調を持つてゐる。何処かブツキツシユであり、何処か中間的であり、何処か示唆的であり、何処か国際貿易的であり、何処か知的感傷性を持つて居り、また何処かに現社会の謂ふ所のエログロ的感電の萌芽が見える。まだ概して此の部の人達は消極的にしか、或は内部的にしか仕事してゐないからすべて之等の特性も表面に露骨には出てゐない。けれども嗅ぎわければさういふ匂がするのである。此の部がもつと隆盛になり、もつと多種の要素が加はつてその特色の発揮せられるのも遠くないだらうと思はれる処に興味がある。(「上野の彫刻諸相」 昭和5年=1930)


期 日 : 2015年7月18日(土) ~ 9月6日(日)  (すでに始まっています)
場 所 : 東京都美術館 企画棟 企画展示室 東京都台東区上野公園8-36
休館日 : 月曜日
時 間 : 9:30~17:30 (入室は閉室の30分前まで)  金曜日は9:30~21:00
観覧料 : 前売券  一般 1,300円 / 学生 1,000円 / 高校生 600円 / 65歳以上 800円
         当日券  一般 1,500円 / 学生 1,200円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円

当館創設の機をもたらした美術団体展の中でも在野の雄であった二科会。岸田劉生、佐伯祐三、小出楢重、関根正二、古賀春江、藤田嗣治、松本竣介、岡本太郎、東郷青児など、実に様々な作家たちが発表し、海外からはマティスらも参加した二科会の100年の歴史から、20世紀の日本美術史を展観します。

関連行事 : イブニングレクチャー 19:00~19:30  聴講無料
      ただし本展観覧券(半券可)が必要
 7月24日(金)「100回展、そして…」 生方純一(公益社団法人二科会 常務理事)
 7月31日(金)「二科草創期の個性派たち」 川内悟(公益社団法人二科会 常務理事)
 8月7日(金)  「戦後からの二科会」 松室重親(公益社団法人二科会 常務理事)
 8月14日(金) 「伝説の洋画家たち 二科100年展」の見どころ
平方正昭(東京都美術館学芸員)
 8月21日(金) 「伝説の洋画家たち 二科100年展」の見どころ
平方正昭(東京都美術館学芸員)
 8月28日(金) 「伝説の洋画家たち 二科100年展」の見どころ
平方正昭(東京都美術館学芸員)

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「光太郎と縁の深かった諸作家」と書きましたが、出品リストで見ると、以下の名前が挙げられます。

有島生馬、石井柏亭、岸田劉生、熊谷守一、坂本繁次郎、津田青楓、中川一政、藤川勇造、藤田嗣治、松本竣介、村山槐多、安井曾太郎、山下新太郎、萬鉄五郎、アンリ・マティス、などなど。


9月~11月には大阪市立美術館、11、12月で福岡の石橋美術館への巡回もあります。ぜひ足をお運びください。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 7月24日

昭和2年(1927)の今日、長野県小諸の懐古園に島崎藤村の「千曲川旅情の歌」詩碑が除幕されました。

碑面は藤村の自筆原稿から作ったブロンズのパネル。鋳造は光太郎の実弟にして、のちに鋳金分野で人間国宝となる高村豊周です。今でこそブロンズパネルの文学碑は珍しくなくなりましたが、この藤村碑をもってこの技法が確立されました。

当方の30年以上前のアルバムに、懐古園の入場券が貼り付けてありました(笑)。下の写真が藤村碑です。

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