このブログで何度かご紹介した、兵庫県人権啓発協会さん作成の「ほんとの空」というドラマ。各地の自治体さんや学校さんなどで上映が行われたり、テレビの地方局さんでオンエアされたりしています。光太郎の詩「あどけない話」にからめ、福島の原発事故による風評差別などを扱ったものもです。
何とか観たいものだと思っていましたが、制作元の兵庫県人権啓発協会さんでは個人向けの貸し出しを行って居らず、市販されているものの価格が80,000円+税と、ちょっと手が出ません。
そう思っていたところ、個人向けの貸し出しを行っている団体を見つけました。公益財団法人 人権教育啓発推進センターさんです。こちらの人権ライブラリーでは、人権に関する図書・ビデオ・DVD・展示パネルや地方公共団体さんが作成した啓発資料などを収集し、幅広く提供してくださっており、利用者登録を行い、借りたい資料の申請をすれば、無料で借りられます。往復の送料は自己負担ですが、自宅に郵送してもらうことも可能です。
そこで、郵送していただき、念願の「ほんとの空」DVDを借り、視聴しました。
劇中に光太郎の名がしっかり使われていました。そして、非常に考えさせられる内容でした。これまでにも当ブログでご紹介する中で、あらすじは把握していましたが、やはり百聞は一見にしかず、ですね。
メインは東日本大震災に伴う原発事故によるいわれなき風評被害ですが、その他にも高齢者に対する偏見、外国人や障害者、同和地区に対する差別、ネット上の無責任な書き込み、そしていじめまで、36分の中にてんこ盛りです。それでいて、それぞれ「あるある」と感じさせるリアリティーがあります。
白石美帆さん演じる主人公の主婦が、無意識に、または意識しつつもいろいろと言い訳を考えながら、人権侵害に当たる行為をしてしまいます。そのツケが回り回って倍返し的なところもあり、その悲惨さが教訓となります。人を呪わば穴二つ、です。
さらに感心したのは、原発の風評被害やいじめは別として、偏見を受ける側にも原因がある的な描き方もなされている点です。たとえば主人公がパート勤務をしているスーパーのレジで、後に行列が出来ているにもかかわらず、ポイントカードを探すのに手間取り、周りに対する配慮のない老人、主人公の住むマンションの通路で大音量でしゃべるタイ人夫婦。だからといって、そうした人々に対する差別や偏見が許されるわけではないのですが、
主人公はそれぞれカチンときたり、言いしれぬ恐怖を感じたりしていました。この描き方には非常にリアリティーがありました。
A4判15ページからなる「活用ガイド」という冊子も付いており、コピーして使えるようになっています。やはり自治体さんの学習会や、学校の授業での活用を前提にしているのでしょう。学校での学習指導案や、視聴後に書き込みをするワークシートのフォーマットも収められていて、これは便利です。
そういうわけで、さらに多くの自治体さんや学校さんで、どんどん活用していただきたいものです。もちろん個人の方も、です。
【今日は何の日・光太郎 拾遺】 3月7日
大正2年(1913)の今日、雑誌『趣味』第7年第2号が発行されました。
扉に光太郎の描いたカット「カフエ ライオン」が使われ、さらに短詩「カフエにて」4篇、「カフエライオンにて」2篇が収められています。
カフェー・ライオンは、明治44年(1911)、銀座尾張町に開かれたビアホールです。美人女給が和服にエプロンという揃いの衣裳で給仕するのが売りでした。また、ビールが一定量売れると、店内のライオン像が吠える仕組みになっていたそうです。
昨年までビヤホールライオン銀座五丁目店として営業を続けていましたが、現在はビルの建て替え工事中。来年初夏にリニューアルオープン予定だそうです。