昨年から今年にかけて出版されたもののうち、ちらっと光雲について記述があるものを3点紹介します。
戦争という見世物 日清戦争祝捷大会潜入記
木下直之著
2013年11月20日
ミネルヴァ書房
定価 2,800円+税
版元サイトから
日清戦争に勝利し、日本中が沸いた明治二七年一二月九日。上野公園不忍池付近で開催された、「日清戦争戦捷祝賀大会」にタイムスリップ。清国軍艦撃沈の劇、大きな凱旋門……その祝賀大会の様子を史実に沿い、日本の見世物研究の第一人者が生き生きと活写する。
[ここがポイント]
・明治27年12月9日、日清戦争戦捷祝賀大会の全
貌が明らかに。
・貴重な写真を多数掲載。
・見世物研究の第一人者が活写する。
・明治27年12月9日、日清戦争戦捷祝賀大会の全
貌が明らかに。
・貴重な写真を多数掲載。
・見世物研究の第一人者が活写する。
日清戦争祝勝記念ということで、異様に浮かれる明治27年(1894)の東京が描かれます。
光雲に関しては、その援助者だった実業家・平尾贊平の依頼で「分捕石鹸」なるものをデザインしたという話が紹介されています。打ち首にされた清国兵の首をモチーフにしたとのこと。ヘイトスピーチのような話です。
光太郎に関しても、昭和22年(1947)に発表した連作詩「暗愚小伝」中の「日清戦争」という詩で、平壌の戦いで玄武門突破の戦功を挙げた原田重吉一等兵について取り上げていることにふれています。
その他、光雲・光太郎ゆかりの人物がたくさん登場し、さらに当時のある意味狂躁状態だった世相を知るには、うってつけの一冊です。
ただし、苦言を一つ。せっかく巻末に「人名索引」が設けられていながら、光雲、光太郎ともに抜け落ちています。内容的には面白い書籍だけに惜しいミスです。
消された「西郷写真」の謎 写真がとらえた禁断の歴史
斎藤充功著
2014年3月28日
学研パブリッシング
定価 1,800円+税
版元サイトから
歴史上の人物として人気の高い西郷隆盛。だが彼が写っている真正写真はいまだに確認されていない。それはなぜか。本当に写真は存在しないのか……西郷の真正写真を追い求めた筆者による「歴史ミステリー・ノンフィクション」。
光雲が制作主任として携わった上野の西郷隆盛像の話-西郷本人に似ていない、とされている-から始まり、確実に西郷隆盛と確認できる写真が伝わっていないこと、そこに明治政府の意図を読み取り、「写真」という新たなメディアツールがどのように取り入れられていったのかまで論じる力作です。一時話題になった「フルベッキ写真」についても触れています。
にほんテキヤはどこからやってくるのか? 露天商いの近現代を辿る
厚香苗著
2014年4月17日
光文社(光文社新書)
定価 760円+税
版元サイトから
浮かれた気分の人びとが集まるところには、どこからともなく商人がやってくる。ヤキソバを焼くソースの匂いや派手な色彩の露店は、私たちをいつもとは違う心持ちにしてくれる。そんな祝祭空間で生計を立てている露店商たちが本書の主人公である。(「はじめに」より)
主な舞台は東京の下町。そのあたりでは伝統的な露店商を「テキヤさん」と呼んでいる。「親分子分関係」や「なわばり」など、独特の慣行を持つ彼ら・彼女らはどのように生き、生計を立て、商売を営んでいるのか――。
「陽のあたる場所からちょっと引っ込んでいるような社会的ポジション」を保ってきた人びとの、仕事と伝承を考察。
主な舞台は東京の下町。そのあたりでは伝統的な露店商を「テキヤさん」と呼んでいる。「親分子分関係」や「なわばり」など、独特の慣行を持つ彼ら・彼女らはどのように生き、生計を立て、商売を営んでいるのか――。
「陽のあたる場所からちょっと引っ込んでいるような社会的ポジション」を保ってきた人びとの、仕事と伝承を考察。
民俗学的なアプローチで、「テキヤ」の歴史的背景から現状までの詳細なレポート。光雲の父・兼吉(通称・兼松)が浅草のテキヤだったこと、光雲もその手伝いをしていたことなどに触れています。
以上3点、すべて光雲がメインではなく、少しふれられるだけではあるものの、いずれも当時の世相、社会的背景といったことを理解する上で、切り口は違いますが、それぞれ興味深いものです。
ぜひお読み下さい。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 6月13日
昭和30年(1955)の今日、ラジオで東京六大学野球の早慶戦を聴きました。
当時、同じ六大学の立教大には、かの長嶋茂雄が在籍しており、この年の秋季リーグから5シーズン連続でベストナインに選ばれるなどの活躍でした。