新刊です。 
2014/10/1 東京大学國語國文学会編 明治書院発行 定価1,143円+税
 
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國語と國文學』。古典から近現代まで幅広く扱う雑誌です。巻末に「投稿規定」が載っていて、それによれば「本誌は広く国語国文学研究者の発表機関としてこれを開放し、大方のご投稿を歓迎します。」とあり、原稿依頼ではなく投稿で成り立っているようです。そういう意味では書けば載る大学の研究紀要などとは違い、載せてもらうためのハードルが高そうです。ただ、今号の目次、巻頭の「前号要目」「次号予告」等を見ると、大半が国文学の論文で、国語学に関するものはほとんど無いようです。
 
さて、今号には駿河台大学准教授、長尾健氏の論考「高村光太郎『道程』前期論――巻頭三作品の解釈を中心に――」が掲載されています。
 
今年、刊行100年を迎える詩集『道程』。明治43年(1910)から大正3年(1914)までの詩、76篇が載っています。内容的に、明治44年(1911)の「泥七宝」あたりを境に、前半と後半に分けて読み取るのが一般的です。前半は欧米留学から帰朝し、北原白秋、吉井勇らと「パンの会」の狂躁に身を投じたり、吉原の娼妓・若太夫や浅草のカフェの女給・お梅に入れ込んだりしていたデカダン生活の時期のもの。後半は智恵子との邂逅を経て、頽廃生活からの脱却、『白樺』的な人道主義の影響も見て取れる、表題作「道程」を含む作品群、といった区分けです。
 
長尾氏の論考は、前半、特に冒頭の三作品「失はれたるモナ・リザ」「生けるもの」「根付の国」を中心に展開されています。キーワードは「普遍的な美」「西洋でも日本でもないある絶対的な場所」「ナショナル・アイデンティティ」などなど。
 
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【今日は何の日・光太郎 補遺】 9月19日
 
昭和21年(1946)の今日、花巻郊外太田村の山小屋で、栗ご飯を炊いて食べました。
 
「秋の味覚」、ですね。この日の日記に以下の記述があります。
 
四時過ぎ小屋にかへる、 栗をひろふ。 夜食、炊飯(栗めし)初めてなり。
 
この前後、光太郎が7年間暮らした太田村の山小屋周辺には栗の木がたくさん自生しており、時には音を立てて屋根に栗の実が落ち、拾い放題でした。村人もよく小屋の近くに拾いに来ていたそうです。
 
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日記はさらにこう続きます。
 
南瓜一個とり。煮る、美味とはいへず。
 
自分で栽培していたカボチャは今ひとつだったようです(笑)。