新刊です。 
2015/07/30発行  森まゆみ著 晶文社発行 定価1,800円+税 

版元サイトより

地図を使って読み解く「谷根千」
本郷台地の加賀、水戸屋敷は東大へ。坂を下れば、根津の遊廓に。広大な上野・寛永寺は、明治になると上野公園へ。今も辿れる諏方明神の道、岩槻街道、中山道。かつて不忍通りには都電が走り、谷中銀座、安八百屋通りは人で賑わった。
 約25年間地域雑誌「谷根千」をつくってきた著者が、江戸から現代まで、谷根千が描かれた地図を追いながら、この地域の変遷を辿る。
また、上野の博覧会の思い出を語る人、関東大震災、戦災を語る人、たくさんの人が町に暮らしていた。その古老たちが描いた地図、聞き取り地図も多数収録。

【目次】002
1 地図でみる谷根千
   正保年間江戸絵図
    寛文五枚図
    江戸方角安見図鑑
    享保元年分道江戸大絵図  …etc.
2 谷根千手づくり地図
    森鴎外「雁」を歩く
    一葉の住んだ町完全踏査
    芸人と芸術家のまち
    駒込千駄木林町の地図   …etc.
3 家族の地図、なりわいの地図
    商店街の町並み
    大正時代の学校界隈
    母の出会った浅草の空襲   …etc.

地域雑誌『谷中根津千駄木』(以下、『谷根千』)を刊行されていた森まゆみさんの新著です。森さんのご著書は、以前、智恵子がらみで『『青鞜』の冒険 女が集まって雑誌をつくること』を紹介させていただきました。

今回のものは、『谷根千』編集の際に利用されたさまざまな地図――古地図や絵図、地元の方に描いてもらったものなど――を読み解くことで、この地の成り立ちや、ここで生きた人々の息遣いをたどるというコンセプトです。

最近、テレビでも「散歩」系の番組などが静かなブームです。その手の番組の元祖ともいえるテレビ東京さんの「出没!アド街ック天国」は根強い人気を誇っていますし、NHKさんの「ブラタモリ」は地誌学的に見ても優れた番組です。

そうした動きを背景にしての刊行でしょうが、これまた労作です。谷根千地域と縁の深い森鷗外、樋口一葉にはそれぞれ一章を割いていますし、千駄木林町にアトリエを構えた光太郎智恵子についても、「芸人と芸術家のまち」「駒込千駄木林町の地図」の章で言及されています。もちろん地図入りで。

そのあたりを読むと、意外な人物がすぐ近くに住んでいたことがわかったり、光太郎の作品に出て来る場所の位置がわかったり、近くに住んでいたことは知っていたものの正確な位置がわからなかった人物の家がわかったりと、実に有益でした。次に千駄木方面に行く際には、この書を片手に歩こうと思いました。


ところでこの書籍、特殊な造本になっています。

普通はカバーを外すと、背表紙がありますが、この書籍にはそれがないのです。

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そのため、広げた時に全体がフラットになります。

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通常の書籍だと、開いた際に「のど」の部分がくぼんでしまいます。その状態でコピー機やスキャナにかけると、中央は影ができたりピンぼけになったりします。

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しかし、この書籍はどのページを開いてもそうならないような造本になっているのです。これはすばらしい! と思いました。

公共図書館の場合、以前はカバー類を全て取り払って納架するところが多くありました。今でも地方の図書館では時々見かけます。その方法を採ると、この書籍は背表紙がないので困ります。老婆心ながら、そういうところはどうするのだろうと思いました。また、最近は、透明フィルムでカバーごと固定するケースも多くあります。これまた老婆心ながら、下手な固定の仕方をして、せっかくの造本法を台無しにしてほしくないものです。


さて、内容的にも、造本法も素晴らしい書籍です。ぜひ、お買い求めを。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 7月21日

昭和21年(1946)の今日、花巻郊外太田村の山小屋で、北向きの壁を抜いて窓を作りました。

当日の日記です。

午前小屋の北側の壁を幅二尺、たては横桟と横桟の間だけ切り抜き、小まいは残す。風のぬき窓なり。余程空気ぬけよくなり風もはいるやうになる。冬には外より丈夫に戸をたてるつもり。此窓なくては小屋の空気こもりて夏は不衛生と思ふ。
(略)
程なく床をとりてねる。十時頃。 北側の窓の為かすずしき風来るやうに感ぜらる。

こちらは『高村光太郎全集』第12巻掲載の、山小屋の図面です。これでいうと、「25」の窓がそれにあたります。

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追記 いったんこの記事を書いてアップロードした後、いろいろネットで検索していたところ、今夜のNHK総合さんの「歌謡コンサート」で光太郎智恵子に触れるという情報を得ましたので紹介します。 

NHK歌謡コンサート「手紙で綴(つづ)る愛の名曲集」

NHK総合 2015/07/21 20時00分~20時43分

テーマ「手紙で綴(つづ)る愛の名曲集」出演:五輪真弓、大竹しのぶ、クリス・ハート、柴田淳、新沼謙治、氷川きよし、増位山太志郎、森進一、八代亜紀.

番組内容
今回は、女優・大竹しのぶの手紙の朗読とともに名曲の数々を紹介。取り上げる手紙は川端康成、寺山修司、マリリン・モンローといった著名人から、戦争で亡くなった夫にあてたラブレターを毎日つづっている94歳の女性まで多岐にわたる。八代亜紀「愛の終着駅」、五輪真弓「恋人よ」、新沼謙治「嫁に来ないか」、氷川きよし「別れのブルース」、柴田淳「あなた」、クリス・ハート「やさしさに包まれたなら」ほか。

出演者 五輪真弓,大竹しのぶ,クリス・ハート,柴田淳,新沼謙治,氷川きよし,増位山太志郎,森進一,八代亜紀,
司会 高山哲哉,
演奏 三原綱木とザ・ニューブリード,東京放送管弦楽団


スタッフさんのブログに以下の記述がありました。

7月21日 手紙で綴る 愛の名曲集
いつもNHK歌謡コンサートをご覧頂き誠にありがとうございます。制作統括の茂山です。7月は文月、23日は ふみの日なので7月23日は「文月ふみの日」という記念日です。今週の歌謡コンサートはそれにちなんで、2月に放送し好評を得た「手紙で綴る愛の名曲集」の第2弾をお届けします。古今東西の有名・無名の恋文をご紹介しながら、愛の歌をお聴きいただきます。朗読は前回と同様、女優の大竹しのぶさんが担当、情感たっぷりに手紙を朗読してくれます。今回ご紹介する恋文は
川端康成から婚約者への手紙
寺山修司から恋人への手紙
マリリン・モンローからジョン・F・ケネディへの手紙
NHKのニュース番組でも取り上げられたことのある亡き夫に送った「70年目の手紙」
南極観測隊員の妻より夫へ送った電文
高村光太郎・智恵子夫妻の作品「恋文」より一部をご紹介
愛を込めた手紙から、愛の歌につながるのか、ご期待下さい。