過日、上京した折に、時間が少し余っていたことがありました。そこで寄り道。行った先は皇居前広場。ここには光雲が主任となって、東京美術学校が請け負った楠木正成の銅像があります。
実は当方、ちゃんとこれを見るのは初めてでした(幼い頃に見た記憶があるのですが)。
実に重厚。それもそのはず、この像は「無垢」です。
「無垢」というと、一般に「純真無垢」など、「イノセント」という意味で使われますが、こうした金属工芸の場合、「内部が中空ではない」という意味です。通常の銅像をはじめとする鋳金では、「中型」と「外型」を作り、その間に溶けた銅を流し込む方式で、出来上がったものは中空の状態になります。ところがこの像は、外型のみの状態に溶けた銅が流し込まれ、内部まで詰まっている状態です。したがって、重量としても物凄いことになっていると思われます。
そう思つて見るのでそう感じるのかも知れませんが、とにかく重厚です。
しかし、光太郎はこの像や、同じ光雲の手になる上野の南洲西郷隆盛像など、「芸術」としては認めていません。
父の作品には大したものはなかつた。すべて職人的、仏師屋的で、又江戸的であつた。「楠公」は五月人形のやうであり、「南洲」は置物のやうであり、数多い観音、阿弥陀の類にはどれにも柔媚の俗気がただよつてゐた。(「父との関係―アトリエにて2―」 昭和29年=1954)
たしかに絶対的評価としてはそうなのかもしれません。しかし、相対的評価としてみると、これほどの存在感、迫力を放つ像は、他に無いように思います。
そこで、この像と、西郷隆盛像、さらに靖国神社にある大熊氏廣作の大村益次郎像を合わせて「東京三大銅像」とする場合があります。
今年、銅像を扱ったテレビ番組を2本観ました。6月21日、BS日テレさんで放映された「中川翔子のマニア★まにある #32銅像男子・(ドウゾウダンシ) 銅像男子が語る銅像の魅力!?」、10月30日、同じくBS日テレさんの「木曜スペシャル #15 偉人巡礼!歴旅銅像ツアー」。どちらも、ちらっと楠公銅像、西郷隆盛像にふれていました。事前に楠公銅像に触れるかどうか分かりませんでしたし、ちらっと紹介されただけなので、放映後もこのブログでは特にコメントしませんでしたが、この際なのでご紹介しておきます。
まず、「木曜スペシャル」の方では、全国の坂本龍馬、武田信玄、上杉謙信の銅像を紹介するのがメインでしたが、合間に「東京三大銅像」の紹介がありました。
続いて「中川翔子のマニア★まにある」。こちらはサイト「日本の銅像探偵団」管理者の遠藤寛之氏が選ぶ「一度は見ておきたい銅像ベスト3」ということで、堂々の第1位に、楠公銅像を挙げて下さいました。
遠藤氏によれば、楠公銅像は「キング・オブ・銅像」だそうです(笑)。
ちなみに第2位は、「二本松の菊人形」会場である福島二本松霞ヶ城に建つ二本松少年隊の像でした。作者は二本松駅前の智恵子像「ほんとの空」も作られた、光雲の孫弟子にあたられる橋本堅太郎氏です。
さて、楠公銅像そばに売店があり、そこで楠公銅像グッズをいろいろゲットしてきました。
まずは最近よくあるA4判クリアファイル。中央に楠公銅像、裏面は皇居二重橋です。
もったいなくて使えません。袋に入れたまま保管しています。
また、その他、笑える楠公銅像グッズが手に入りました。また明日、ご紹介します。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 12月19日
平成18年(2006)の今日、福島二本松で、NTT DoCoMo東北のCM「智恵子のふるさと篇」の撮影が行われました。
主演は宮崎あおいさん。
こちらは、当時、東北で配布されていたカード型の広告です。智恵子の生家・記念館裏手の「樹下の二人」碑の前に立つ宮崎さん。裏面は安達太良山と阿武隈川、ほんとの空です。
二本松で智恵子の顕彰活動を行っている「智恵子のまち夢くらぶ」の皆さんもご出演なさいました。