気づくのが遅れまして、紹介も遅れました。申し訳ありません。
文藝春秋 第92巻第12号 2014/10月号
2014/9/10発売 定価880円
作家、伊集院静氏の連載「文字に美はありや」の第10回が掲載されています。さまざまな書道作品を紹介するもので、今月号は本文3ページ、折り込みのカラーグラビアがついています。
「猛女と詩人の恋」という題で、光太郎の書が取り上げられています。
上記グラビアは、木彫「白文鳥」と、その袱紗(ふくさ)です。袱紗には光太郎自作の短歌が記されています。
小鳥らは何をたのみてかくばかりうらやすげにもねむるとすらん
光太郎はこのように、木彫を作ると、それに関する短歌も作り、それを包む絹の袱紗や袋(智恵子が縫ったものです)に認(したた)めることが多くありました。そうした場合には古式に則(のっと)り、仮名に濁点をつけなかったり、変体仮名を使ったりもしています。
ちなみに、昨年、全国三つの美術館で、「生誕130年 彫刻家高村光太郎展」が開催されました。この木彫「白文鳥」は三館共に展示され、袱紗も岡山井原展と愛知碧南展で並びました。現在は東京の某画廊が所有しています。
もう一点、
小鳥らの白のジヤケツにあさひさしにはのテニスはいまやたけなは
という短歌を記した袱紗もセットです。木彫「白文鳥」が二体ですので。「小鳥らは」の方は、眼を細めている雌の文鳥を、「白のジヤケツ」の方は、一回り体の大きい雄の文鳥を包むための袱紗に記されました。
先月、花巻の高村光太郎記念会を通し、この袱紗の所有者を教えてほしいと依頼があってお答えしたのですが、今号の記事になることをすっかり失念していました。
それはともかく、実にいい字ですね。伊集院氏もほめています。
他には、今年100周年を迎えた詩「道程」の詩稿もモノクロで画像入りで紹介され、さらに光太郎の書論「書について」(昭和14年)などが取り上げられています。ただ、光太郎に関しては3ページのうち半分で、残り半分は正倉院に納められている光明皇后筆の古文書についてです。
しかし、最後に「智恵子への恋慕と彼の書についてはいずれ詳しく紹介したい。」とあるので、期待しましょう。
『文藝春秋』10月号、まだ店頭に並んでいると思います。または雑誌専門の通販サイトfujisan.co.jpから購入できます。ぜひお買い求めを。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 9月22日
昭和31年(1956)の今日、鎌倉の神奈川県立近代美術館で、この年亡くなった光太郎の最初の遺作回顧展「高村光太郎・智恵子展」が開幕しました。