昨日は上京して参りました。
目的は二つ。
先に伺ったのは中村屋さんなのですが、こちらは会期が長いので、後ほどレポートいたします。金子大蔵氏の書の展覧会は明後日までということで、こちらを先にレポートいたします。
会場は東京芸術劇場5階のギャラリー1。池袋駅の西口を出てすぐです。
昨日から開始ということで、関係者とおぼしき人も多く、後に詳述しますが、金子氏ご本人もいらっしゃいました。
会場に入ってまずドーンと、「道程」。高さは天井まで、横幅は10㍍ではきかないでしょう。
骨太の光太郎の詩句に呼応する、力強い書です。まずこれで圧倒されました。
その後も約40点、光太郎の詩句をモチーフにした書が並んでいます。
題材は様々な詩から採られており、詩の全文を書いたものもあれば、一言だけを取り出したものもあり、大幅もあれば、色紙大の小品もあり、バリエーションに富んでいます。
モチーフに使われている詩は、最初は「道程」でしたが、その他は「鐵を愛す」、「花のひらくやうに」、「最低にして最高の道」、「火星が出てゐる」など、むしろ光太郎詩の中ではあまり有名でないものがほとんどでした。「あどけない話」、「レモン哀歌」、「ぼろぼろな駝鳥」などのメジャーどころはありません。
ミュージシャンのベストアルバム的な選び方でなく、あまり知られていない詩でも、いい言葉はいい、と、そういう採択の仕方に好感が持てました。
図録から画像を拝借します。やはり力強い筆致のものが多いのですが、逆に薄い墨で流れるように書かれたものも。それぞれに詩句の内容を意識して、いろいろ書き分けられているようです。
観ている方々の中から、「これ、ほしいな」という声が聞こえました。
ひととおり観たあと、金子氏とお話しさせていただきました。長身のイケメンでした(笑)。
昔から光太郎詩が好きだったとのこと、光太郎詩を題材にすればいくらでも書ける、的なことをおっしゃっていました。光太郎の詩句には、ご自分が年齢を重ねることで(といっても氏は昭和48年(1973)のお生まれなので、まだ40代はじめですが)、解釈が変わってくるとも。
やはり光太郎作品は、いろいろな分野の表現者の表現意欲を刺激するのだな、と、改めて感じました。
ちなみにこの書展、『毎日新聞』さんで取り上げられ、「書の可能性を探ろうとするさまざまな試みに書人の真摯(しんし)な思いが感じられるだろう。」との評でした。
非常に残念なのですが、会期は明後日までです。もっと長期間にして、多くの皆さんに観ていただきたいのですが……。
入場は無料。図録は700円也、です。
ぜひ足をお運びください。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 11月1日
昭和25年(1950)の今日、山形の料亭野々村で開催された山形新聞社主催の美術講演会で、「日本に於ける美の源泉」と題して講演を行いました。
翌日は山形市教育会館美術ホールで講演しています。
昨日もご紹介した女優の渡辺えりさんのお父様、渡辺正治氏は、このどちらかの講演を、交際中だったえりさんのお母様と一緒に聴きたくて、鼻の手術で入院中だったお母様の病室に窓から忍び込み、無理矢理連れ出し、顔に包帯を巻いた寝間着姿のお母様と並んで聴かれたそうです。