智恵子と同じ太平洋画会(現・太平洋美術会)、さらに高村光太郎研究会に所属され、3年前に『スケッチで訪ねる『智恵子抄』の旅 高村智恵子52年間の足跡』という書籍を出版された坂本富江さんから、情報の提供をいただきました。

近々、『スケッチで訪ねる『智恵子抄』の旅 高村智恵子52年間の足跡』の増補改訂版を刊行されるそうで、そのために訪れた静岡は沼津でのお話です。

概要をわかりやすくするために、坂本さんから戴いた地方紙『沼津朝日』さんの記事を引用します。今月9日の記事です。記事中の明らかな誤り(年号など)は訂正しました。

沼津に足跡残す高村智恵子 ゆかりの大熊家の所在知りませんか 智恵子が描いた一枚の絵 エッセイストがモデルの木を探す

 高村光太郎の詩集『智恵子抄』でも知られる光太郎の妻、高村智恵子と沼津とのゆかりを調べている人がいる。エッセイストの坂本富江さん(東京都板橋区)で、智恵子が寄留した白銀町の大熊家についての情報提供を呼び掛けている。

 高村智恵子(一八八六~一九三八)は、福島県安達郡油井村(現二本松市)の長沼家に生まれた。福島高等女学校を経て日本女子大学校に入学し、洋画家の道に進む。一九一一年に光太郎に出会い、一四年に結婚。その後、精神的な不調を経験し、三八年に病没した。四一年、『智恵子抄』刊行。
 画家としても活躍した智恵子は多くの作品を手掛けたが、現存している油絵は三点しかないという。そのうちの一つで清春白樺美術館(山梨県北杜市)が所蔵している「樟(くす)」は、沼津市内で描かれた。
 高等女学校時代の智恵子には大熊ヤスという親友がいた。ヤスの家は父の転勤により転居を繰り返していたが、現在の沼津市内の白銀町に家を構えていたことがあった。智恵子が沼津を訪れたのは、この縁によるもので、一九〇六年には智恵子とヤスの二人で富士登山をしている。
 その後、ヤスは沼津中学校(現沼津東高)の教員をしていた上野直記と結婚。ヤスは夫の転勤により一九一三年に朝鮮半島に渡ったが、ヤスの母と特別な信頼関係があった智恵子は、ヤスの転居後も白銀町の大熊家をたびたび訪れていて、「樟」は、この間に描かれた。
 山梨県韮崎市出身の坂本さんは、小学生の頃から詩に興味があり、『智恵子抄』や『道程』といった高村光太郎の作品群に親しんでいた。
 そこから智恵子に強い関心を抱くようになり、地元近くの清春白樺美術館で「樟」を見たのがきっかけとなり、智恵子ゆかりの地を訪ねてスケッチや文章などの創作を続けた。それらをまとめてエッセイ集『スケッチで訪ねる「智恵子抄」の旅』を出版したところ、好評のため商業出版された。
 今回、同書の増補改訂版の出版が予定されていて、坂本さんは準備を進めている。その中でも特に力を入れているのが、「樟」のモデルとなった木の特定だ。
 モデルについては、二説がある。一つは、大熊家の近くにあった沼津尋常小学校(現一小)の校庭の木で、校庭の北端にある道喜塚周辺の木であるというもの。もう一つの説は、大熊家の庭にあった木。
 大熊家は戦後しばらく白銀町にあったものの、転居してしまったため、その正確な場所は不明。坂本さんは、この大熊家の位置に関する情報と、ヤスが嫁いだ上野家の消息に関する情報を集めている。
 心当たりのある方は市歴史民俗資料館(電話九三二 - 六二六六)まで。
 
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問題の絵はこちらです。

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記事にあるとおり、山梨県の清春白樺美術館さんで展示されています(常に、というわけではないようですが)。

沼津のこの木は、当方も以前から気になっていて、現地調査に行こうと思いながらなかなか機会がなかったのですが、坂本さんは都合6回も沼津に行かれたそうです。その結果、沼津第一小学校さんや沼津市歴史民俗資料館さんなどのご協力で、問題の木は沼津第一小さんの敷地内に健在の木、ということがほぼ確定したとお便りを戴きました。

詳細は、近々刊行されるという、『スケッチで訪ねる『智恵子抄』の旅 高村智恵子52年間の足跡』の増補改訂版にて紹介されるはずですので、期待したいと思います。

その他、沼津の大熊家、上野家などについての情報をお持ちの方は、記事にあるとおり、歴史民俗資料館さん、または当方までご教示いただければ幸いです。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 6月24日

平成4年(1992)の今日、東芝EMIから朗読CD「音楽のある星に生きて」シリーズの「空」と「大地」がリリースされました。

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それぞれ、ヒーリング系のBGMにのせて、古今の名詩が朗読されています。

「空」は、詩人の工藤直子さんの選、壇ふみさんの朗読で、光太郎詩「青空」(昭和3年=1928)が収められています。

「大地」の選は作家の立松和平さん、朗読は森本レオさん。収められている光太郎詩は「案内」(昭和24年=1949)です。

ついでに同じラインナップで「森」が前月に出ています。選・工藤直子さん、朗読、真行寺君枝さん、光太郎詩は「新緑の頃」(昭和15年=1940)です。