このブログにて毎年ご紹介しています明治古典会さん主催の七夕古書大入札会。古代から現代までの希少価値の高い古書籍(肉筆ものも含みます)ばかり数千点が出品され、一般人は明治古典会に所属する古書店に入札を委託するというシステムです。毎年、いろいろな分野のものすごいものが出品され、話題を呼んでいます。

その目録が届きました。

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出品目録は少し前に、ネット上にアップされましたが、全体をざっと見るには紙媒体の方がはるかに便利です。


直接、光太郎に関連する出品物は3点。

目玉は大正3年(1914)の詩集『道程』。何と、カバー付きです。

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詩集『道程』、元々大正3年(1914)の時点では、自費出版で200部しか作られず、しかも文語自由詩全盛の時代を突き抜けた口語自由詩が大半だったこともあり、売れ行きはさっぱりでした。真偽の程は不確かですが、光太郎が友人知己に贈ったものを除き、実際に売れたのは7冊だけだったという話もあります。残本はくり返し奥付を換えて販売されましたが、その売れ行きも芳しくなかったようです。

カバーが無くなってしまったものは、時折市場に出ます。当方も持っています。しかし、今回のものはカバーがちゃんと付いています。カバー付きが市場に出るのはおそらく戦後数回目。非常に珍しいものです。

7/3追記 下見展観を見に行かれた花巻高村光太郎記念会事務局の方から連絡を頂きました。カバーは復刻版のものだそうです。

まあ、珍しさということで言えば、昨年、秀明大学飛翔祭「宮沢賢治展 新発見自筆資料と「春と修羅」ブロンズ本」展に出品された、同大学長・川島幸希氏所蔵の特装本にはかないませんが、コンディションも良く、署名も入っており、逸品と言って差し支えありません。入札最低価格が60万円。おそらくここから跳ね上がるでしょう。

他に、光太郎自筆の小色紙。昭和2年(1927)作の短歌「やせこけしかの母の手をとりもちてこの世の底は見るべかりけり」が書かれています。大正14年(1925)に亡くなった母・わかを偲ぶものです。入札最低価格は40万円。

さらにエミール・ヴェルハーレン(光太郎の表記では「ヹルハアラン」)の詩集『天上の炎』。光太郎の訳で、大正14年(1925)に刊行されたものです。見返しに「私は未来の熱望をもつ」というヴェルハーレンの言葉を光太郎が記しています。同じく20万円。

この2点は以前から東京の古書店が在庫として持っていたものです。

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それから、光太郎が題字を揮毫した中原中也詩集『山羊の歌』が3冊も出品されます。それぞれ函付きで20~30万円の入札最低価格が設定されています。


「一般下見展観」といって、出品物を実際に手に取れる機会があります。7月3日(金)午前10時〜午後6時、7月4日(土)午前10時〜午後4時の2日間。場所は東京神田の東京古書会館さんです。

美術館や文学館などの展覧会と違い、出品物を実際に手にとって観ることが出来るという、ある意味とんでもないことをやっています(撮影は不可)。全体の目玉として、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」草稿・賢治写真・名刺・書簡・『春と修羅』がセットで入札最低価格350万円、芥川龍之介の自筆ノートが同じく700万円、竹久夢二のスケッチ帖・自作スクラップブック他がやはりセットで500万円。こういったものも手に取れてしまうわけです。ある意味恐ろしいですね。

古書市をご存じない方にはカルチャーショックだと思います。話の種にも、ぜひ足をお運びください。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 6月25日

平成16年(2004)の今日、山梨県立文学館で開催されていた企画展 「画文交響 ―明治末期から大正中期へ―」が閉幕しました。

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「パンの会」から「ヒュウザン会」「生活社」「草土社」、雑誌に即して言えば『明星』『早稲田文学』『方寸』『三田文学』『青鞜』『白樺』。文学と美術の接点を追った企画展でした。

となると光太郎は外せません。光太郎関連の資料も多数展示されました。