東京駒場の日本近代文学館さんでのイベントです。
日本近代文学館リーディングライブ2014
日 時 : 2014年11月29日(土) 12:00~
会 場 : 日本近代文学館 東京都目黒区駒場4-3-55
主 催 : プチプラージュ
後 援 : 一般社団法人 日本朗読検定協会
料 金 : 無料
司 会 : 武田あさひ
プログラム
第一部 12:10~12:55 小学生の詩&読み聞かせママグループ
・10名の小学生による詩の朗読(谷川俊太郎さんの詩、または自作)
・加藤啓子・栗岡まゆみ・黒澤真由美・武田美香・羽田みどり・シュナック千賀子
「生まれたよ ぼく」「ともだち」「ありがとう」 谷川俊太郎
「生まれたよ ぼく」「ともだち」「ありがとう」 谷川俊太郎
・明瀬亜希子「くまとやまねこ」湯本香樹実
・佐川紘子 「狼だんなとろば」外国の昔話
・小杉美智子・大久保幸枝・森本雅子 「あらしのよるに」木村裕一
・佐川紘子 「狼だんなとろば」外国の昔話
・小杉美智子・大久保幸枝・森本雅子 「あらしのよるに」木村裕一
第二部 13:00~16:00 大人の朗読会
田中康彦・仁林結晶 「サンタクロースはいるんだ」
フランシス・ファーセラス・チャーチ/大久保ゆう訳
葉月のりこ 「冬の日、防衛庁にて」 江國香織曳地政久・武田あさひ 「羅生門」 芥川龍之介
宇田川智恵 「海のいのち」 立松和平
田名網節子 「竹取物語」 川端康成(現代語)
石橋玲 「ロボットのお仕事」 石橋俊一
三枝洋子 「雪おんな」 小泉八雲
阿部早苗 「夢十夜 第一夜」 夏目漱石
日下昭子 「海辺の王さま」 日下昭子
坂口亜矢子・森順子・前田裕己 「藪の中」 芥川龍之介
加藤純恵 「コトコト、ホクホク」 宮島英紀
北里利恵 「デューク」 江國香織
駒田早苗 「野菊の墓」 伊藤左千夫
角田のぶひこ 「帰ってきた先生」 角田のぶひこ
柿原智恵子 「詩集オンディーヌより【追放】」 吉原幸子
三上裕恵 「山からの贈物」 高村光太郎
丸山眞宙 「小さな幸せ物語より【タイムマシン】 」川上健一
溝呂木さゆり 「ほうすけのひよこ」 谷川俊太郎
鈴木惠子 「草之丞の話」 江國香織
野尻陽子 「じいさん・ばあさんの愛し方」 三好春樹
というわけで、朗読のイベントです。
光太郎晩年の詩「山からの贈物」がプログラムに入っています。ありがたや。
こちらは昭和24年の雑誌『婦人之友』に掲載されたもので、詩集『典型』にも採られています。
山からの贈物
山にありあまる季節のものを
遠く都の人におくりたいが
おくらうとすると何もない。
山に居てこそ取りたての芋コもいいし
栗もいいし茸もいいが、
今では都になんでもあつて
金がものいふだけだといふ。
それではいつそ
旧盆過ぎて穂立をそろへた萱の穂の
あの美しい銀の波にうちわたる
今朝の山の朝風を
この封筒に一杯入れよう。
香料よりもいい匂の初秋の山の朝風を。
遠く都の人におくりたいが
おくらうとすると何もない。
山に居てこそ取りたての芋コもいいし
栗もいいし茸もいいが、
今では都になんでもあつて
金がものいふだけだといふ。
それではいつそ
旧盆過ぎて穂立をそろへた萱の穂の
あの美しい銀の波にうちわたる
今朝の山の朝風を
この封筒に一杯入れよう。
香料よりもいい匂の初秋の山の朝風を。
なるほど、いい詩ですね。
朗読も静かなブームのようです。いろいろな方がいろいろなイベントで光太郎作品を取り上げて下さっています。今後もそういう傾向が続いてほしいものです。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 11月25日
昭和25年(1950)の今日、光太郎が暮らしていた花巻郊外太田村の村役場落成式が行われ、列席しました。
光太郎は祝辞を述べた他、「大地麗」と書いた書を、役場に贈りました。「だいちうるわし」と読みます。
昭和37年(1962)、筑摩書房刊行の『高村光太郎山居七年』に、この書に関するエピソードが載っており、抜粋します。
いよいよ落成したので、先生に何か記念の額を書いていただきたいと思ったのでしたが、役場のできたのは十一月の末の頃の相当寒い時で、先生はすでに筆をおさめて、今年中は何も書かないという時でした。山口小学校の校長さんの浅沼さんなどが行ってたのんでも到底書いてもらえまいし、村長が自身行ってもおおよそことわられるだろう、結局この使は線のやさしいそして先生が気楽にものを考えられるであろう女の人がよいではないかとなりました。
村長さんは、奥さんのアサヨさんに「書いてもらう使は、しょっちゅう先生のところへ出入りして気のおけないお前がいいよ、お前に行ってもらうことだな。うまく引受けてくれればいいし、ことわるにもお前だら先生も気楽だろう。」ということで、アサヨさんが使に行きました。間もなく帰ってき、「承知しました。」という返事に村長さんは飛上るほど喜びました。
大きな筆と鳥の子の大紙が要るとのことで、村長さんは早速盛岡に行き、一番大きな筆と鳥の子の大紙二枚とを買ってきて、それを妻君に届けさせました。
四、五日して、先生から「書きあがった。」との報せがあったので、アサヨさんは早速いただきにいきました。
「大地麗 高村光太郎 印」と書かれてあります。
落成式が間近いので、大急ぎで表装し、庁舎階上の会議室正面に掲げました。
落成式の当日、地元有志多数参集の中へ、小屋からは五粁もある役場ですが、喜んで列席、村人のため素晴らしい祝辞を述べました。会衆は稗貫郡全部から集まって三百人ぐらいあり、非常な盛会で、先生も愉快だったと見えて、ほろほろと酔い、来賓がバスで立ったあと、暮色せまる中を酔歩悠々小屋への道を辿られた。
この書は現在、花巻市太田の高村光太郎記念館で見ることができます。光太郎自身、この書が気に入ったようで、次の詩に謳っています。
大地うるはし
村役場の五十畳敷に
新築祝いの額を書く。
「大地麗(だいちうるはし)」、太い最低音部(バス)。
書いてみると急にあたりの山林が、
刈つたあとの萱原が、
まだ一二寸の麦畑のうねうねが、
遠い和賀仙人の山山が
目をさまして起き上がる。
半分晴れた天上から
今日は初雪の粉粉が
あそびあそびじやれてくる。
冬のはじめの寒くてどこか暖い
大地のぬくもりがたそがれる。
大地麗(だいちうるはし)を書いた私の最低音部(バス)に
世界が音程を合わせるのだ。
大地無境界と書ける日は
烏有先生の世であるか、
筆を投げてわたくしは考へる。